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44話『攻撃が当たらなければ負ける事は無い。それすなわち、最強なり!』

10/3

リアルでシロツメクサを観察していたんですが、普通に元気よく咲いてました。

調べた時に、咲くのは九月いっぱいまで、と書いてあったので、作中で十月には寿命を向かえる設定で作ったのですが……


10/4

いつも観察していた芝が除草されてました。

ガーン……

「ふっふっふ。よくぞここまで来た、勇者諸君。我は四天王の一人、兎々トト。今からキミ達の相手をしよう」


 夕日が沈もうとするその背景を背に、少し高めの岩山からそいつは語り掛けてきた。どうやら四天王は高い所が好きらしい。

 渋い声でトトと名乗るそいつは、完全にウサギだった。いや、完全とは言えない。スリムな八頭身の体をタキシードで包み、その首から上がウサギそのものだったからだ。

 白い毛並みに赤い瞳。長い耳の片方には、穴の開いたシルクハットを通して被っているつもりのようだ。

 手にはステッキを持っていて、紳士のつもりなのだろうか?


「オオカミの次はウサギか……まるで動物の国だな」

「ふっふっふ。我からすれば、人間が多すぎるのだがね」


 トトは岩山のてっぺんから見下すように笑っていた。


「ところでいっつも疑問に思うんだが、なんで四天王って奴らは一人ずつ戦おうとするんだ? 一斉に襲ってきた方が確実じゃないか。……まぁこっちは楽だからいいけど」

「ふっふっふ。ガレフを倒したからと言って調子に乗るなよ? お前らの相手など我一人で十分なのだ。それに、ほかの四天王も忙しいのでな」

「いや、忙しいってずっとこの辺にいるだけじゃないか!? そこんとこどうなんだ!?」

「ふっふっふ。貴様ら人間の尺度では、我らを理解する事は出来ない」

「とりあえずさ、その『ふっふっふ』って笑ってからしゃべるの止めないか? 会話のテンポが悪くなるんだよ!」

「はっはっは。人間とは、かくも器が小さき者なり」

「よ~しわかった、バカにしてるな、そうなんだな? 一発殴るから下りてこい!」


 俺の言葉に、両手をあげてやれやれと首を振りながら、トトは素直に岩山から飛び降りて来た。


「よぉし、覚悟しやがれ!」

「マスター落ち着くのですよ……」


 恋を振り切って、俺はトトに突撃をかける。剣を抜き、走る勢いを乗せて地を蹴って、奴に向かって思い切り剣を振り下ろした。


「ふっふっふ。スキル、『電光石火!』」


 ブン! と、俺の剣は空を斬った。

 ギリギリの、絶妙な間合いで避けられたのでなんだか悔しい……


「くっそぉ……このヤロ! この、このぉ!」


――コウの攻撃は、ヒラリと身をかわされてしまった。

――コウの攻撃は、ヒラリと身をかわされてしまった。

――コウの攻撃は、ヒラリと身をかわされてしまった。


 くっそ~、攻撃があたらねぇ! すばやさか、回避率を上げるスキルか!?


