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全くデレない少女との同棲生活!  作者:
サイドストーリー:ナユ
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56話『これらのクエスト、請け負います!』

「すごい……こんなに速く走れる!」


 レベルアップしたせいかな? 体が軽い。自転車で飛ばしているくらいスピードが出る!

 私はさらに覚えたてのスキルを使ってみる事にした。


「スキル『韋駄天!』」


 私はさらに加速する。自動車くらいのスピードになった。何これ楽しい!

 韋駄天は説明によると、一定時間速さが二倍になるスキルみたい。スキルレベルによって持続時間が変わるみたいだから、スキルはまんべんなく使っておこうかな。

 走り続けると景色はみるみるうちに変わり、道が無くなり平原へ出た。さらに走ると道が二手に分かれている所があった。

 上り坂と下り坂。私はここを上ってみる事にした。理由は特にないけれど、なんとなくこの速さで坂を上ってみたかった。

 スピードはほとんど変わらず、上り坂でも駆け上がっていく。風が気持ちよくて、そんな疾走感がたまらなかった。

 しばらく進むと高原へ出た。切り立った崖で見晴らしのいい広い場所。周りを見渡してみると、少し遠くに海に面した村が見えた。

 あちゃ~……。さっきの分かれ道は下るのが正解だったみたい。だけどこの崖から下を覗いてると、なんだか下りられそうな気がしてくる。切り立った崖だが、所々出っ張った箇所を足場にすればいけそうだと感じた。

 私はピョンと崖から飛び降りた。

 片足が乗るくらいの小さな出っ張りを足場に、落下する勢いを殺して次の足場へ方向を変える。そうして、4、5回足場を変えながら落下すると、すぐに地面へと着地する事ができた。

 上を見上げてみる。さっきまで私がいたのは20メートルくらいのそびえ立つ崖の上だ。


「こんな高い崖からも飛び降りる事できるんだ!」


 なんだかアクション俳優になった感じで気分がいい! ……この世界限定でだけど。


「最初は『盗賊』なんて悪いイメージしかなかったけど、気に入ってきちゃった」


 なるほど、職業は使う人次第とは言われたけど、確かにその通りだった。私はこの能力で、勇者様にアイテムを提供するんだから!

 私は気持ちを新たに、目前の村へと走り出した。

 村へ到着して、まず私は周りを見渡す。東は広い海だ。この村にも浜辺があり、そこに小舟や漁に使う網などがまとめてある。

 逆の西の方角には草原が広がっている。さっき飛び降りた崖の上から見た限りでは、西の方角にも海が広がっていた。つまりこの大陸は、西の海と東の海に挟まれているんだ。まぁ、陸地の部分もかなり広いと感じたけど。

 しかし北の方角を見渡すと、もはや大陸しか見えない。遠くの方にはゴツゴツとした岩場なんかも見える。海が近いのはこの辺だけで、北の方角には大陸が大きく広がっているのかもしれない。


「ようこそ。ここは魔王に一番近い場所、タッチ村だぜ」


 入口で見張りをしている冒険者風の青年が情報をくれた。

 私もお辞儀をして、村の奥へと進んでいった。

 ここが魔王に一番近い村。だとしたら、ここで勇者様にアイテムを渡す事になる。ここを拠点にアイテムを探さなきゃ!

 私は最初に宿屋へ入った。


「いらっしゃい。おひとり様500イリーナです」


 とりあえず部屋の確保を優先にした。お金を払い、次に昼食を取るために飲食店に入ってお腹を満たした。ちなみにこの村のおススメは海鮮料理だった。

 飲食店を出た私は、いよいよなんのアイテムを狙うか決めるために情報を集める事にした。聞き込みを行って分かったのは、この村の近くの洞窟には伝説の盾と、鎧が眠っているという事。

 サーシャ村の近くの洞窟にも伝説の兜が眠っているという話を聞いたから、これで伝説の装備の情報は三つになった。

 ここで私は伝説の装備をターゲットにする事を決めた。だって、そんな貴重な装備を勇者様に届けたら、絶対喜んでもらえるもの! 問題は、どの装備を狙うかって事だけど……

 サーシャ村付近の伝説の兜は無理。なぜならその洞窟は、ナゾナゾが多いみたいだから。私、ナゾナゾ苦手……

 この村付近の鎧と盾だけど、ここで気になるのが剣の存在だった。伝説の剣だけ情報がない。私は、この剣を探した方がいいんじゃないかと思っていた。だって、鎧と盾は割と洞窟の情報が手に入りやすく、勇者様ならすぐに集めてしまいそうだから。

 勇者様はまだレベル上げをすると言っていたけど、いつこの村にやってくるかわからない。もし私が鎧を取りに洞口へ向かった後に勇者様がこの村に到着して、私が洞窟から帰る時に行き違いにでもなったら、それこそ時間の無駄になる。

