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全くデレない少女との同棲生活!  作者:
現実世界編
7/62

7話 『私? 私はあなた達が言う所の神様よ』

茶番は終わりです。

ここから一気に物語を動かしていきます……多分

* * *


 今日も一日の仕事は終わりました。仕事と言っても家事をこなすだけですが、それが私の仕事です。

 お風呂からあがり、あとは寝るだけなので、私のご主人様に挨拶に向かいます。

 コンコン!


「失礼します。ではご主人様、私は先に休ませてもらいますね」

「ん? おお~、おやすみ忍~」

「おやすみなさい」


 ドアを閉めようとすると、ご主人様が何やら叫び声をあげているのが聞こえます。

 何をそんなに騒いていやがるんでしょうか……


「あの、ご主人様はまだ寝ないんですか?」

「ああ、艦隊をコレクションするゲームが、俺の好きなアニメとコラボするらしいんだ。これは確率0.5%を狙ってリセマラするしかない! 今日は徹夜だ~!!」


 何やらまたゲームに夢中なようです。私はよくわからないのでそっとドアを閉じました。


 ご主人様のお母様が使っていたベットに横になり、目を閉じます。

 ご主人様のお父様は単身赴任でしばらくは帰らないそうですが、お母様も一緒について行ったみたいで、実質この家には私とご主人様の二人しか住んでいません。

 私は明日の朝ごはんの用意を考えながら、眠りに落ちていきました。

 気が付くと私はモヤのかかった所に立っていました。

 まるで、雲の上にいるような感じなのです。

 どうやらこれは夢のようなのです。いつかの夢。私が記憶をなくす前の夢……


「おめでとう! あなたには奇跡が与えられることが決まったわ!」


 突然後ろから、一人で手をパチパチと鳴らす音が聞こえてきました。

 振り向くとそこには、なんとも神々しいローブを身にまとった、美しい女性が立ってます。


「あの、あなたは誰なのですか?」

「私? 私はあなた達が言う所の神様よ。まぁ正確には女神だけどねぇ」


 驚きを通り越して思考が停止してしまいます。いきなりそんなこと言われても信じられません。


「その女神様が、私になんの用なのですか? 奇跡を与える?」

「ええ。あなたには今、想い人がいるわね?」


 私はドキッとしてしまいました。

 なんで私の気持ちを知っているのですか!?


「しかし、あなたは人間ではないがゆえに、その想いを伝えることさえできない。ええっと、相手はなんて名前だったかしら。ん……? 犬伏いぬぶし こう?」


 資料を見る女神さまは少し驚いたように見えます。


「どうしたのですか?」

「ああ、なんでもないわ。こっちのことよ。それで、そんなあなたに奇跡を与えて、彼とラブラブにさせてあげるってことね」

「ええ~~!! 本当なのですか!?」

「マジよマジ!」


 女神さまは笑顔で、そのくせ口では簡単に言い放ちます。


「な、なんで私なのですか?」

「ん~まぁぶっちゃけ誰でもいいのよねぇ。結局のところ私達は下界に奇跡をもたらすことが目的なの。定期的に奇跡を起こすことで、人間にいい影響が出ることがわかっているから、そのためにこういう奇跡を起こすんだけど、今回はあなたに白羽の矢が立ったってこと」

「そ、そうなのですか……」


 私は少しずつ理解していきます。……それでも話がぶっ飛びすぎていますが。


「じゃあ、ルールを説明するわね」

「ルール……ですか?」

「ええ、まず起こせる奇跡は三つだけよ。よく考えてね。まぁ最初の一つは『人間の身体をもらうこと』でほぼ決まりだろうけど」

「ああ、なるほど。確かにその通りですね……」


 残り二つの願いを叶えられるってことですよね? すごいのです!


「だけど、良いことばかりじゃないのよ。あなたには人間の身体を与えるけれど、その寿命はあなたの本体の寿命までとするわ。本体が寿命を向かえた時、人間の身体も消えてしまうの」

「ええ~! じゃ、じゃあ、二つ目の願いで、寿命を延ばしてくれっていうのはダメなのですか?」

「ダメよ。それは許容範囲を超えている。だから無理。ま、短い時間だけでもラッキーと思って精一杯楽しむことね」


 女神様はコロコロと笑いながら話を進めます。

 当の私は嬉しいやら悲しいやらで複雑なのですけど……


「それと、寿命を向かえる一ヶ月くらい前には必ず熱を出すイベントも用意したわ!」

「な、なんなのですか、それは……?」

「だって、熱を出して弱っているところを彼に優しく看病してもらうってのは、恋愛イベントとして必須でしょ? そもそもあなたは、似たような状況で彼に助けてもらったから好きになったんじゃない」