「ご主人様、加勢します! スキル『ベルセルク!』」


 忍が叫びながら、一瞬でトトの頭上まで跳んできた。拳を握りしめ、ゲンコツをかます様に腕を振り下ろす。

 だが、その攻撃さえもトトはヒョイと軽くかわしてしまった。

 距離をあけるトトに、地を蹴り、たった一歩で間を詰める忍の攻防が続く。一見、その攻防はハイスピードによる高レベルな戦いに見える。

 しかし、俺は気付いてしまった。トトの尋常でない動きに……

 奴は真っすぐな、直立した姿勢のまま動いているのだ。

 忍が攻撃を仕掛けると、真っすぐな姿勢のまま、まるで瞬間移動でもするかのように後退して身をかわしている。

 奴の足を見てみる。だが、移動の瞬間はやはり、フッと消えるように動くために、足の動きが全く見えない。

 わかるのは、瞬間移動などではなく、ちゃんと地を踏みしめて動いているという事だけはわかる。なぜならば、奴が動いた瞬間にその場所から砂埃が舞うからだ。

 多分スキルの効果もあるんだろうけど、あいつは慣性とか初動とか関係なく、恐ろしい速さで動いているんだ。


「ふっふっふ。キミはなかなか速いな。だが、その程度では我には追い付けんぞ」


 クフクフとウサギの鼻をひくつかせてから、トトはフッと姿を消した。その場には砂埃だけが舞っていて、気付いた時には忍の背後に立っていた。

 手に持つステッキを構えて、忍に向かって横殴りに振り抜く。


「くぅ……」


 凄まじい反応速度で、忍はその一撃をなんとかガードするのに成功した。


「速いですが、攻撃力は低いですね。私でもそんなに痛くねぇです」

「ふっふっふ。確かに我は素早さを特化し続けているせいで、攻撃力はあまり強くはない……だが――」


 フワリと砂埃が舞ったかと思うと、トトが分身して忍を囲った。

 いや、分身じゃない。とんでもない速さで残像が残っているんだ。


「連続して攻撃を当て続ければ、攻撃力の低さなどさほど問題ではない!」


 ズガガガガガガッ!!

 忍の前後左右から、トトの見えない連撃が繰り出される。防御も回避もままならず、忍は攻撃を全身に浴びていた。


「くっ……あっ……きゃあああっ!」


 何も出来ずに、忍がその場で倒れ込んだ。


「忍!? ちくしょう!!」


 俺は忍を囲む残像にブンブンと剣を振り回しながら突撃した! そのまま中へ突入すると、忍を左手で抱き起して、右手の剣で奴を威嚇する。


「ふっふっふ。攻撃が当たらなければ負ける事は無い。それすなわち、最強なり!」


 鼻を引くつかせて笑うトトに、冷や汗が流れ落ちる。

 俺らの中で一番すばやさが高いのは忍だ。ベルセルクを使ってすばやさも強化している。それでもこいつには追い付くことが出来なかった。他にどうすれば攻撃を当てる事ができるんだ……?


「ん~……仕方ないですね。次は私が相手をするのですよ」


 少し離れた所から、明るい口調でそんな言葉が聞こえてきた。

 俺も、トトも、その方向に目を向けると、恋がいつもと変わらない表情のまま立ち尽くしていた。


「えっと……恋……? なに言ってんだよ、こいつのバカみたいなスピードを見ただろ!? 当てられんのか!?」

「まぁ、色々と試してみるのですよ」


 とぼけた顔をしながら、そう恋は答えた。ぶっちゃけ正気を疑う……


「ふっふっふ。次は魔法使いか? やはり人間は愚かだな。魔法のような遠距離攻撃や範囲攻撃の方が可能性もあると考えているようだが、無駄な事よ」

「それはやってみないとわからないのですよ? 『プロテクションウォール!』」


 恋の周りに光の結界が現れた。


「この結界は中からでも攻撃ができるのですよ。私があなたに攻撃を当てるのが先か、あなたが結界を壊すのが先か、勝負なのです!」

「ふっふっふ。よかろう」


 そして二人は睨み合う。

 正直言って、俺は恋に勝てる見込みがあるとは思えない。あのスピードはもはや反則、チートレベルだ。例え魔法でも、当てる事ができるとは思えなかった。


「恋のやつ、何を考えてんだ? 何か作戦でもあんのかな?」

「わかりません。ですが――」


 ダメージが残っている忍が、体を起こした。俺は忍の体を抱き寄せるようにして支えてやる。


「レンはああ見えて、中々計算高いですから……女神様にも賭けで勝ってますし。うぅ……」


 ふ~む……それにしても、敵の攻撃を受けてボロボロにされて弱ってる女の子って、なんか結構エロいよな……ってそうじゃなくって!! そうだな、なにか考えがあるんだろう。


「シノブ、回復はちょっとだけ待ってほしいのですよ。すぐに終わらせますから」

「……本気で言っているのか? 人間とはそこまで愚かな生き物だったか……」


 トトは呆れたように首を振り、もはや笑い声さえあげなかった。


「では行くのですよ。スキル、『ホーミングショット!』」


 ホーミングショットは、恋の魔法に誘導性を加えるスキルだ。だけどその効果は微弱で、狙った相手が軌道から逸れると、魔法も僅かに相手に向かって軌道を変える程度のものだ。

 決して、必中でもなければ完全追尾でもない。


『オメガフレイム!』


 恋が巨大な炎の塊を杖の先端に出現させる。それをトトに向けると、ピッチングマシーンのように剛速球で打ち出された!


