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22話『死んだらそこで終わりよ? もう戻って来れないわ』

「うおっしゃああああああああ!!」

「ひゃあ~!?」


 俺の唐突な叫びに、女神様を含めた三人が驚き後ずさっている。


「マジかよ! え? マジで異世界転生!? うおおおおおすげえぇぇーー!!」

「あ、あの、駄主人様? どうしたんですか……?」

「どうしたもこうしたもあるかよ! アニメ好きならこんな展開で歓喜しない奴いないだろ。マジですげぇ体験だって!!」


 喜びをあらわにする俺に、最初は驚いていた女神様もニコニコと微笑んでいた。


「喜んでもらえてよかったわ♪」

「あの、その異世界って魔法とかあるんスか?」

「あるわよ~」

「じゃあ、レベルとかは?」

「それもあるわよ~」


 うおーやり込みてぇ! ゲーマーの血が騒ぐぜぇ!


「でもね、喜んでいるところ悪いんだけど、クリアまでに制限時間があるのよ」


 制限時間? ああ、そうか。無制限だったらレベルカンストさせて、最強装備整えるくらいじっくりとやり込んじゃうからなぁ……


「じゃあ制限時間って、どれくらいの期間なんスか?」

「向こうについてから、三日以内よ♪」


 ……は? 今のは俺の聞き間違いか?


「……あの、もう一回言ってください」

「三日以内に魔王を倒すことが、勝利条件ね♪」


 タラタラと俺の額から冷や汗が流れ始めた。


「いやいやいや、三日でクリアしろとか無理ゲーでしょ!! 何? 30秒で世界を救うRPGならぬ、三日で世界を救えってか!? いくらなんでもキツ過ぎやしませんかね!?」

「大丈夫よ~。ちゃんとバランスを考えた上で、お互いがフェアに戦える丁度いい時間なんだから」

「本気ッスか!? 大体ゲームだとスライム5匹と戦ったら宿屋に泊まって一日終わるッスからね!? そんな調子だとスライム30匹くらいで三日過ぎますわ!」

「そこら辺はほら、あなたの腕次第よ」


 俺のリアクションが面白いのか、女神様はケラケラと笑いながら決して妥協しようとしない……


「三日だと観光もやり込みもできねぇな……」

「それじゃあ、そろそろ向こうに飛ばすわよ~」

「ちょっと待てぇ~~!!  どんだけせっかちなんだよ! 質問くらいさせてくれ!」


 マイペース過ぎる女神様に、もはや敬語さえ忘れてツッコミながらも引き留める。


「あら? 何か質問でもあるの?」

「あるに決まってるじゃないッスか……まず、勝利条件と敗北条件を明確にしましょう。俺達の勝利条件は三日以内に魔王を倒すことッスよね? ちなみに、三日って具体的にちゃんと知りたいんですけど」

「そうねぇ。あなた達を向こうに飛ばしたら、朝の八時くらいだと思うわ。その日を一日目と考えて、三日目の夜、0時を過ぎて日付が変わるまでがタイムリミットよ」


 マジかよ! 正確に言えば約54時間しかないってことじゃねぇか! ホントにクリアさせる気あるのか?


「そんじゃあ敗北条件は、時間内に魔王を倒せなかった場合……か」

「もしくはあなた達が全滅したら、その時点で負けね」


 まぁそれもそうか……


「ところで向こうで死んだらどうなるんスか? 死んだ時点で脱落扱いで元の日本に戻るとか?」

「死んだらそこで終わりよ? もう戻って来れないわ」


 ……………え?


「当然でしょ? 向こうの体で死んじゃったらそれでお終い。人生終了よ?」

「ちょ、ちょっと待って下さい!!」


 俺よりも先に反応したのは恋だった。剣幕になって女神様に詰め寄っている。


「話が違います!! 負けた時に失うのは私の人格だけで、マスター達には危害を加えない約束のはずです!」

「それはあくまで『あなた達が負けた時のペナルティ』の話であって、それ以外は責任持てないわよ。それに、死んだら終わりっていう方が緊張感があって勝負っぽいでしょ?」

「ふざけないでください!! 魔王に負けたら全員死亡で、ペナルティどころの話じゃないのです! 大体——」


 恋が尚も食い下がろうとするのところを、俺は右手で遮り勢いを止めた。


「落ち着けって恋。まぁ確かに、これくらいの方がゲーマーとしては燃えるってもんだ」

「だけどマスター……」

「その代わりに確認するぜ女神様、このゲーム、本当にお互いがフェアになるように考えてるんだよな? だとしたらここで誓ってもらうぜ。絶対に神が有利なように仕組んでないってことをな」

