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30話『今度はスライム責めか!?』

「忍、愛してるぜ!」

「とりあえず、自分の立場が悪い時に愛を唱えて誤魔化そうとするのをやめてくれませんか? マジうぜぇです!」


 チッ! 駄目か!

 俺と恋は、カジノの外で正座をさせられている。忍が怖いので仕方がない……


「で、景品に釣られて今まで遊んでいたと? 完全に女神様の思うつぼじゃねぇですか!」

「いや……でもほら、メダルだって結構溜まったんだぜ?」

「駄主人様、ギャンブルにハマってしまうのは、適度に勝てるからです。これが女神様の罠だとしたら、ある程度勝てるように調整しているんじゃないですか?」


 バカな!? 俺のカジノを攻略しようとした行動全てが、女神様の計算だったと言うのか!? いやしかし、確かに全く勝てないギャンブルならすぐに諦める事ができる。事実、割と勝てそうな闘技場で時間を浪費してしまった。


「女神様……とんでもない策士だぜ……」

「駄主人様がこらえ性のない遊び人なだけです!」


 ……返す言葉も無い。


「マスターどうするのですか? 今日はこの街に泊まりますか? ……三日しか時間がないのに初日で二番目の街ってペース遅い気がしますが……」


 確かに遅い。俺の予定ではここから次の街に行くはずだった……


「ぐぬぬ……よし! 今から次の街を目指すぞ! 遅れた分を取り返す!」

「えぇ~!! 夜になるとモンスターが強くなるって情報がありますよ? それでも行くんですか?」

「武器を買えばなんとかなる! お前ら着いてこい!」


 俺は二人を連れて武器屋に転がり込んだ。


「オヤジ! 300イリーナの剣と杖とグローブを買うぞ!」

「へい! ありがとよ!」


 杖を恋に、グローブを忍に渡した。これで攻撃面は大丈夫なはずだ。代わりにお金がほぼ底を尽きたが、道中敵と戦っているうちにまた溜まるだろう。


「あとはこの1375枚のメダルか」


 俺は再びカジノに入り、景品所でアイテムを確認する。

 交換するならこの辺だろう。


・奇跡のペンダント/1300枚

・力の指輪/500枚


「この奇跡のペンダントってなんスか?」

「これは装備者がピンチになった時に、一度だけ奇跡を起こして助けてくれるアイテムです」

「じゃあ、力の指輪は?」

「こちらは装備者の攻撃力が僅かに上がるアイテムです」


 なるほど、どっちがいいんだろう。なんとなく、力の指輪を二個貰って、俺と忍に装備させるのが良い気がする。

 奇跡のペンダントだと誰に装備していいか迷うし、何よりも効果が曖昧だ。『奇跡を起こしてくれる』というのがどこまでの規模かわからない。


「力の指輪にするか……」

「え!?」


 俺が呟くと、意外にも恋が驚きの声をあげた。


「どうした恋。不満か?」

「いえ……私はマスターに従います……」


 だけど何か、思うところがありそうな、そんな表情をしていた。


「この選択は俺も絶対的な自信はない。恋はどっちがいいと思う?」

「私は……奇跡のペンダントに引かれます。私とマスターが出会えたもの、こうして一緒にいられるのも奇跡の賜物たまものですから」


 確かに、俺達の関係や運命を一言で表すなら、『奇跡』という言葉が最も合っている気がする。


「うっし! なら奇跡のペンダントにするか」


 俺はメダルと奇跡のペンダントを交換した。


「ほい。これは恋が持っていてくれ」

「え!? 私でいいのですか?」

「ああ、ぶっちゃけ、誰に持たせていいのかよくわかんねぇんだ。何となくだけど、恋に持たせた方がいい気がする。付けてやるよ」


 恋にペンダントを付けてやると、嬉しそうにクルクルと回り出す。忍がちょっと羨ましそうな顔でこっちを見てくるが、苦笑いで誤魔化しておいた。忍にも何か買ってやりたいけど、もうお金がないんだよ……

残りのメダルは75枚。このメダルはもう必要ないな。

 俺は足早に、ポーカーをプレイできるテーブル席まで移動する。そこには相変わらず、一人の女性が据わっていた。俺にメダル50枚を分けてくれた女性だ。


「分けてくれたメダル分、利子を付けて返すぜ」


 有無を言わさず、無造作にメダルを近くに置いた。


「あら。2万枚に到達するのが早いのね」

「へっ! 本物を手に入れてやるから必要なくなったのさ」


 そう強がりを言って急いで二人の元へ俺は戻った。二人を引きつれてカジノを出て、街の入口まで来ると、忍が不安そうな声をあげる。


「ほ、本当に今から次の街を目指すんですか!? もうすぐ日が落ちますよ!? それにこの先には――」

「忍、少し落ち着け」


――スキル『ナデナデ』を使用した。


「ちょ! こんな子供だましで落ちつける訳……って、ふぁ~……優しい手つきが気持ちいいです……」


 忍がすぐに大人しくなった。意外とすげぇスキルだな……


――キュピーン!