「それは……そうですね。もう何年も前のことですけど……」


 うぅ……この女神様、私のことをなんでも見通しているのですよ……ものすっごく恥ずかしいのです……


「まぁルールはこんなとこね。じゃあ、残り二つの願いを決めちゃって。あ、私のお勧めは『人間の言葉』を覚えることね。しゃべれなきゃ意味がないもの」

「ええ~~!! 体と言葉って一緒じゃないのですか!?」

「別々よぉ。だって『体』と『知識』だもの」


 なんだか勝手に決まっていって残り一つになってしまいました。


「うぅ~、奇跡の数を十個に増やしてほしい、とかはダメですよね……?」

「あはは~、ダメダメ! 許容外ね」


 ですよね~。

 私は必死に頭を捻ります。


「彼の好みそうな美貌とかでいいんじゃないかしら?」

「うぅ~、確かに……いやでも……大体なんで三つなのですか!? 多いようで意外と少ないのです……」

「あ~、まぁそれは、色々あるのよ」


 なんだか女神様が茶を濁すような雰囲気だったので、時間稼ぎも兼ねてツッコんでみることにしました。


「教えて下さい。それとも女神様はお忙しいですか?」

「いや、時間はしばらくは大丈夫だけど……ここでの私とのやり取りは、結局記憶に残らないわよ? それでもいいの?」

「はい! それでも色々と聞いてみたいのです」


 話しを聞きたいのは嘘じゃありません。神様のことを聞くチャンスなんて普通ありませんから。


「えーっとね、実は私、前に一度、人間に転生したことがあるのよ……」

「ええ~! 女神様なのに!?」

「まぁ、上から与えられた使命があってね。ある運命を背負いながら使命を果たすために人間に転生したのよ。もちろん神の記憶なんて無い状態でね。で、その時に過酷な運命を乗り越えるために無意識に起こした奇跡が三つだったの。それが下界でいい影響になって、こんな風に定期的に奇跡を起こそうってことに決まったってわけね」


 驚きました。私達の気付かないところで、神様も色々やってるのですね。


「私が人間に転生した時は、やたら犬に縁のある人生だったわ。だからさっき、『犬伏』という苗字を見た時に驚いたのよね」


 女神様は目を細めて、どこか懐かしむような表情をしています。きっと女神様にとって、それは一つの大切な思い出なのでしょう。


「あの、もしよければ、人間だった時の話も聞かせてください!」


 私のそんな唐突な発言に、女神様は両手を突き出して困惑しています。


「で、でも、別に面白い話じゃないわよ?」

「それでも聞きたいのです。女神様だって、たまには話を聞いてくれる相手が欲しいんじゃないですか?」


 女神様は少し驚いた顔をしていました。


「そうね。じゃあ聞いてもらおうかしら」


 そして、女神様は自分が人間に転生した時の話をポツポツ語り始めました。


――この女神様がどんな人生を歩んできたのか、それはまた別のお話し。


「凄いです。とても面白い話でした!」


 私はパチパチと手を叩いて称賛します。


「ふふ、ありがとう。さぁ、次はあなたが奇跡を起こす番よ。願い事を決めてちょうだい」


 話を聞くのに夢中で、願い事を全く考えていませんでした!!

 そんな私に女神様は笑って話しかけてきます。


「これはね、結局は神の都合でしかないわ。愛する人と出会い、そして寿命を向かえ泣いて別れを告げる。そんな筋書きよ。だからね、あなたは目一杯抵抗しなさい。私が困るような願いを考えて、自分の幸せを掴むことだけに集中しなさい」


 女神様のそんな言葉に、私は心に火が付くような気持ちになりました。

 自分の幸せを掴むための願い……その方法……

 私は考えます。


「あの、少し質問してもいいですか?」

「ええ、構わないわ」


「例えば可愛らしい顔と、スマートな体型と、それと美しい声。これを願うにはいくつの奇跡が必要なのですか?」

「顔と体型はセットで構わないかな? だから使う奇跡は二つね」

「なら、頭はメチャクチャ悪くて構わないので、今の三つを要求したらそれは許容されますか?」

「それは……うん、許容されるわ。一つの願いでまとめられる」


 いいのですか!? だとしたら、色々と考え方が変わってきます!


「さぁ、そろそろ時間よ。願いを決めてちょうだい」

「わ、わかりました」


 時間があれば、もっといい方法があったのかもしれません。ですが、今の私にはこれが精いっぱいなのです……


「では願いですが、すみません! 最初の一つ目から決め直させてほしいのです!!」

「え? えぇ、いいわよ」

「では一つ目の願いですが、人間の体と言葉などの知識を私に下さい!」

「……それはできないわ。その二つの願いを叶えるには、二つの奇跡が必要よ」

「なら、一つの奇跡で許容できるだけの、マイナスの条件を付けます!!」


 女神様は目を見開いて、言葉を失っています。

 私がこんなことを言い出すなんて思わなかったのでしょう。


「許容してもらうための、その条件は――」

 チュン、チュン。

 鳥の声を耳にして、私はうっすらと目を覚ましました。

 何か夢を見ていたような気がします。ですが、どんな夢だったのかは覚えていません。ボーっとする頭で少しの間、考えます。

 まぁ、夢なんてこんなもんですよね……あ、ご主人様の朝ごはんを準備しないと。

 そうして私はモゾモゾとベットから抜け出しました。


 コンコン!


「ご主人様、おはようございます」

「うおお~~!! ようやく狙ってた『航洋艦・晴風』ゲット!! ミケちゃんペロペロ!!」


 何やらものすごく喜んでます……


「あの……もしかして寝てないんですか?」

「おお忍! これがなかなか出なくてな。マジで徹夜してしまった」


 私にはよくわかりませんが、そんなにも嬉しいものなのでしょうか?

 全く! なんでこんな駄主人が私のご主人様なのか理解に苦しみます。


――ドクンッ


 今、何故か鼓動が高鳴りました……


 私のご主人様……

 私がここにいる理由……

 失った記憶……

 そして、あとどれだけの時間、こうしていられるのか……

 私は、そんな小さな胸騒ぎを覚えるのでした。

忍の口調が夢の中と現実とで若干違いますが、伏線というか、仕様なので間違った訳ではありません。

まぁ、記憶を失う前と後では口調が違うと認識してくれて構いません。


今回のネタ。

艦隊これくしょん

ハイスクール・フリート

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