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20話『起きて下さい。大変なことになりました!』

「では、今からキミに名前を付けたいと思う」

「おお~!」


 忍の体を使っているが、中身は主人格の方である彼女がパチパチと手を叩く。


「どんな名前にしようかな……やはり二重人格のアニメキャラから名前を取りたいよな! 不死身のウーを従者に旅を続ける三つ目の少女から拝借して『パイ』なんてどうだろうか」

「パイ! パイパイ! 可愛い名前なのです」

「それとも、ベクターを使って敵を殺しまくるディクロニウスから拝借して『にゅう』なんていいかもな」

「にゅう? なんだか猫の鳴き声みたいなのですよ。あはは♪」


 うん。すごく喜んでくれて嬉しいぞ。だけど俺が言うこと全部喜ぶから、どれがいいのか全然わからん! しかもなんだろうこの気持ち……普段ならツッコミが飛んでくるところなのに、それが無いからどこまでボケていいのかわからん。これがツッコミ不在の恐怖というやつなのだろうか?


「あ! ご主人様、サブ人格……じゃなくてシノブが言いたいことあるみたいなので、ちょっと交代しますね」


 そう言うと、その表情に変化が表れる。

 あどけない表情の彼女とは違い、少し落ち着いた感じの、いつもの忍といった表情だ。


「ご主人様。あの子に任せていたらとんでもないことになりそうなので私が変わりに判断しますが、『パイ』だの『にゅう』だの、どうして女性の胸のような名前を付けようとするんですか? セクハラですよ? それともただの変態ですか?」

「どっちでもねぇよ! ってかお前、作者に謝れよ! 普通にアニメキャラからもじろうとしただけだろうが!」


 あ、でもこのやり取り、いつもの俺達だって感じがしてちょっと嬉しい……


「私、思ったんですけど……別にアニメキャラから取るなとは言いませんが、ご主人様がちゃんと考えた名前を付けてあげた方がいいと思うんですよ」

「俺が名付ける……だと……?」

「はい。その方が絶対にいいと思います。……ドキュンネームじゃなければ」


 俺が考えた、俺の想いが込められた名前を付けろと言うのか……さりげなくドキュンネーム警戒してる辺りバカにされている気もするけど、とりあえず俺の感性で決めていいのか!?

 え~と、キーワードは、二重人格、双子、忍、あとは花かな? これらに合うような名前を考えるのか……難しいな。子供の名前を決める親ってこんな気持ちなのか?

 そして俺は悩みながら、一つの名前を考えた。


「よし! 思いついたぞ。……だけど、なんだか言うの恥ずかしいな……」

「何を今更、自分にだって恥じらいはある、みたいな素振りみせてるんですか? いいから早く教えて下さい」


 こいつ、後でアニメネタ振りまくって困らせてやる……


「名前は、『れん』にしようと思う」

「へぇ、意外とまともな名前を考えましたね。理由を聞かせてください」

「まぁ、一番の理由は忍とは姉妹みたいな意味で考えてみた。ほら、漢字で書くと『忍』と『恋』。少し似てるだろ? それに、なんだか恋に恋するお年頃、みたいな雰囲気だったしな。あとはシロツメクサの花言葉にそれに近いようなのがあった気がする」


 おぉー! と素直に驚いている忍にドヤ顔で答える。

 俺だってやればできる子なんだぞ!