 スキル『ナデナデ』のレベルが11に上がった。


「ふっ、このスキルは私が育てたのです!」


 恋が得意気な顔をしている。

 っていうか、スキルレベルってどこまで上がるんだ……?


「どの道もうお金なんて無いからモンスターから稼がないと宿代もないぞ! 次の街まで突っ走る!」


 そして俺達は街を出た。

「うおおおおお! モンスター強っ!」

「だから言ったじゃねぇですか~! バカ~! アホ駄主人!」


 森に入った俺達は、喚き散らしながらモンスターと応戦していた。

 忍の集めた情報によると、この森を抜ければ次の街らしいのだが、モンスターの数もまた多い……


「げっ! 今度は四匹同時かよ……」


 目の前の敵を倒したと思ったら、今度はコウモリのような敵と、狼のような敵が二匹ずつ、俺達の行く手を阻んでいた。


「……仕方ねぇ。忍、恋、『特技』の使用を許可する。一気に殲滅するぞ」

「ラジャ!」


 俺はいつ襲われてもいいように、買ったばかりの鉄の剣を構えて敵を睨む。


「特技『敵視寄せ!』」


 モンスターの殺気が膨れ上がり、背筋がゾクリとする。

 その間、忍と恋は横に転回して敵の出方を待っていた。

 モンスターが動いた! 一斉に襲い掛かってくる。


「特技、『フレイム!』」


 俺から右方向に陣取った恋が、魔法を解き放つ。炎は狼に直撃して、光となり消えていく。

 まずは一匹!

 ダンッ! と素早くコウモリの背後を取った忍が右手を構えた。


「特技、『咆哮牙ほうこうが!』」


 右手の指を獣の牙に見立てた、忍の特技! 肉を引き裂く渾身の一撃がコウモリに直撃すると、お金を落として消えていく。

 これで二匹目。


「グルアアアア!!」


 コウモリと狼が同時に俺の目の前まで迫っていた。

 構えた剣を左の脇に持っていく。


「特技、『爆炎破斬!』」


 狼とコウモリの二匹を結ぶ一つの直線。そこを俺は正確に斬り払う。

 斬った瞬間にモンスターは炎に包まれて消えていった。


「へへっ! 殲滅完了!」

「特技って強いんですけど、消費が多くて無駄撃ちできないんですよね」


 忍の言う通り、特技は気持ちがいいくらいに強力なのだが、消費がでかい上にクールタイムが存在する。一度使った技は、約一分間は使えなくなる。


「魔法力が尽きたらアイテムで回復しておくんだぞ。……それにしてもこの森、全然抜けられねぇな。むしろ同じところをグルグル回っている気がするんだが」

「ご主人様、ここは迷いの森です。ここを抜けるには特定のルートを通らないとダメみたいですよ?」

「なに~! そう言う事はもっと早く言ってくれ!」

「言う前に黙らされたんですよ!」


 ふむ、そうだったのか? まぁそういうルートがあるなら問題はない。


「で、どういうルートを通ればいいんだ?」

「知らねぇです。少なくとも私が担当した外にいる人間からは情報は得られませんでした。多分、レンが担当した屋内から聞けるんじゃねぇですか?」


 俺と忍が同時に恋を見る。

 恋は素早く俺達から目を逸らした。


「恋……そういえばお前、ずっとカジノで俺と一緒に居たよな? 屋内の情報収集はちゃんとやったのか?」

「や、やりましたよ。でもそんな情報は無かったと思います……」


 相変わらずこっちを見ようとしない。


「本当か!? 怒らないから正直に言ってみ?」

「ごめんなさいごめんなさい! 一軒だけ回ってあとはカジノでマスターと遊んでましたごめんなさい!」


 なんてこった……だとしたら森を抜ける事ができない。一度街に戻って情報を集め直さないと……


「レン、駄主人様だけならまだしも、あなたまでサボってどうするんですか!」

「まぁまぁ忍、仕方ねぇさ。街に戻って情報を集めようぜ」

「むぅ……駄主人様、なんだかレンに甘いです……」


 そそそそんな事ねぇよ? 一緒になってサボってた仲間として、強く言えないとかそんなんじゃねぇし!


「とにかく、一旦街に戻るぞ~」


 俺が歩き出すと、ピッタリと恋がついて来る。そのさらに後ろで――


「きゃあ!!」


 突然に忍の悲鳴が聞こえた! 何事かと振り返ると、植物のようなモンスターがその触手で忍の体を絡めとっていた。

 しまった! ここは森だ。周りに擬態して接近してくるのに気づかなかったんだ!


「マスター! 魔法使いますか!?」

「いや、忍も巻き込んじまう……」


 植物のモンスターと忍が近すぎる……

 忍は両手を頭の上で縛られて、攻撃が出来ない状態だ。そんな忍の体を、シュルシュルともう一本の触手が巻き付いていく。

 両足に絡みつき、さらに体まで上っていく。

 っていうかエロいな! まさかリアルで惚れた女が触手責めに合うなんて思わなかったぞ!


