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全くデレない少女との同棲生活!  作者:
現実世界編
10/62

10話 『大変ですご主人様! フラれてしまいました……』

「私、ご主人様に彼女を作らせることを今後の目標にしたいと思います」


 仕事から戻った夕食前のことだった。

 ……この子なに言ってんの? 唐突に俺の母親ポジション?


「忍、キミにはまだ言っていなかったな。俺にはすでに彼女がいる」

「……え?」

「さらに言えば、嫁もいる」

「……は?」

「もう今では五十人くらいになったかな。アニメの中に二十人ほど。マンガの中にも二十人ほど。あとはゲームに二十人。まぁ、マンガやゲームからアニメ化して重複しているのを除けば、五十人くらいだ」

「……」


 忍が心底悲しそうな目で俺を見ている。

 正直、ツッコミを放棄して無言で見つめられるのが一番辛い……


「結局はそれですよ。駄主人様はあまりにもリアルと向き合っていないんです」

「いや俺なんてまだマシだろ!? 働いたら負けだと思っているニートが、『デュフフ。この子可愛いなぁ。ペロペロしたいお。フヒ♪』とか言ってるほうがヤバいだろ……」

「駄主人様も似たようなもんじゃないですか……」

「似てねぇよ! 俺働いてるから! ちゃんと自分で使う分の金稼いでるから!!」


さっきから忍が冷ややかなジト目で俺を見ながら、駄主人様を連発してくる。


「ふぅん。私の目には同じに見えますけど……でもやっぱり、彼女ができれば駄主人様もまともになると思うんですよ。少なくとも空気を読めるくらいにはなると思います」


 え? 俺ってKYなの……?

 忍をちょっと弄って遊んでいる程度のつもりなんだけど……


「ご主人様はガールフレンドっていないんですか? いや、そもそも友達っているんですか?」

「おおおお前バカにすんなよ! ととと友達くらいいるわ!」

「ものすごく動揺してるじゃないですか……。でも、休日はいつもアニメ見たり、私と過ごしてばっかりですよね?」


 う~む、何と言って言い訳……じゃなく説明したらいいものか。


「学生の頃からの友達はほとんどが上京したり、一人暮らしを始めて会う機会が減ったんだよ。俺はこの実家から近い工場に勤めることになったし、親は単身赴任で実質一人暮らしみたいなもんだからな」


 忍はすでに、身近な人物から辿っていこうという思惑が潰れたことでため息を漏らしている。


「いや、そういえば一人だけ女友達がいたなぁ。ここ最近は会ってないけど……」


 ――ピンポーン。ピンポーン!

 そう言った時に、チャイムが鳴った。

 こんな時間に誰だろう?


「あ、私が出ますね」


 忍がすばやく玄関に向かって行くのを横目に、俺は忍に言われたことを考える。

 彼女か……正直、三次元に俺が納得のいく女性がいるのだろうか?

 そんな考えが頭でグルグル回っていると――


「えええぇぇぇ~~~……」


 玄関から、見てはいけないものを見たかのような声が響いてきた。

 その声に、訪問者を忍に任せたことが失敗だということに今更ながら気付いたのだった。なにせ誰が訪問してくるかわからないのだ。これで俺の知り合いだった日には……

 嫌な予感を抱えながら玄関を覗くと、案の定、そこには俺の見知った女性が忍と対峙していた。


 茶髪のショートヘアで、九月の涼しくなりつつある今の時期でも、半袖のTシャツにホットパンツと、健康的な格好だ。

 手には、恐らく料理のおすそ分けであろう鍋を握っており、その表情はかなり引きつっていた。顔を覗かせた俺と目が合うと、ワナワナと震え出す。


「コウちゃん……この子、誰?」

「あ~、まぁなんだ? 親戚のおばさんの妹の孫の友達の――」

「ここでメイドっぽい仕事をさせられている忍といいます」


 うおおおおい! さっき人に空気読めないとか言ってたお前が空気読まんのかい! ここはどう考えても今日一日だけ預かることになったっていう、ありきたりだけど無難な対応で誤魔化すところだろう!? しかもその言い方、完全に奴隷じゃねぇか!


「あなたはどちら様ですか? ご主人様の知り合いですか?」

「ご、ご主人様……!?」


 このバカ! 人前ではご主人様って呼び方は禁止って言ったのに……


「ねぇコウちゃん、ボク、今から未成年者略取、及び誘拐罪で警察に電話しようと思うんだけど、でもそれは全部コウちゃんのためを思ってだからね?」

「おいバカ止めろ!! とりあえずその携帯をしまって話を聞いてくれ! 話せばわかる!」


 震える手で110番をしようとするコイツをなだめながら、俺は仕方なく全てを話すことにした。

「ボクは森山もりやま一花いちか。コウちゃんとは幼馴染だよ」

「いっちゃんの親と、俺の親は仲が良くてな、ガキの頃は一緒にキャンプや海水浴に出かけたりしてたんだよ」


 ふむふむと頷く忍を、いっちゃんはマジマジと見つめている。

 まぁ無理もない。俺に何かやましいことをされていないか心配なのだろう。


「さぁ、次は忍ちゃんのことを話してもらうからねっ!」


 疑いの目で俺をみるいっちゃんに、仕方なく忍とのいきさつを話すことにした。

 忍との出会い。そしてこれまで、俺が何もやましいことはしていないという清廉潔白の事実(ただし、お風呂に侵入した出来事は隠した)。

 今度はいっちゃんがふむふむと頷く姿を、忍がマジマジと見つめていた。


「記憶喪失かぁ。手がかりは何もないの?」

「ない! 度々写メを見せながら聞き込みを行っているが、忍を知っている人も、ここ最近で行方不明になったという話もない!」


 これは嘘ではない。休みの日に掃除の邪魔だと忍から追い出されるような日は、この周辺で聞き込みを行っているのだ。


「警察にはいかないの……?」

「忍が警察に行きたがらねぇ」


 忍に目を移すと、未だにいっちゃんをジロジロと見つめていた。

「まぁ私のことはさて置き」、と忍が急に話題を変えた。


「イチカさんは今、付き合っている人とかはいないんですか?」

「え……? まぁいないけど……」

「イチカさんはご主人様と幼馴染だそうですが、こうして料理のおすそ分けも持ってきてくれる仲とお見受けしました。つきましては、ご主人様の彼女になってやっていただけませんか?」


 ヴォエエエエエエ!?

