26話『この街の名物。巨大カジノです!』
『事』という漢字はあまり使わないようにしていましたが
使った方が読みやすい気がするので、これから使って行こうかと思います。
「ゴルァ忍! お前はいつになったら戦闘に慣れるんだ!?」
「い、いや~、そういわれましても……」
俺達は魔王を倒すために北に進んでいる。周囲は広い草原で、その中に土がむき出しの道が伸びていた。
次の街に行くにはこの道を進めばいいとのことだが、俺達はお金を稼ぎ、レベル上げも兼ねて適度にモンスターと戦っていた。
「シノブ、マスターのために頑張って戦わないとダメなのですよ? 私はいざという時まで魔法を禁止されていますから」
「むぅ……レンは魔法で遠距離攻撃ができるからそんなこと言えるんですよ……」
恋にたしなめられるも、やはり忍は煮え切らない。
「よし! ならちゃんと役割を決めようぜ。体力、防御力が一番高い俺がモンスターの敵視を取る。その俺にモンスターが引きつけられたら、背後から忍が攻撃をする。恋は基本的に回復の係な。敵が多い時には忍と一緒に攻撃魔法で敵の数を減らしてくれ」
「了解なのです! ……でも、マスターはどうやって相手の敵視を集めるのですか?」
問題はそこなんだよなぁ……
よし、色々と試してみるか。
「お前達、ちょっと待機しててくれ」
二人にそう指示を出して、俺は近くにいる犬のモンスターに近付いた。
そのモンスターは二匹でノソノソとうろついていて、俺には興味がないように攻撃してくる様子はない。俺はそのモンスターを睨みつける。
「ま、敵の囮なんて役は、あいつらに任せる訳にはいかねぇよな……俺の女は、俺が守る……」
意識を集中させて、モンスターを攻撃すべく、殺気を放つ。
――キュピーン!
俺の手帳から甲高い音が鳴り響いた。
——特技『敵視寄せ』を習得した。習得条件、仲間を思いやり、自ら囮になることで習得する。消費5。一定時間、敵の自分に対する敵視を最大まで引き上げる。
思った通りだ。この世界に敵視というシステムが存在するなら、必ず敵視を操作する技があると思っていた。
するとさっきまでモソモソと動きが鈍かった犬のモンスターが、急に唸り声を上げ始める。完全に俺に対して敵視が上がった証拠だ。
「ウラ忍。俺が囮になるから、背後に回り込んで思い切り攻撃してみろ!」
「は、はい!」
忍が素早くモンスターの背後に回り込む。
二匹のモンスターが同時に飛びかかって来た瞬間に、背後から忍の一撃が炸裂した。体を捻り、力の乗った忍のフックが犬型モンスターの腹を直撃すると、モンスターは光になって消えていく。
やっぱり武闘家の攻撃力は高いな。
そう関心する暇もなく、もう一匹が襲い掛かって来た。俺は左手の手甲を盾代わりにしてモンスターの牙から身を守った。
「マスター援護するのですよ!『フレイム!!』」
そこまでピンチという状況ではないのだが、慌てた恋が魔法をぶっ放してきた。見事モンスターに火球が命中して、その爆風に俺まで巻き込まれる。
「ぎゃあああ~~熱っちぃ~~!!」
モンスターは倒せたが、俺が悶えながら手帳を開いて自分の体力を確認してみる。ほとんどダメージは受けていない。どうやら、味方の攻撃はノーダメージのようだ。
「マスター大丈夫なのですか!? ああっ、腕から血が出ているのですよ!?」
言われて確認してみると、さっきの戦闘で軽く引っ掛かれたような傷があった。
「私、レベルが上がって回復魔法を覚えたのです! 今回復させますね!『ヒール!』」
まだ体力に余裕があると言う暇もなく、恋は魔法を使用する。
「あ、魔法力が付きてもう何も使えなくなっちゃいました……」
「……とりあえず、一個だけ魔法薬使っとけ」
最初に出くわす雑魚モンスター二匹に、一気に魔法力が空になるような戦い方をするこいつらをどうしたもんかと、俺は頭を悩ませていた……
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「おっしゃ~! 次の街に到~着!」
あれからかなり戦闘をしながら俺達の陣形やら連携やら、色々と練習をしていたせいで、街に着く頃には13時を回っていた。
「お腹減りましたね。まずは食事にしませんか?」
「そうだな。情報収集はその後にしよう」
冒険者の街『アイナ』から北に向かった先にある、二番目の街『カキナナ』。この街も基本的にはアイナの街とそう変わらない。だが、一目見た印象を語るなら、かなりでかい街だという事だ。
端から端まで行こうと思うなら、かなり歩かされるように思う。
「お待たせしました。フルーツの盛り合わせです」
おい誰だ! いきなりフルーツを注文した奴は! そういや恋がここはフルーツが盛んだと言っていたなぁ。
まぁいいけど……
「この街ってかなり大きいッスよね? 見て回ろうとしたらかなり時間かかりそうッス」
喜んでフルーツにかぶり付く恋を横目に、俺はウェイトレスの女性に話しかけた。
「ふふふ、大きいように思えるかもしれませんが、この街の中央に大きな建物があるからそう思うだけですよ。その施設を中心に、民家や店が展開しているだけですから」
「へぇ。それってどんな施設なんッスか?」
「この街の名物。巨大カジノです!」
カジノ……だと……? まさかの二番目の街にカジノを設置してくるとは思わなかった……
だけど俺達には時間がない。当然、そこで遊んでだけの余裕もない!
「忍、恋。飯を食ったら、また情報を集めるぞ。この街は広いから、二時間かけて聞き込みをしよう。15時半になったら街の入口に集合な。最初と同じで、忍は外を、恋は屋内と分担する」
「わかりました」
そうして飯を食った俺達は、この街で再び三手に分かれた。
俺は最初の街同様に、武器防具屋、そして道具屋を覗いてアイテムの確認をする。使ってしまった魔法薬を補充して、残りの残金でみんなの武器でも買おうと思う。
まぁ、買うのはみんなが集まってからだ。今は荷物になってしまう。そう思い次はどうしようかと悩んでしまった。
正直、情報収集に二時間かけようと思った訳だが、俺は店の品ぞろえチェックが担当なのであっさりと暇になった。
そんな俺の目に飛び込んで来たのは、『7・7・7』と大きく表示された、例の巨大カジノ。俺はこの看板を見てため息を吐いてしまった。
この世界が女神様の作った世界と言うのなら、二番目の街にカジノを設置したのも女神様という事だ。それはつまり、ここで俺達の足止めをしようという事ではないだろうか?
カジノという甘美な響きに誘われて、ただでさえ時間が無いのにここで遊び、貴重な時間とお金を消費する。そうやって、少しでも魔王討伐という目標から遠ざける目的なのかもしれない。
しかし、だとしたら愚策と言わざるを得ない。ゲーマーである俺が、こんな罠に引っ掛かるとでも思っているのだろうか?
一応言っておくが、俺はカジノなどと言う自分にプラスになるか、マイナスになるか全くわからない運ゲーに時間を使うつもりはない。
確実に得られるアイテムを買い、クリアすれば報酬が得られるダンジョンに向かう。こういった、自分に今できるイベントをこなし、確実に進む事で、ゲームというのは安全かつ安定してクリアする事ができる。
恐らく女神様は、この二番目の街に着いた俺達が、まだ一日目だから余裕があるとカジノで遊ぶ事で、この村で一日目を終えるだろうと画策しているはずだ。実に愚かで、見え透いた考えか……
そうして俺は、吸い込まれるようにカジノの中へと入っていった。