 私が狙うのは、時間の足りない勇者様が、絶対に入手できないアイテムを手に入れる事。だとすると、それはやはり伝説の剣という事になる。

 よし決めた! 私は伝説の剣を狙おう。そのために、もう一度最初から情報収集を行う必要がある。今度はちゃんと、「伝説の剣」というワードを使って聞き込みを行おう。

 そして私は、再びこの村を駆けずり回った。

 数時間後、私はこの村のギルドへ入り、小休止をしていた。誰に聞いても伝説の剣の在りかはわからない。お手上げ状態だった。


「お嬢ちゃん、伝説の剣を探しているのかい?」


 突然、隣から声をかけられた。見るとそのテーブルには飲み物を片手にしたオジサンが座っている。


「伝説の剣を知っているんですか?」

「知ってるぜ。正確には、伝説の剣の場所を知っている人物を教えてやれるって意味だがな」

「教えて下さい!」


 勢いよく立ち上がる私に、オジサンは首を横に振った。


「ただで教える訳にはいかないな。こう見えて俺はギルドの関係者でね。ここのギルドでそれなりにクエストをこなしてくれたら、お礼に教えよう」


 オジサンはニッと笑う。まるで、どうだ? 出来るか? と言っているようだった。


「……わかりました。クエストの種類は何でもいいんですか?」

「ああ、何でもいいさ。とにかく多くのクエストをこなして、ギルドに貢献したならそれでいい」


 時刻は14時になったところ。時間はまだまだある。

 私は掲示板に張り付けてある依頼書をざっと流し読みしてから、五枚の依頼書を一気に引きはがした。

 依頼内容は簡単にこんな感じ。


・サーシャ村まで手紙を届けてほしい。

・サーシャ村の特性チーズを買ってきてほしい。

・迷いの森に分布している日陰草を摘んできてほしい。

・迷いの森に現れた危険種の討伐(難易度:中)

・タッチ村周辺に現れた危険種の討伐(難易度:中)


 これらを持って受付にシャっと広げるように並べた。


「これらのクエスト、請け負います!」

「えっと……こんなに同時に請け負って大丈夫ですか?」


 私が子供だと思ってか、受け付けのお姉さんが念を押してくる。


「大丈夫です。この後にもさらに請け負う予定なので」

「……わ、わかりました。では依頼を刻みますので、手帳をお預かりします」


 どうやら依頼を受ける時には、全てこの手帳に記録されるらしい。魔法の手帳は決して不正できない仕組みみたい。

 こうして私は、足を使う仕事を中心に、クエストをこなし始めた。

 スチャっと短剣を抜き、私は身構える。タッチ村で買った、一番高い盗賊用の短剣だ。

 目の前には、鋭い爪を振りかざす巨大なクマ。

 危険種に認定されたモンスター。その難易度は中と記されているが、戦闘が苦手な私にとっては実戦を学ぶ丁度いい敵だった。

 盗賊は素早さが高いが、その速さを活かせなくては意味がない。例えレベルが高くとも、自分の速さを制御する事ができなければ宝の持ち腐れだ。


「スキル、『韋駄天!』」


 フワリと体が軽くなる。それと同時に、目の前のクマが襲い掛かって来た。腕を振り上げ、私に向かってその爪を振り下ろした。

 私は本気で地面を蹴る。空気の膜をぶち抜くような瞬間的な加速に、自分でも反応が遅れそうになる。けれど、すかさずブレーキをかけ、体を傾けて体重移動をすると、滑り込むようにクマの背後を取る事ができた。


「特技、『急所突き!!』」


 クマの背中目がけて、短剣を電光石火の速さで一刺し突く。

 とたん、周りに絶叫が響いた。そしてクマの体はサラサラと光になって消えていく。


「ふ~……」


 手帳を見て、討伐完了となったのを確認すると安堵のため息が零れた。

 これでもう何体目だろうか。お使いや、採取するクエストだけなら10個ほどこなして、もはや討伐クエストの方が手っ取り早いと戦い続けた結果、うまく相手の背後に回り込むくらいには自分のスピードを制御できるようになっていた。

 ギルドに向かい、クエストが完了した事を受付に報告して、報酬を受け取る。


「ふっ。どうやら、本当にかなりのクエストをこなしたみたいだな」


 オジサンはそう言って、私に近付いてきた。


「いいだろう。お嬢ちゃんの頑張りに免じて、約束通り情報を提供しよう。この村の外れに住むじいさんに会いな。そいつが詳しい場所を知っているはずだ」


 時刻は17時10分。私はついに、伝説の剣の所在を知る人物の情報を得た。

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