「遅い」


 さっきと変わらず、なんのモーションもないまま、トトはヒラリと炎をかわす。

 避ける際に、ホーミングショットの効果で炎が僅かにトトに向かって方向を変えるが、その程度で当たるような相手じゃない。

 余裕をもって回避したトトは、そのまま恋に向かって駆け出した。手に持つステッキで一撃、光の結界を叩く。ミシリと、結界からイヤな音がなった。


『オメガフリーズ!』


 今度は恋の頭上に、氷の矢が出現した。矢と言うよりはツララに近い。次々と出現したツララは、とてつもない数になった。


「発射!」


 何十本もの氷がトト目がけて放たれた。雨のように打ち付ける鋭い氷。隙間なんてほとんどない。

 だが、それでもトトには通じなかった。ステッキを振るい、隙間をこじ開け、光速でその隙間に滑り込む。いや、そんな風に見えるだけで、もはや俺の目には食らっているのか避けられているのかの判断はできないほどの速さだった。

 打ち付ける氷の雨に対して、残像を残すほどの速さでトトは動き続けていた。


「ふっ、これで終わりか?」


 頭上の矢を全て打ち尽くしたのを見て、トトは結界の前に瞬時に移動していた。

 ガガガガガッピキィ!

 連続で結界を殴りつけると、ついに亀裂が入る。


『オメガスパーク!』


 天から一筋の光が落ちてきた。いや、落ちるというよりも、落雷のように天と地面が光りで繋がっていた。

 だが、その攻撃さえもトトは避ける。光ったと思った時には、すでに後方へ移動していた。


「マジかよあいつ、落雷でさえ避けるのか!?」


 俺が驚愕するのと同時に、トトは恋に突っ込んで行った。

 ガシャン! と、ついに結界が砕け、そのままの勢いで突っ込んだトトに、恋は跳ね飛ばされていた。

 ドサリと地面に叩きつけられる恋を見ると、俺は無意識に立ち上がって、助けようと走り出そうとしていた。だが、それを忍が制止する。


「なんだよ忍、このままじゃ恋が殺されちまう!」

「待って下さい。……レンはまだ何か狙っているように見えます」


 俺ははやる気持ちを抑えて恋を見た。


「うぅ……痛いのです……」


 ムクリと起き上がる恋は、転んでしまった子供のような表情だった。

……確かに、今から殺されるという怯えた様子はない。


「ふっふっふ。これで我の勝ちだな。愚かな魔法使いよ」

「勝ち? 何を言っているのですか? むしろ勝負はここからなのですよ、愚かなウサギさん」


 恋は立ち上がると、杖を持っていない、左手を目の前に広げた。


「これ、なーんだ?」


 広げられた左手に、眩い光が出現した。バスケットボールくらいの大きさだ。


「ふむ。高密度のエネルギーだな。いつの間に用意したのだ?」

「スキル、『リフレクション』なのですよ」


 ポン! と、恋がその光を真上に投げると、恋の頭の上で停止した。


「リフレクションは、私がプロテクションウォールを使ったあと、密かに発動させておいたのです。効果は、『プロテクションウォールに攻撃が加えられた時、その衝撃を吸収してエネルギーに変換。相手に撃ち返す事ができる』というもの」

「なるほど、つまりそれを我にぶつける事ができれば、貴様の勝ちという訳か……では愚かで浅はかな魔法使いよ――」


 フッと、トトの姿が消えたかと思うと、一瞬で恋の背後に立っていた。


「それを撃つ前に止めをさす事にする」


 ギイイイィィン!