「私の中でレンも喜んでいます。では彼女と変わりますね」

「あ、ちょっと待て忍」


 変わろうとする忍を俺は呼び止める。


「一つ決め事を作ろう。俺の前で人格を変える時は、こう指を鳴らしてから変えてくれ。それだと判りやすいだろ?」


 俺はパチンと指を鳴らして見せる。指パッチンというやつだ。


「ええ!? どうやるんですか?」

「こうやるんだよ、手ぇ貸してみ?」


 俺は忍の手を取って形を教えてやる。


「あ……」

「で、こう擦ると、ここのプニプニの部分に指が当たって、って聞いてんのか?」


 俺に手を握られた忍は顔を赤くしてモジモジとしていた。

 指を慣らそうとしても全く力が入っていない。


「お前手ぇ握られただけでどんだけ照れてんだよ!」

「う、うるせぇです……大体あんなこと言われた後なのに……」

「あんなこと?」

「さっき言ってたセリフです。その……すごく嬉しかったですよ。それと、朝はぶん殴ってすいませんでした……」


 さっきのセリフ? ああ、俺の気持ちは一生変わらないって言った、あの辺のくだりか。それにしても忍がこんなに素直になるなんて珍しいな。


「あ、お前もしかして恋か!? もうすでに変わって、忍の真似してんだろ? 騙されねぇぞ」

「ううぅ! 駄主人のバカ! もう知らねぇです!!」


 パチンと力強く指を鳴らして、忍が奥に引っ込んでしまう。この時に気が付いた。恋に変わると瞳の色がほのかに赤くなる。


「あーあ、ご主人様のせいでシノブ怒っちゃったのですよ?」

「はは、まぁ俺と忍はなんだかんだでうまくやってるからな、いつものことだ。それより恋、この際だから呼び方も変えようぜ」

「呼び方を?」

「ああ、今からお前は俺のことを『マスター』と呼ぶんだ! そうした方が、区別もつきやすいからな。それに、そういう呼ばれ方にも憧れてたんだ」


 すると恋は目をキラキラさせながら、はしゃぎ出した。


「マスター! かっこいいのです! マスターマスター!! ねぇマスター、私にも指パッチン教えて下さい」


 ゴロゴロと小動物のようにすり寄ってくる恋の手を取り、丁寧に教えてやる。

 なんと言うか複雑な気分だ。あの割と落ち着いている忍の体で、こんなに無邪気で眩しいくらいの笑顔を見せつけられるとこっちまで嬉しくなってしまう。

 というか、惚れた女にこうも甘えられて嬉しくないはずがない。

 ああ~癒される~。


「うっし! 今日は庭の手入れをやる予定だったが、恋の歓迎会に変更だ!」


 そうして俺は、この休日を恋のために使い、満喫した。

 町を案内して、買い物をして、遊んで……

 夜には忍が作った気合の入った料理を、みんなで食べた。忍の作った物を同じ体である恋が食べるというのもおかしな話ではあるが、楽しい時間を過ごすことができた。

 とても幸せな時間だった。


――そう、この時までは……。後から気付いたことだが、この後に俺は失態を犯すことになる。そして、それに気づいた時にはもう、運命は動き出していた。


 俺は料理を食べ終わった後に食器を洗っていた。すると隣に忍が並んだ。


「ご主人様、私も手伝いますよ」

「忍か? 恋はどうした?」

「今日一日はしゃいだせいか、今は静かですね。中でもう寝てるんじゃないでしょうか」


 そうしてしばらく、俺は皿を洗って忍はそれを拭いていた。


「なぁ忍、大丈夫か?」

「え?」

「この展開で一番辛いのはお前だろ?」

「……」

「当然だよな。いきなり自分の中にもう一つの人格ができて、体を共有することになって、さらにはお前は私のサブ人格だ! なんて言われたんだからな」


 忍が段々と影を落としていく。そして消えそうな声で答えた。


「そうですね。正直ショックです……この体は本当はレンが使うものであり、いらない子は私の方なんです。仮に、どちらかが消えなくてはならないとしたら、きっとそれは私の方なんです」


 食器を洗い終わった俺は手を拭き、そして忍を自分に抱き寄せた。


「俺はどんなことがあっても、お前の味方だからな」

「ご主人……様……」

「一人で背負うんじゃねぇぞ! 辛い時は俺に言え。前に言ったろ? お前の望みは俺が全部叶えてやる! お前は俺の女なんだからな!」

「全く、たまにカッコよく決めてくれますね……でも、ありがとうございます。すごく、嬉しいです」


 忍が俺の肩に頬をすり寄せて甘えてくる。

 うむ、可愛い奴だ。っていうか、ようやくデレてくれるようになった。ここまでくるのにすごく長かった気がする。


 そして、次の日を迎えた。


「ご主人様、忍です。起きて下さい。大変なことになりました!」

「どうした? 入っていいぞ」


 目は覚めていた。だが、起きるのには早いかと思い、二度寝でもしようかと思った矢先のことだった。

 俺が認めたことで忍が部屋に入ってくる。


「どうした? 大変なことってなんだ?」

「それは……私から話すよりも、レンから聞いた方が早いでしょう」


 そうして忍はパチンと指を慣らす。恋と交代する合図だ。


「恋か? 一体何があった?」


 恋は昨日の無邪気さなんて嘘のように、静かに俺の前に座り込んだ。

 そして――


「結論から言いますと、私の独断で……神様に喧嘩を売りました」


 その言葉の重大さに、俺は一瞬反応できなかった。

今回のネタ。

3×3 EYES

エルフェンリート

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