「誓うわ。決して私達、神が有利になるようなことを考えていないわ」


 さっきからニコニコと考えが読めない女神様だが、この誓いを口にした瞬間だけは真面目な表情だったといえる。


「うっし! なら信じるぜ。この体を使って向こうの世界を体験して、どう考えても俺達が不利だと感じた時は、即刻ゲームを中止してもらうからな」

「それで構わないわ」


 俺と女神様の間で話が進められていくが、恋はそれでも納得がいかないようだ。


「マスターいいのですか!? 今の口約束だって、何か逃げ道を用意しているかもしれないのですよ?」

「ん~、けど俺はさ、結構女神様に感謝してんだ。俺がこうして恋や忍と過ごせるのは、女神様のおかげだからな。お前だって言ってただろ、三つ目の願いを叶える時にお世話になったって。ちっとは信用してもいいんじゃねぇの?」

「それは……私だって女神様には感謝してます。けど、マスターが……」


 恋は不安そうに上目遣いで俺を見る。

 そんな彼女の頭を俺は優しく撫でてやった。


「わかってる。お前は俺や忍のことを心配してくれたんだろ? ありがとな」

「ふみゅ~……」


 ようやく恋が大人しくなったところで、俺は話しを続けることにした。


「それじゃあさっきの話の続きだが、例えば魔王との戦闘中、忍が愛する俺を庇って死んだとする」

「ちょ!? 何言ってやがるんですか!?」

「その状況で魔王を倒したら、忍はどうなる?」


 さっきから俺と女神様のやり取りにうろたえるばかりで、話に加わることができない忍を例に出してみたが、結局はオロオロとしている。


「勝利条件が満たされれば、死んだ仲間は復活させて元の世界に帰してあげるわ」


 ほう。なら結局、最後の一人になっても諦める訳にはいかねぇな。


「さて、他にも質問は山ほどあるわけだが……」

「向こうのことなら私に質問するよりも、向こうで直接体験した方がいいと思うわよ?」


 確かにそれもそうだ。

 しかし最後に一つだけ、さりげなくこちらが有利になるような情報を引き出しておきたい。


「じゃあこれで最後の質問だ。今から俺達が送られる異世界ってのは、本当にどこかに存在する世界か? それとも、このゲームのために用意された、作られた世界か?」

「……そういうことは考えないでプレイした方が楽しめるんじゃないかしら?」


 流石にそれを知られると俺達が有利になるということを察したのか、女神様は答えようとしない。実際にその世界がリアルなものか、作られたものかで動き方が変わってくるのだ。


「そこをなんとか教えてくださいよ。女神様は優しくて気前がいいと恋から聞いてますよ? この通りだから教えて下さい、美人でスタイル抜群の大女神様!!」

「も~口がうまいわねぇ。そんな見え見えのお世辞を言っても乗らないんだから」


 俺が両手を合わせてお願いするが、女神様も思うようにしゃべってくれない。

 だが顔はかなり嬉しそうなので、もうひと押しか……?


「いやいや、お世辞じゃないっスよ! 俺、アニメ好きで三次元なんてあまり興味ないッスけど、女神様はほんとに美人だなって思いますもん。俺が今まで見て来た女性で一番綺麗ッスよ」


 忍と恋が俺を両サイドから怖い表情でプレッシャーをかけてくる……

 情報を引き出そうとしているんだから、空気読んでくれ……


「あはは、あなたは本当に面白い人ね。わかったわ、教えてあげる。今から行く異世界はね、このゲームのためだけに用意した、私が作った世界よ」

「マジっすか!? そんなに簡単に世界を作っちゃうなんて、女神様マジぱねぇっス!! この二人も女神様を見習ってもらいたいもんッスよ!」


 痛い痛い! 恋が俺の腕をつねってくる! あと忍の顔が本気で怖くて視線だけで殺されそうなんですけど……


「駄主人様、ただナンパするだけならそろそろ行きませんか?」

「マスター、私もお話しばかりで飽きて来ちゃったのですよ……」


 全くこいつらは……。できるだけこっちが有利になるように俺が頑張ってるってのに……


「んじゃ、俺の駄メイドがうるさいんで、そろそろ行きますかね」

「そう? それじゃあこっちの体はそのままにして、魂だけ向こうに転生させるわね」


 そう言って、女神様は小さく俺達に向かって手を振った。


「あなた達が、良き生涯を送れますように」


 そう言われてから、俺の意識はどんどんと沈んでいった……

今回のネタ。

勇者30

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