 トトの一撃が弾かれた。

 まるで、背後から攻撃が来るとわかっていたかのように、恋が右手に持っていた杖で弾いていた。


「ぬぅ?」


 再びトトの姿が消える。

 刹那、背後に現れたトトが武器を振り下ろす。


 ギイイィィィン!

 また、読んでいたかのように、恋は背後から振り下ろされたステッキを自分の杖で弾いていた。


「愚かで浅はかなのはあなたなのですよ? あなたの動きにはもう目が慣れました。私、動体視力には自信があるのです」

「くっ!」


 ブワリと、トトが分身して恋を取り囲んだ。いや、あれは残像か!? 忍に使ったのと同じ攻撃だ。


「ふっふっふ。目が慣れただと? 避けられるものなら避けてみせるがよい!」


 凄まじい速さで止まる事のないトトが、四方八方から襲い掛かっていく。

 だが、恋はその全ての攻撃を見切っていた。僅かな動きでトトの振るうステッキをかわし、避けきれない攻撃は杖で捌く。

 地を疾走する足音と、杖同士がぶつかる衝撃音がテンポよく響いていた。


「あなたは攻撃力がかなり低い。私でも簡単に弾き返す事ができるのですよ」

「ふ……ふふふ……なら、私の本気のスピードを見せてやろう!」


 風が吹き荒れた。

 恋の周りを回るトトの動きが速すぎて、風がうねり、竜巻のように恋の周りを渦巻いていた。


「見るがいい、愚かで浅はかで無知な魔法使いよ。このスピードに攻撃を当てられるか!? いな! 当てられるわけがない! 貴様のリフレクションとやらも、当たらなければ意味がないのだ! フハハハハ!!」

「何もわかってないのですね……愚かで浅はかで無知なウサギさん。もうあなたは詰んでいるのですよ……スキル、『精神統一!』、『マジックアクティベーション!』」


 メンド臭そうに恋は吐き捨てて、杖を地面にトンと打ち付ける。


「なぁに、本当に簡単な話なのです。単純で、なんにも面白みもないオチなのですよ。ただ単に、私のこの魔法は必中なのです。特技『ホワイトフレア!』」


 ズドオオオオーーン!!

 恋の右斜め前方で、大きな爆発が起きた。そして、その上空にはトトがその爆発で打ち上げられていた。


「終わりなのです……」


 クン! と、恋が合図を出すと、頭上のエネルギー体がトトに向かって打ち出された。

 はち切れんばかりの眩い光は、流星の如く尾を引いて、空中で身動きの取れないトトに、ついに命中した。


「ぐあああああああああ、この我があああああああ……」


 断末魔を残して、空中で再び大きな爆発が起こる。そしてその中心から、モンスターを倒した時と同じようにお金が降って来た。


「うお~、すげぇじゃねぇか! やったな恋!」


 俺は忍を支えながら恋に歩み寄った。

 本当に一人で倒しちまうとは思ってなかった分、凄く興奮しているのが自分でもわかる!


「うぐぅ……」


 だが、恋が突然ガクリと膝をついた。


「ど、どうした恋!? 大丈夫か!?」

「い、今の闘いでひどいダメージを負ったのです……マスター、だっこしてください………」


 だっこ!? なんで前から!?


「レン! ダメージを受けたなら魔法で回復すればいいでしょう!? っていうか、私も回復してほしいんですが……」

「むぅ……シノブは私が戦っている間、ずっとマスターとベタベタしてたので、なんか面白くないのです」


 そこ!? そこ怒るポイントなの!?

 もはや夕日も沈んだ黄昏どき。暗くなりつつあるこの荒野で、俺は恋の機嫌が直るまで、彼女の頭を撫で続ける事になった……

今回のスキル。

電光石火:常時すばやさ2倍。慣性と空気抵抗を無くす。

精神統一:一定時間、魔攻力が2倍。

マジックアクティベーション:次に使う特技の消費が2倍になるが、威力も2倍になる。


特技

ホワイトフレア:指定した相手の体を直接爆発させる魔法。必中効果。


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