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36話『これってアレですよね? ボス戦ってやつですよね?』

「シロツメクサじゃん。忍はどうなん? 声、聞こえんのか?」

「いえ、私には聞こえねぇです」

「シノブは、私が女神様とやった賭けの弊害で記憶をなくしてますからね。どっちかと言ったら人間寄りなのですよ」


 そう答えながら、風に揺れるそのシロツメクサに恋は耳を傾ける。


「で、なんて言ってるんだ?」

「ふむふむ……。どうやら、最近ここにモンスターが住み着いて花を踏み荒らすそうなのです。なんとかそのモンスターを退治してほしいみたいですね」


 ふむ。まぁRPGではよくありそうな展開だな。もしかして女神様ってレトロなゲームを参考にこの世界を作ったんじゃねぇかな?

 とりあえず、引き受けるとそのままイベント進んじゃいそうだから、一旦断ってからまた来るか。


「任せて下さい! 私達がモンスターなんてやっつけちゃうのですよ!!」

「うおおおおい!? ちょっと待てええぇぇ!! 勝手に話を進めないでくれぇ!」


 あっさりと返事を返す恋に、俺は慌ててストップをかける。

 実は、もう俺の魔法力は空っぽで技は使えないのだ。


「どうしたのですかマスター。私、この子を放ってはおけないのですよ!」

「いやそうじゃないんだ! メタル狩りで俺の魔法力がゼロの上に、もう魔法薬もねぇんだよ!」


 俺のメタルスラッシュだけで討伐していたから、恋と忍は特技が使えるだろうけど、できるだけ万全の状態で挑みたい。


「『助かります。もうそろそろモンスターが帰ってくる頃です』って言ってるのですよ?」

「ほら~! 返事するから速攻でイベント始まったぞ!?」


――バサッバサッバサッ!


 どこからともなく翼を羽ばたかせる音が聞こえてきた。どうやらモンスターってのは翼を持つ飛行タイプのようだ。

 ぐるりと見渡すと、西の空の夕日を背に、巨大な影が近づいてくる。

 ドンドンとその影は大きくなっていき、目の前まで迫るころには、体長が十メートルはあろうかというほどの大きさになった。


――ズウゥゥン……


 俺達の近くに降り立ったそのモンスターは……ドラゴン!

 真っ黒な体に大きな翼を持ち、爬虫類のような顔。その口は、前に突き出ており、サメのような鋭い歯が伸びている。

 あれで噛まれたら、HPとか防御力とか関係なく、即死するんじゃないか……?


「ギャオオオオオオオオォォン!!」


 恐ろしい表情の巨大な黒竜は、威嚇するように雄叫びをあげた。

 正直、俺は一瞬すくみあがってしまった。


「ご主人様、これってアレですよね? ボス戦ってやつですよね? 魔法力を気にせずに技、使っていいですか?」


 黒竜の動きを警戒しながら、それでいて冷静に忍が俺に許可を求めてくる。

 昨日まで犬のようなモンスターにビビっていたとは思えない目つきで黒竜を見据えていた。


「あ、ああ、それは構わねぇけど……俺が戦力にならないんだよなぁ」

「マスターが出るまでもないのですよ。私達だけでやりますから」


 そう言って恋が一歩、俺よりも前に出た。

 巨大な黒竜は再度、翼を羽ばたかせて空に飛びあがる。その風圧は物凄いが、俺の前に立つ二人は決して怯んではいない。


「攻撃が届きません。レン、撃ち落して下さい」

「は~い。ちょっと待つのですよ」


 そう言って忍は黒竜の横に回り込む。

 完全に戦闘に入ったその場の空気に、黒竜が動き出した! その巨体で恋に向かって突っ込んでくる。

 俺は慌てて恋の前に立ち、剣を構えた。特技は使えねぇし、受け止めきれるかわからんけど、俺が守んねぇと……


「大丈夫なのですよマスター。特技『プロテクションウォール!』」


 俺の目の前に光の壁が現れて、黒竜はその壁に激突した。頑丈な障壁に低いうめき声をあげ、再び空へ逃げようと翼をばたつかせている。


「逃がさないのですよ。『オメガスパーク!』」


 空から一筋の光が落下して、翼の付け根に触れると、バチバチと音をたてながらその部分を中心に電撃が円形に広がって行く。それによって黒竜の翼が動かなくなり、そのまま丘の中心に墜落した。

