表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/62

23話『駄主人様は遊び人で決まりですよ……』

 暖かな優しい風と、草木の匂いがする。耳に聞こえてくるのは木々の騒めき。そんな都会では味わえないような気分の中、俺は目を覚ました。

 身を起こして見渡してみると、視界に広がるのは果てしない草原。後ろを振り返ってみると、ちょっとした林になっている。どうやら俺は、木の根元で寝ていたらしい。

 俺の両隣には、忍と恋が未だ眠っていた。


「おい、起きろよ。無事、異世界に着いたみたいだぞ?」


 俺は二人を揺さぶり起こした。


「う~ん……わぁ。日本じゃ見られないような草原ですね!」


 二人も周りを見渡すようにキョロキョロとする。


「まだ土地開拓が進んでいない、まさにゲームのような世界観だな。なぁ、俺の姿ってどうなってるんだ?」

「元の世界と変わらないですよ。至って平凡な顔をしています。服装は布を使ったシンプルな服ですね」


 いかにもRPGで村人が着ていそうな、半袖の布の服だ。

 っていうか、平凡な顔で悪かったな!


「私達はどうですか?」

「変わらねぇな。恋も女神様の所と同じだし、俺がお前達を見分けるのは髪の色か服装だな」


 俺が忍と確認をしていると、恋が右手の方向を指差した。


「見て見てマスター! 向こうに街っぽいのがあるのです!」


 言われなくともわかるくらいの距離に、囲いに覆われた街があった。


「よっしゃ! とりあえずあの街に行ってから色々と考えようぜ」


 そうして俺達は目の前の街に向かうことにした。

 歩きながら自分の体を調べると、腰に布袋が吊り下げられている。中身を確認してみると、硬貨が入っていた。


「この世界のお金か。全部で……千円あるな」


 この世界の単位は知らないが、100と刻まれた硬貨が十枚入っていた。なんだか日本の硬貨と似ている。


「マスター! 向こうに動物が見えのですよ~」


 遠く離れた所にノソノソと動く動物が見える。遠目から見て中型の犬のような生き物。


「あれがモンスターだな。街の外を徘徊しているから、これから先、嫌でも戦うことになる。とりあえず今は街に入ろう」


 子供のようにはしゃぐ恋と、かなり周りを警戒している忍を引きつれて街に入った。

 そこは、街と言うには少し小さな印象だった。レンガで作られた家など、建物がしっかりとしているから街という雰囲気を感じさせる。

 車などは全く無い。目に映るのは、外で遊ぶ子供、馬車を引く商人、そして 冒険者と思われる若者達。

 俺達が田舎者のように、その雰囲気に気を取られていると、街の入口近くにいた青年が声をかけて来た。


「ようこそ、ここは冒険者の街『アイナ』です。あなた達は冒険者ですか?」

「あ、ああ。とりあえずこの街で、準備をしようと思って……」

「それなら、中央の建物、『冒険者の館』に行くといいでしょう。そこで自分の職業を調べることができて、手帳も貰うことができます。その後でどんな装備を買うか決めればいいでしょう」

「そうか、助かったよ、サンキューな」


 青年にお礼を言って、中央の建物に向かって歩みを進める。


「ここが作られた世界だって言うなら、今の人はNPCか? こっちの会話にちゃんと受け答えするし、普通の人間にしか見えないな」

「NPC? ……ノートパソコンなのですか?」

「ちげぇ! ノンプレイヤーキャラクターのことだよ。つまり決められた動作しかしない、人形みたいなものだ。そう言った意味では異世界転生というよりVRMMOに近いかもしれないな」

「ブイヤベース、エイエイオーなのですか?」


 段々と説明がめんどくさくなってきた……


「そういえばご主人様、この世界はどこかにある世界か、作られた世界かで女神様にしつこいくらいに食らいついてましたね?」

「どちらかによって難易度がまるで違うからな。元々どこかに存在する世界に飛ばされたというなら、何が起こるかまるでわからない。例えば魔王の気分次第で、いきなりこの街に襲い掛かってくる可能性だってあるわけだ。だがここが作られた世界だというならそう言った危険はほぼないと言っていい。女神様は平等に勝負すると言っていたから、初見殺しでいきなり即死するような危険な敵も少ないはずだ。まぁ、よほどの無茶をしない限りは魔王の元まではたどり着けるはずさ」


