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全くデレない少女との同棲生活!  作者:
現実世界編
17/62

17話『自分の幸せを掴み取るための、賭けなのです!!』

「三十五度六分……」


 おかしい。熱が上がるどころか下がっている。これはどういうことなんだ!?

 忍に目を移すと、相変わらず青白い顔で苦しそうに呼吸を繰り返していた。


「忍、病院に行こう。ちゃんと診てもらおうぜ」

「ご主人様……」


 俺の声に忍が反応する。だが、次の言葉は俺の予想を覆すものだった。


「私を……探して下さい……」

「え……?」


 どういう意味なのかわからずに、聞き返してしまう。


「私のこれは……病院じゃ治りません……多分、もう時間がないんです」

「時間がないって、どういう意味だよ!? 一体何が起きてるんだよ!?」

「多分、これが私の運命なんです……だから、お願いします……私を見つけてください……」


 記憶を無くす以前の忍を探してくれという意味なのだろうか?

 そんなことよりも、病院に行った方がいいのでは……? いや、しかし……

 俺は迷いに迷って……


「わかった。俺に任せとけ!! 前に言ったろ? お前の願いは俺が絶対に叶えてやる! だから安心して寝ていろ!」


 忍は軽く笑うと、目を閉じて寝息を立て始めた。

 それを確認した俺は携帯を握りしめて、家を飛び出した!

 そして携帯から忍の写メを表示した状態で、道行く人に手当たり次第に問いかける。


「すいません! この子、見た事ありませんか? どんな些細な情報でもいいんです!」


 だが、決まって帰ってくるのは『わからない』『知らない』という言葉だけ……

 今までもそうだった。前から何度か聞き込みを行っているが、忍の姿を知っている人なんか誰もいない。まるで、ある日突然現れたかのように……


 俺は聞き込みを行いながら交番へ向かっていた。そこで確認したい事があったのだ。


「くそっ! これじゃあ『うぐぅ』が口癖のタイヤキ少女を探してる主人公の気分だぜ……」


 焦る気持ちでぼやきながらも、足早に交番へ入る。


「あの、お巡りさん。ちょっといいッスか?」

「ん? どうかしたのかね?」


 交番で待機中であろう年配の警官が、俺の前まで歩み寄ってきた。


「最近、この辺で行方不明とか、捜索願を出された人っているッスか?」

「いや、そんな話は聞いたこともないな。いたって平和な毎日だ。どうかしたのかね?」

「いやぁ、家出をしたっていう男の子がいましてね。連れて来たんですよ」


 もちろんこれは、警官から情報をもらうための嘘だ。


「どこにもいないじゃないか?」

「あれ!? さっきまで後ろにいたのに……。逃げられたみたいッス。俺、探してくるんで見つけたらまた来ます」


 そう誤魔化して、交番を後にする。

 やはりそうだ。この辺りで記憶を無くして、さまよっている少女なんて存在しない。

 だとしたら忍はなんなのか……?

 もっと遠くからさまよってきたという可能性も考えられるが……


 だが、この時の俺は、ある突拍子もない考えを抱いていた。

 それは、忍が人間ではないという仮説。

 いや、前々から思っていたことだった。だが、それを信じるにはあまりにも非現実的で、すんなりと認めることなんてできなかった。


 思い出せ! 忍のこと全部!

 初めて忍と出会った日、家には鍵を掛けていた。にも関わらず、部屋に戻ると忍は入り込んでいた。それはまるで、幽霊のように入り込んだか、部屋にいた虫が突然人間になったかのようじゃないか……?

 一瞬、虫が人間に変わるという考えにゾクリと寒気が走る。

 いや、正体がなんであろうと関係ねぇ! 俺は、今の忍が好きなんだ! 

 もっと思い出せ! なんでもいいから!


 俺は賭けに出る。それは、忍は人間ではないと割り切って行動すること!

 あいつが自分を見つけてくれと言ったのは、そういう意味だったんじゃないか?

