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40話『今できる事をやるぞ!』

「……」

「……」

「……」


 時刻は12時。

 タッチ村に戻ってきた俺達は、昼食を取るために定食屋へと入った訳だが、俺の頭の中は疑問と焦燥でごっちゃになっていた。


 白虎の鎧と玄武の盾、この二つ宝箱が空っぽだった事で、俺達は午前中の時間を完全に無駄にした。

 そもそもなぜ宝箱が空っぽだったのかもよくわからない。

 ただ、一つだけ空っぽなら女神様が仕込み忘れたとも考えられるが、二つともとなると、これは完全になんらかの力が働いているんだ。

 多分、同じ人物が、同じようにして、同じ目的で俺達よりも先に奪って行った……そしてそれは、村人から情報収集をするだけでは決して解決しないイベントなんだ……この世界に来て、見て、動いて……情報を集めるだけじゃなく、俺が気付かなければいけない何かが、見えない所で起こっている!

 くそ! 何を見逃した!? 何に気付かなければならなかった!?


「――――様」


 俺はこの三日間を振り返る。何か、この世界でおかしな事はなかっただろうか……?


「ご主人様!!」


 忍の声にハッと我に返る。

 顔を上げると、忍と恋がこっちをジッと見つめていた。


「え? あぁ、すまん。どうした?」

「だから、朝にご主人様が言ったじゃないですか。三手に分かれて行動するのもアリだって。私達、それでもいいですよ?」


 急にどうしたんだ? あ、そうか。宝箱が空っぽの時からずっと俺が頭を抱えているから、こいつらなりに気を使ってくれているのか……


「午前中は何も成果がなかったのです。17時まで残り5時間しかありません。だから、私達はマスターの言う通りに動きます。なんでも言ってほしいのですよ!」


 あれだけ単独行動を怖がっていた恋まで、俺のために勇気を出してくれている。よし! 無理させない程度にこいつらの行為に甘える事にしよう。


「お前らサンキューな! よし! ならここで三手に分かれて行動する。忍、お前はこの村から西に住んでるっていう武道の神様ってやつに会いに行ってくれ。多分これは、武闘家であるお前の強化イベントだと思うんだ。だけど無理はするなよ。一人でクリアするのが厳しい内容だったら、俺の所に戻ってこい。死んじまったら元も子もねぇからな」

「はい。わかりました」


 忍は力強く頷いてくれた。本当に大丈夫なんだろうか? かなり気合が入っているような目つきだ。


「恋はもう一度情報収集を頼む。やっぱ、どうしても白虎の鎧と玄武の盾の行方が気になる。とにかく多くの人から情報を集めて、手に入れるチャンスがないか探ってくれ。あと、それと同時にナユちゃんの行方も探してくれ。アイテムを届けてくれるって手はずなのに、未だこの村に戻ってきてないみたいだからな」

「わかったのですよ! ……って私、情報収集だけなのですか?」

「いや、もちろんそれだけじゃないさ。情報を集めて、もうこれ以上の手がかりは見込めないと判断したら、次に町はずれに住む老人の使い走りイベントをやってもらいたい。このイベントで、どんな報酬がもらえるのかは見当もつかないが、そういうイベントの方が貴重なアイテムをもらえたりする事もあるからな。もしこれら全部を終わらせることができたら、俺の所に来て俺を手伝ってくれ」

「了解なのです!! でも、マスターはどこで何をしているのですか?」

「俺はこの村のギルドから出ているモンスター討伐クエストをこなしてる。できるだけお金を貯めて、この村の最強装備を買わなくちゃいけないからな。なんせ伝説の装備は集められなかったから……」


 俺が苦笑いを浮かべると、二人も釣られて、困ったような笑いをこぼした。


「よっしゃ! 気持ちを切り替えて今できる事をやるぞ!」


 そうして俺達は昼食を取った後、別々の行動に出た。

 忍と恋は少し心配だが、特別に危険な任務ではないはずだ。まぁ大丈夫だろう。それよりも俺の、一人でモンスター討伐でお金を稼ぐという方がよっぽど油断できないミッションだ。気を引き締めて取り掛かる事にしよう。

 俺はギルドに入り、手配書を確認しながら手帳にメモを取り、効率よくお金を稼ぐための討伐を始めるのだった。

 時刻は15時30分。俺は着実にモンスターを討伐して、ギルドに報告をしてお金を受け取っていた。魔法の手帳はギルドからモンスター討伐依頼を受ける時に、自動的に記録されるために不正は出来ない。

 さて、また次の狩りに出ようかと思った時だった。入口から恋が入ってきて、キョロキョロとしている。恐らく俺を探しているんだろう。

「恋」、と俺が声をかけると、跳ねるように近付いて腰にしがみついてきた。


「マスター!! お久しぶりなのですよ~」

「ぐほぉ! いや、まだ3時間しかたってねぇぞ!?」


 タックルを仕掛けられた衝撃でフラ付きながらも恋を引きはがす。そしてこれまでの成果を聞いた。


「それが……やっぱり伝説の装備の情報は誰に聞いてもわからなかったのですよ。空っぽだった宝箱の中身の行方が分からないのはもちろんの事、それを装備している人を見た人もいません。完全にお手上げなのです……」


 俺達よりも先に持って行った人物がいるとしたら、装備している姿を誰かが見ているはずなんだが……その目撃情報すらないのはどういう事なんだ……?

 はやり情報に頼らず、俺自身が何かに気付かなくてはならなかったんだろうか……


「それとナユちゃんの足取りですが、こっちもよく分かりませんでした。何やら色々と情報を集めていたらしいのですが、今日の朝からどこかへ出かけたっきり、戻って来ないそうです。……マスターごめんなさい。有力な手掛かりを全くみつけられなくて……」


 ションボリとする恋を見ていると、飼い犬がご主人様の役に立てずに落ち込んでいるように見えて、妙に頭を撫でてあげたくなる。……もちろん、本人にはそんなこと言えないので、慰めながら頭を撫でてやった。


「いや、情報が無いなら、それはそれで次の行動を決める要素になるから気にする事はねぇぞ。あとは村の外れに住むじいさんの相手をするってイベントだが……」

「あ、それもやっておきましたよ。アレやれコレやれ言われたこと全部こなしたら、青龍の剣が眠っている洞窟の情報を教えてくれました。この村から南東の鍾乳洞にあるみたいなのですよ」


 マジか!? そのイベントで伝説の装備、青龍の剣の情報が聞けるって訳だったのか……しかし、もうすぐで16時になろうとしている。さすがに忍のいない今の状況で取りに行くのは得策ではない。ここは予定通り、恋と二人で討伐クエストをこなしてお金を貯め、この村の店で売っている装備で妥協するしかなさそうだ。


「せっかくの情報だが、二人でその鍾乳洞を攻略するのは止めた方がいいな。忍が戻ってくるまで、俺達は討伐クエストでお金を稼ぐ事にする。恋、手伝ってくれ」

「アイアイサー! なのです!」


 そして俺と恋は、忍が戻ってくるまでの間、お金を稼ぎ続ける事にした。

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