 と言っても、油断はできない。俺の持っているゲーム知識をフルに活用して進めさせてもらう。

 そして俺達は冒険者の館と呼ばれる建物に入っていった。


「すいません。魔王をぶっ倒すために冒険者見習いを始めた者ですけど~」

「いらっしゃいませ。でしたら手帳を発行しますので、こちらへどうぞ」


 七三分けの綺麗なお姉さんに案内されて、俺達は変な機械の前に来た。

 ……なんかお店に置いてあるレジみたいな機械だ。


「ここに手を置いて下さい。あなた方の情報を読み取って、自動的に手帳を作ることができます」

「へ~。面白そうなのです! じゃあ私からやりますね」


 恋が待ちきれない様子で手を置くと、ゴウンゴウンと機械が動き出した。

 チーン! と、まさにレジからお金が飛び出すかの如く、中から手の平サイズの手帳が飛び出してきた。


「最初のページをご覧ください。情報が全て表示されていますよ」


 恋の手帳を、忍と一緒になって覗き込む。


名前 :レン

職業 :賢者

レベル:2

体力 :15

魔法力:20

攻撃力:8

魔攻力:17

防御力:8

魔防力:15

速さ :12


「私、賢者っていう職業らしいのです」

「賢者は魔法のエキスパートですよ。攻撃魔法、回復魔法の両方が使える優秀な職業です」


 お姉さんの説明に、恋は目を輝かせている。

 ……正直、恋ってこの中で一番頭を使わない能天気タイプだと思うんだが、それは口に出さないでおこう。


「次は私がやってみますね」


 忍が手を置き、機械を作動させた。

 そしてチーンと手帳が飛び出してくる。


名前 :シノブ

職業 :武闘家

レベル:3

体力 :25

魔法力:10

攻撃力:30

魔攻力:10

防御力:12

魔防力:12

速さ :24


「うはっ! 武闘家……お前、俺のこといっつも殴るのは武闘家だったからなのね。プ~クスクス似合いすぎ~」

「駄主人様が血迷った行動さえしなければ殴りませんよ! とりあえずチェンジで!」


 手帳を突き返そうとする忍だが、お姉さんも困った表情で受け取らない。


「これは生まれた時からのベストな職業なので、変えることはできません。ですが、武闘家も優秀な職業ですよ? 防御力は低いですが、速さがずば抜けていて回避能力に長けています。そして射程は短いですが、その攻撃力はトップクラスです」

「違うんです! 性能の問題じゃないんです! 私が武闘家だとこの駄主人がウザいんです~!」


 残念だったね! みたいなあわれんだ表情のまま、忍の周りをクルクル回りながらあおる俺。

 そんな様子に、指を指しながらケラケラ笑う恋。

 そんな俺達に、忍はお姉さんに泣きついていた。


「よし! それじゃあいよいよ俺の番だな!」


 俺も同じように指定された場所に手を置いた。


「駄主人様は遊び人で決まりですよ……」

「引きこもりかもしれないのですよ? あ、ツッコミかも!?」

「いや、もうそれ職業じゃねぇから!」


 チーンと手帳が飛び出して来たのを、俺は素早くキャッチする。


名前 :コウ

職業 :勇者

レベル:4

体力 :30

魔法力:18

攻撃力:25

魔攻力:15

防御力:17

魔防力:17

速さ :19


「ゆ~~~しゃ~~~!! 俺ゆ~しゃ~!!」

「流石マスターなのですよ~♪」


 恋は楽しそうにしているが、忍は不貞腐れていた。

 だがそんな俺に、周りの店員は驚きの眼差しを向けている。


「勇者!? あの伝説の職業、勇者がついに現れたのか!?」

「魔王を倒すのに一番近いとされている勇者ですか!?」


 周りの尊敬の眼差しが心地よい! ああ、俺、もう日本に帰らずにこの世界でちやほやされて生きていたい……

 だけど、俺はハッと気づいたことがあった。

 ……あれ? これってもしかしてチュートリアルじゃね……?

 なんか初めてガチャ引いたら激レア引いたみたいな気分になってたけど、もしかしてこれってチュートリアルの一環で、勇者になるのは最初から決まってたんじゃね?

 だとしたら喜んで損した~……

 俺はガックリと両手を地面に付けてうな垂れた。


「ええっと……では続いて手帳の説明を始めますよ?」


 お姉さんが苦笑いを浮かべながらも、仕事をこなそうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