 忍の、人間になる前の正体を見つけてくれ、と言う意味……

 俺は、しばらくの間、石段に座り込んで思考を張り巡らせた。


* * *


「では願いですが、すみません! 最初の一つ目から決め直させてほしいのです!!」

「え? えぇ、いいわよ」


 私は賭けに出ます。これが私の望む未来!


「では一つ目の願いですが、人間の体と言葉などの知識を私に下さい!」

「……それはできないわ。その二つの願いを叶えるには、二つの奇跡が必要よ」

「なら、一つの奇跡で許容できるだけの、マイナスの条件を付けます!!」


 女神様は目を見開いて、言葉を失っています。

 私がこんなことを言い出すなんて思わなかったのでしょう。


「許容してもらうための、その条件は……あの人が私を心に思い浮かべることです! 私に体と知識を与えるのはその時からでいい」

「ちょ、ちょっと待って、それってつまり、彼があなたのことを思い出さなかった場合、あなたに人の体は与えられずに、このチャンスが全て無かったことになるのよ!?」

「構わないのです! ……私は女神様の話を聞いて、自分も奇跡を起こしてみたいと思いました。だからこれは、自分の幸せを掴み取るための、賭けなのです!! さぁ、この願いは許容できますか!?」


 女神様は開いた口が塞がらない様子でしたが、私が本気だということを理解すると、コクンと頷いたのです。


「許容は……できるわ。では確認するわよ。一つ目の願いは、『彼があなたのことを思い出したその時に、人間の体と知識を与える』もちろん、彼が思い出す前に本体の寿命が尽きた場合はゲームオーバー。これでいいのね?」

「はい!」


 私も同じように、力強く頷きました。


「じゃあ、二つ目の願いを聞こうかしら」

「はい、二つ目の願いは――」


* * *


 思い出せ! 忍が初めて俺の部屋にいた、あの日のことを思い出せ!

 あの日は……そう! 家に帰った時に両親からの贈り物で、室内用の花が送られてきたんだ。それで部屋に入ったら忍がいた。

 忍はあの時、自分は裸でこの部屋にいたから俺の服を勝手に借りたと言っていた。やっぱり、何かの力が働いて、忍は人間になったんだ。

 だとしたら、何が人間になった?

 俺は、両親が送ってきた花と同時に忍が部屋にいたことから、あの室内用の花が正体だと思ったことがあった。だけど、忍に違うと言われたんだよな……

 でも、あの時のあいつはどこかぼんやりとして、どこか普通じゃない感じだったような気がする。


 ……くそっ! わかんねぇ! もっと、何かヒントはないのか!?

 忍を見つける手がかり、情報、なんでもいい、思い出せ!!


 家を飛び出してから、もう一時間以上はたった。一度家に帰って忍の様子を見に行った方がいいのか!? けどどの道、忍の正体は探さないと……

 ご主人様。と、何食わぬ顔で呼んでくる忍の顔が思い浮かぶ。

 なんとかしてやりてぇ。してやりてぇけど……


 いや、待て! 忍はなんで俺のことを『ご主人様』と呼ぶんだ?

 そう言えば忍は、記憶はないが、俺がご主人様だった気がすると言っていた……ってことは、俺はあいつに主人と認められるようなことをしたってことか!?

 俺は一体何をした? いや、何かを、助けた……とか?

 だけど、ここ最近、何かを助けたような記憶はない。とすれば、もっと昔かもしれない。

 成人した頃? 高校生の頃? 中学生の頃? 小学生の頃? 


 座り込んで考える俺だが、ふと目の前を子供達が通り過ぎた。

 小学校低学年くらいだろう。二人の男女が楽しそうな声を上げながら、俺の目の前を駆けていく。

 その子供を見た瞬間、俺の記憶が掘り起こされた。

 昔、いっちゃんと外で元気よく遊んでいた頃だ。いっちゃんと何かを探して、そして何かを助けようと、その手に抱えていた気がする。


 あれはなんだった……?

 生き物……?

 いや違う……あれは……確か……


 四つ葉の……クローバー……?

今回のネタ。

Kanon

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