「くぅ……あぁ……」


 ギリギリと体を締め上げられて、忍がうめき声をあげる。

 必死にもがいてはいるが、チャイナドレスが触手に引きずられ、シワになるだけだ。


「マスター! どうしたら……」

「待て! 今考えてる!」


 うおお! 脳内保存! 脳内保存! 触手先輩、ありがとう!

 ついに触手が忍の首に到達する。首に巻き付き、完全に固定された。


「ぅぅ……ご主人……様……」


 首を絞められた忍が、掠れた声で俺を呼ぶのが聞こえた。


「たす……けて……!」


 ハッと俺は我に返った。

 助けを呼ばれた。俺の女に!


「ウオオオオオオオ!!」


 俺は走り出していた。モンスターに剣を向ける。


――キュピーン!

 特技『ゲイルスラッシュ』を習得した。習得条件、仲間の危機に救おうとする事。仲間の身を案ずる事。敵に怒りを抱く事。これらの条件が重なった時に習得する。消費50。攻撃力の10倍の威力。


「誰もそこまで苦しめろとは言ってねぇ! 『ゲイルスラッシュ!』」


 俺の剣から放たれた凄まじい衝撃波が、モンスターだけを粉々にした。

 グラリと忍の体が崩れるのを、俺は咄嗟に抱きかかえる。


「忍、大丈夫か?」

「ご主人様……」


 忍が俺に手を伸ばしてくる。その両手がムギュウと俺の首を絞めだした。


「もっと早く助けて下さい!」

「グエェ……」


 ガン見してたのがばれていたらしい……

 だが、首から手を離した忍は、意外にも俺の胸に顔を埋めてきた。


「……怖かった」


 忍は震えていた。

 そうだった……異世界転生なんて状況に浮かれているのは俺だけで、忍や恋はこの世界で生きていく術をほとんど知らない。不安でいっぱいなはずだ。俺がついてやらなきゃいけないんだ!


「悪かったよ……けど安心しろ! お前は必ず俺が守る!」

「……はい」


 忍の体を強く抱きしめる。忍は拒んだリしなかった。

 だがそんな時――


「ひゃああ!!」


 今度は恋の悲鳴がこだまする。

 今度はなんだと振り返ると、恋の体には数匹のスライムがまとわりついていた。


「ご主人様、助けないと!」

「ちょっと待て! おお!? 今度はスライム責めか!?」


 慌てふためく恋の体に、もう一匹のスライムが勢いよく飛びかかった。

 その勢いに押されて、恋が仰向けに押し倒されると、両手、両足にスライムが粘着して地面と一体化する。完全に地面へ張りつけられた恋に、別のスライムがのしかかり、その体を這いずり回っていた。


「ひゃん! 服の中に入ってこないで下さい! あん! 動かないでぇ……」


 それは忍とはまた違ったエロさがある。純粋に、快楽と恐怖に戸惑うその嬌声きょうせいは色っぽく、 ビクンビクンと震える体がまたエロい。


「ご主人様、早く――」

「うおお! 脳内保存! 脳内保存!」


 ズルズルと恋に覆いかぶさるスライムは体全体に広がっていく。まるでローションを塗りたくられているようだ。


「いやぁ……そこはダメなのです……」


 そこってどこですか!? 流石スライム先輩!


「駄主人様……」


 ガシッと俺の頭が忍に鷲掴みにされた。そして俺の尻に足を密着してくる。


「さっさと助けにいけー!!」


 尻を思い切り押し出された。

 俺はつんのめりながら否が応でもスライムに突撃する。


「さらばスライムよ! 『ゲイルスラーッシュ!』」


 恋にまとわりつく全てのスライムが消し飛んだ。


「大丈夫ですかレン……」

「うわーん! マスターに恥ずかしいところをガン見されたのですよ~……」


 恋は忍に抱き付いて泣きじゃくっていた。


「ここはすばらしい森だなぁ。聖地か?」

「バカなこと言ってないで、早く帰りましょう!」


 俺達が再び戻ろうとしたその時だった。


「キャーー!」


 森の奥から女性の悲鳴が聞こえてきた。


「今のは美少女がピンチに陥っている時の悲鳴!」

「なんで美少女ってわかるんですか!?」


 忍のツッコミを無視して声のする方へ向かって走る。

 目の前に現れたのは、まさしく美少女と言っても過言ではないほどの少女が、あの植物のモンスターに触手でがんじがらめにされていた。


「いやあぁぁ~、変なとこ触らないで! あ、ダメ! 服が破けちゃう」


 少女は触手に服を剥ぎ取られそうになりながらも必死に抵抗している。


「今日の俺はついてるなぁ。でも今回はロリか……はは、あのモンスターはロリコンだな」

「駄主人様……」


 また忍に蹴られる前に助けた方がよさそうだ……

 バッと魔法薬をふりかけて魔法力を回復させてから、俺は仕方なく突撃する。


「俺の名誉のために死んでくれ! 『ゲイルスラッシュ!』」


 当然の如く一撃で消え去るモンスター。

 威力が絶大なぶん消費魔法力も半端ないせいで、もはや回復アイテムもカツカツなのだが、いいもの見れたし別にいっか。などと思う俺であった。

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