 四肢を使い、四つん這いに体を固定した所へ、忍がゆっくりと歩み寄る。


「グルアアァァ!!」


 黒竜は巨体を回し、太い尻尾で忍を薙ぎ払おうとした。


「特技『咆哮ほうこう連牙れんが!』」


 ガガンッ! と立て続けに野太い音が二度響く。

 重く迫り来る尻尾を、右の一撃で勢いを殺し、左の二撃目で押し返していた。

 それにバランスを崩す黒竜へ、忍はすかさず追撃に跳んだ。


咆哮牙ほうこうが!』


 指を90度曲げた状態で繰り出す掌底に、黒竜の体は弾き飛ばされて地面に倒れた。打撃を受けた箇所には五つの指の跡が残っており、まるで獣に噛みつかれたかのようだ。

 忍は再び跳び上がり、黒竜の体を目がけて真っ逆さまに落下していく。


「スキル『クリティカルチャージ!』、『力溜め!』、『ベルセルク!』」


 忍が強化を重ね、そして両手を脇に構えて、落下の勢いを乗せたまま黒竜に向けて両手を突き出す!


「特技……『獣神じゅうしん咆哮牙ほうこうが!!』」


――ドガアアアアアァァン……


 大地が震えた。

 黒竜の体を伝わり、大地にまで広がる衝撃に、丘全体が揺れていた。

 黒竜は小さく唸ると光となって消えていく。

 そんな様子を、俺は唖然として見つめていた。


「お前ら、強くなったな……」

「なに言ってやがんですか。散々レベル上げといて」


 このくらい朝飯前という顔をしながら忍が答える。そう言えばこいつらのスキル、全然確認してなかったなぁ。

 そんな事を考えていると、恋がトテトテと走り出した。あのシロツメクサの元に駆け寄ると、しゃがみ込んで話しかけている。


「悪いドラゴンは退治したので、もう大丈夫なのですよ」


 その瞬間だった。

一陣の風が吹き、大地を撫でると同時に、ここの丘全体にシロツメクサが咲き乱れた。丘の中央に通り道を作る様に、ポコポコと地面から顔を出すシロツメクサに大地は覆われていく。

 そんなファンタジーさながらの様子を、俺は驚きながら目の当たりにした。


――キュピーン!!


 恋の手帳から甲高い音が鳴り響く。


「助けてくれたお礼を受け取って欲しいって言ってるのですよ」


 俺達は恋の手帳を覗き込んだ。


――レンの全ステータスが上昇した。

――特技『ホワイトフレア』を習得した。


 どうやらこれは、恋の特別イベントだったようだ。

 正直、どうやって草花が特技を授けてくれたのかよく分からないが、まぁこの世界を作ったのは女神様で、RPGの要素を取り入れている感じなので気にしないでおくことにした。

 俺はしゃがみ込んで、咲き乱れながら夕暮れの風に揺れるシロツメクサを眺めていると、ある事に気付いた。


「あれ? このシロツメクサ、全部四つ葉のクローバーだぜ?」


 ここの丘を埋め尽くすシロツメクサの葉は、全てが四つ葉だった。


「まるで私達を祝福してくれているみたいですね」


 忍も、この世界ならではの演出に気分が良さそうだった。

 そんな中、恋は呆然と立ち尽くしている。そんな彼女の肩に、俺はポンと手を乗せた。


「女神様ってさ、絶対恋の事を贔屓ひいきしてるよな。こんないいイベントまで用意してくれてさ」

「ん……でも、マスター達をこんな危険なゲームに巻き込んだ事、私は許してないのですよ。絶対に勝って、ドヤ顔を見せつけてやります」

「ハハハ。ま、俺だって負けるつもりはねぇけどな」


 恋は女神様を許さないと言っていたけど、この丘を後にする時、名残惜しそうにしていた姿は印象的だった。

 俺は考える。女神様はどんな気持ちでこのイベントを用意したのか……

 死んだら終わりなこのゲーム。そんな俺達への手向たむけだろうか?

 それとも、神の都合に付き合わせてしまった事による罪滅ぼしのつもりだろうか?

 なんとなく、俺にはあの女神様が悪い人には見えなかった。むしろ、どこか人間味のある人だなとさえ思えたくらいだ。俺達を少しでも喜ばせようとしてくれたんじゃないかと思っていいんじゃないだろうか?


 そんな想いをはせながら、俺達は丘をくだり、四番目の街に到着したのだった。

今回のスキル。

クリティカルチャージ:次の攻撃が必ずクリティカルになる。クリティカ時、攻撃力3倍。

力溜め:一定時間、攻撃力が2倍。

ベルセルク:一定時間、攻撃力、防御力。速さが1.5倍。


因みに、特技、獣神咆哮牙:攻撃力の7倍の威力。


通常攻撃で100のダメージを与えるとしたら、全部重ねると約6300のダメージになる。

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