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24話『初めてのスキルがクソみたいな効果で、マジ笑えねぇです』

「手帳の『情報』と書かれたタブがありますね。ここには皆様の変化が自動で書き込まれます。例えばレベルが上がったり、スキルを覚えた時に書き込まれます」

「自動で書き込まれるんですか? 凄いですね」


 忍が関心してる。確かに自動で表示されるのはありがたい。本当にゲームの世界みたいだなぁ。


「魔法の手帳ですから! 新しく何かが書き込まれた時には音と光で知らせますので、そうなったら一度確認して下さい。ちなみに、モンスターに気付かれたくない場合はマナーモードにもできますので」


 なんだその携帯みたいな機能は!?

 

「次に、『特技』と書かれたタブがありますね。ここにはその名の通り、皆様が習得した必殺技が表示されます」

「あ、私の特技の項目に、『フレイム』って魔法が書き込まれているのですよ!?」


 恋の手帳には、確かにそう書き込まれてある。どうやらすでに魔法を習得しているようだ。


「魔法も技も一色単に表示され、その特技の効果と消費魔法力も確認することができます」


 なるほどね、この手帳、ゲームで言うステータス画面を忠実に再現しているという訳だ。


「次に『スキル』と書かれたタブの説明です。これもその名の通り、習得したスキルが表示されます」

「ちょっと待て。特技とスキルはどう違うんだ?」

「特技とは元々、モンスターを討伐するための戦士系の達人が編み出した必殺技の数々です。スキルはそんな特技のような威力はありませんが、積み重ねて使うことで磨き上げられ、高い効果を発揮する補助です。……まぁ簡単に言えば、『特技』とは威力の高い攻撃技ですが、それ以上強くなりません。それに対して『スキル』はほとんどが補助系ですが、使えば熟練度が上がり、効果がどんどん高くなっていくというものです」


 ほう。すでに完成された匠の技と、それを追いかけるべく生み出された補助の技か。


「手帳の説明は以上です。ああそれと、普通はレベルを上げて特技やスキルを習得するものですが、勇者という職業だけは例外です。ありとあらゆる物から恩恵を受けていると言われる勇者は、条件を満たすだけで技を習得すると言われています」

「条件を満たすと?」

「はい。どんな条件で、どんな技を習得するのかはわかりません。ですが、色々と試してみるのもいいかもしれませんね」


 ふむ。攻略サイトでも見て、全ての技をコンプリートしたいなぁ。ま、もちろん攻略サイトなんて存在しないけど……


「では最後に、ここでは手帳を渡した皆様に、その職業に合った衣装を無料でプレゼントするというサービスも行っています。どうぞ着てみて下さい」


 それは助かる。できるだけお金は使いたくなかったし、雰囲気も出るしな。

 俺達は各店員に従って衣装を着てみることにした。

「とってもお似合いですよ」


 試着してみた衣装だが、中々いい感じではないだろうか?

 ゆったりとした白い長袖のシャツの上から、青く絹のような薄いジャケットを羽織り、首には真っ赤なスカーフ。そして両腕には軽い鉄鋼をはめた。

 村人から、ようやく冒険者になったという気分だ。


「まぁこんなとこかね」


 大きな鏡の前でポーズを取っていると、隣の試着室から忍が出てきた。

 なんとピンク色のチャイナドレスを身にまとっている。


「これ……ちょっと恥ずかしいです……」


 忍は股を隠すヒラヒラが気になるのか、恥じらいながら手で押さえている。

 っていうか、下部の切れ目から素足が見えるのがすでにエロい。ナイスだ! グッジョブ店員!!


「忍、いいじゃないか。よく似合ってるぜ」

「ほ、本当ですか……?」


 少し嬉しそうな表情になると同時に、俺はさらに付け加える。


「とってもエロ可愛いぜ!」

「エロは余計ですよ!!」


 しまった……いらんことを口走った……


「いやぁ大体な、お前がそうやって恥じらうから余計にエロく見えるんだよ。ほら、素っ裸になっても仁王立ちされるとエロくないだろ? 要は堂々としてりゃいいんだよ!」

「……その理論はよくわかりませんが、善処します……」


 すると今度は三番目の試着室がバッと開かれた。どうやら恋の着替えが終わったようだ。


「マスター見て見て! 似合ってますか?」

「おお! これは!!」


 恋は真っ白なミニドレスだった。しかも下の丈が結構短い。その上から緑のマントを羽織り、頭にはサークレットを付けていた。

 こいつら無駄にスタイルいいから、そう生足出されるとドキドキするなぁ。


「すげーエロ可愛いぜ!」

「えへへ~、褒められたのですよ~♪」


 俺が親指を立てると、恋は嬉しそうにクルクル回り出す。


「レン、ちょっと下が短くありませんか? あんまり動くと見えちゃいますよ……?」

「え~? でもマスターになら見られてもいいのです!」


 恋はピョンピョンと浮かれた様子で俺の腕にしがみついて来る。

 うむ、可愛い奴だ。忍も見習ってもらいたい!


「マスターも超カッコいいのですよ♪」

「おう! サンキューな」


 さて、店で騒ぐのも迷惑になるだろうし、そろそろ次の行動に移るとするか。なんたって俺達は、三日以内に魔王を倒さなくてはならないのだから。

「さてキミ達、今から何をしなくてはならないかわかるか?」


 冒険者の館を出てから、俺は二人に問いかけた。


「ん~、レベルを上げるためにモンスターと戦う……のですか?」

「その前に装備を買う方が先じゃないですか?」


 俺は人差し指を左右に揺らしてチッチッチと口を慣らす。


「まずは情報を集める! お前ら情報をなめるなよ。人から情報をうまく聞き出せるか否かで冒険に出る危険度がガラリと変わるからな」

「へぇ。具体的にはどんな情報を聞き出せばいいんですか?」


 とりあえず魔王の位置。それとここ周辺のモンスター情報。あとは洞窟に眠るお宝の情報か……?


「う~ん、取りあえず俺が試しに聞いてみるから、後ろで見ててくれ」


 そう言って俺は、道行く人を眺めて慎重に人選する。

 お? あのポニーテールの子、超カワイイ! あの子に聞いてみよう!


「キミ、ちょっといいかな?」

「え? 私?」


 ポニーテールで童顔の少女はキョトンとしている。


「俺、冒険者になったばかりなんだけど、色々とわからないことが多くて情報を集めているんだ。よかったら話を聞かせてもらえないかな?」

「うん、いいわよ」

「よかった。キミみたいな可愛くて優しい子に出会えるなんて、ほんとラッキーだよ。キラッ」


 出来る限りの爽やかな笑顔を見せると、その少女はポッ……と頬が赤くなり、照れながらソワソワし始める。


「か、可愛いだなんてそんな……それで、何が聞きたいの?」

「そうだな、話が長くなりそうだから、食事でもしながら話さない? もちろん、俺が奢るよ」


 ガシッ!

 いきなり俺の両肩が力強く握られた。


「駄主人様。それは聞き込みですか? それともナンパですか?」


 忍の声が怖い! いつもよりもトーンの低い声が怖い!


「マスター、まさかとは思いますが、私達以外の女の子になびいた訳じゃないですよね……?」


 恐る恐る振り向くと、俺の肩をガッシリと掴んだ二人はかなり怖い顔をしていた。

 特に、普段は無邪気な笑顔を振りまいている恋でさえ、目がわっている。

 この世界で勇者として転生した俺は、どうやら気持ちまでも大きくなったようで、普段できないようなナンパを試みていた。


「ははは……冗談だよ冗談。こうした方が情報を聞きやすいかと思って……」


 そう言って誤魔化そうとした時だった。


 ——キュピーン!


 俺の手帳から甲高い音が鳴り響いた。

 何事かと取り出してみると、『情報』と『スキル』のタブが光っている。

 とりあえずスキルのページを開いてみた。


 ——『ナンパ』。レベル1。消費0。女性を口説いて、アイテムや情報を引き出すことができる。


「おめでとうございます駄主人様。『勇者』としての初めてのスキルがクソみたいな効果で、マジ笑えねぇです」

「し、忍、落ち着いて聞いてくれ。この世界を作ったのは女神様だ。つまりこのスキルを作ったのも女神様ということになる。これは女神様が俺達の仲を険悪にするための罠なんだよ。騙されるな!」


 そう言いながら、次に情報のページを開いてみた。


 ——スキル『ナンパ』を習得した。習得条件:その女性と親密な関係になりたいと願いながら会話をすることで習得する。


 うおおおいあの駄女神ぃ~!! こんなスキル作んなやぁ~!! 絶対面白がって作っただろぉ~!!


「ねぇマスター。マスターは他の女の子と親密になりたいのですか……? あとどれだけ女の子が欲しいと思ってるのですか……? 私、それはちょっと許せないかも……」


 必死に弁解する俺に対して、恋はクスリとも笑わない。無表情のままで淡々と語るのが逆に恐ろしい。

 あれ? 恋ってこんなに怖い子だっけ……? こうなったら一か八か……


 ——俺は、スキル『ナンパ』を使用した。


「聞いてくれ恋! 俺だって本当ならこんな事したくはないんだ……。だけど、俺には絶対に譲れない理由がある! それは魔王に負けないことさ。負けて愛するキミを失うなんて俺には考えられない! だから、どんなことをしてでも情報を得て、有利に進めなくちゃいけないんだ」

「マ、マスター……」


 無表情だった恋が、明らかに困惑しているような表情へと変わっていく。

 俺は恋の肩に手を置いて、耳元でそっと囁いた。


「大好きだよ、恋……」


 ピクンと肩を震わせて――


「ううぅ……私も大好きなのです! マスター信じてます!!」


 ヒシッと俺の腰にしがみついて来た。

 ふぃ~危ない。なんとか危機を乗り越えた。よし! もういっちょ!


 ——俺は、スキル『ナンパ』を使用した。


「ごめんな忍、お前にも不安な思いをさせちゃったな」

「べ、別に不安になってねぇです……。っていうか、私はレンのように言いくるめられませんよ!」

「そんなつもりはねぇ。だけど、これだけは言わせてくれ」


 そして俺は、忍の両手を自分の両手で包み込むようにして握る。


「ちょ! 手、握るの……反則……」


 忍は手を握られるのがやたら弱いのは知っている。だからこそ、忍の両手をぎゅっと握った。

 すでに表情がとろけかけている忍の目を真剣に見つめる。


「どんなことがあっても、俺はお前を裏切ったりしない! ……忍、愛してる」

「あうぅ……」


 パッと手を離すと、忍はヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。

 勇者補正の効いたナンパ、恐ろしいスキルだぜ……


 ――キュピーン!


 再び俺の手帳から甲高い音がなった。


 ――スキル『ナンパ』がレベル2に上がった。

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