 飲み物を勢いよく噴き出すところだった! こいつ、俺に彼女を作らせるって目的を本気で実行しようとしてやがる!


「え!? ボクが!? ヤダよ!」


 即答であった……

 まぁ知っていたが……


「大変ですご主人様! フラれてしまいました……」

「あぁそうだな。でも大体がお前のせいだからな? 勝手に告白して勝手にフラれてた俺の気持ちを考えろバカヤロウ……」

「でも安心してください。きっとこれが、いつもご主人様の言っている『ツンデレ』ってやつですよ!」


 ちげーよ! てきとうなこと言ってんじゃねぇぞ! そもそも俺といっちゃんはそんな関係じゃねぇんだよ!!


「いや~……正直コウちゃんとは無理だなぁ……だってコウちゃんってほら、キモオタでしょ? ボクそういうのダメなんだよね~」

「大変ですご主人様! 全否定されてしまいました……」

「お前さっきっから真顔で俺に振るのやめてくれる? お前が蒔いた種をそのまま俺に丸投げしてんじゃねぇぞコラ!!」


 だが、俺を無視して二人は向き合ったまま会話を続ける。


「ほら、コウちゃんの親って単身赴任してるでしょ? 料理を持ってきたもの、ボクの親が何だかんだうるさいんだよね。それに忍ちゃんならわかってくれるんじゃないかな? コウちゃんって相手が誰だろうと関係なくアニメネタ振ってきたりするんだけど、ボクそういうの全然わかんないし」

「ですよね! もう毎日大変なんですよ!」

「でしょ~!? そういう話はアニメ好きな人同士でやってほしいよね! コウちゃんって空気読めないからさぁ」


「お前らそういうのは俺がいない所で話せよ! 新手の嫌がらせか? 流石に俺もそんなダイレクトアタックされると泣きそうだよ!!」


「ねぇねぇ、忍ちゃんもそう思うでしょ?」

「ん……まぁ、そうですね……」

「……ふむ? さて、それじゃあボクはそろそろ帰ろうかな」


 そう言っていっちゃんが立ち上がった。

 ようやく帰るのか……長かったイジメがようやく終わる。


「あ、せっかくなのでここで一緒に食べて行ってください」

「いいよいいよ~、家でお母さんが用意してるだろうし」


 忍の誘いを丁寧に断りながら、いっちゃんは何故か俺の腕を掴む。


「その代わり、コウちゃんに送ってってもらおうかな~」

「は? お前んちって百メートルも離れてないじゃん」

「いいからついて来てよ! 紳士は近くだろうが送り届けるものなの!」


 そう言って、ズルズルと引きずる様に俺は外へ連れ出されてしまった。

 外はすっかりと暗くなり、そんな夜道を二人並んで歩きながら、いっちゃんはポツリと声をあげた。


「で? 忍ちゃんのこと、どうするつもりなの?」

「どうって……今まで通り、地道に聞き込みするさ」

「そうじゃないよ! なんで忍ちゃんがキミの彼女を探してんのさ!? コウちゃんは忍ちゃんのことどう思ってるの!?」

「な、なんだよ突然……どうもこうも、別に普通だよ……いきなりどうした?」


 何やら剣幕に詰め寄ってくるいっちゃんに気圧されながら、俺はなんとかなだめようとする。


「キミも気付いてると思うけど、忍ちゃん、コウちゃんのこと好きだよ……」


 ……は? 何言ってんだこいつ……


「いやいやいや、それはないわ」

「もしかして気付いてないの!? はぁ~……コウちゃんは昔っからニブちんだなぁ~」


 えぇ~……ギャルゲーで鍛えぬかれた俺がニブイだと……?

 確かに以前、忍の好感度チェックをやった時に、かなり高評価っぽい結果になったことがあった。だけどあれはあくまで遊びの一環で、普段の忍の態度を見る限り、俺に惚れている様子は皆無だ。


「ん? 昔っからってどういう意味だよ?」

「……まぁいいや。とにかく、コウちゃんにその気があるなら、忍ちゃんに優しくしてあげれば想いが繋がるんじゃないかな? さっさと彼女作って童貞捨てなよ」

「うっせーよ! 童貞とか言うんじゃねぇ!!」

「あはは、見送りはここまででいいや。じゃあねコウちゃん、色々と頑張りなよ~」


 ケラケラ笑いながらいっちゃんは走り去っていく。

 忍とたったあれだけ話しただけなのに、俺のことを好きだとかわかるもんかよ。てきとうなこといいやがって……


 なんだか悶々としながら家に戻ると、忍が夕食の準備を済ませていた。

 いっちゃんが持ってきてくれたおすそ分けの肉じゃがも並んでいる。


「では、いただきましょう」


 忍のことを考えながら黙々と食べる俺とは逆に、忍は口惜しそうに話しかけてくる。


「せっかくタイミングよくご主人様のガールフレンドが現れたというのに、彼女にこじつけることが出来ませんでした! 実に遺憾いかんです!」


 遺憾とか難しい言葉しってんなぁ、とか思いながらも、俺は試しに一歩踏み込んでみることにした。


「そんなに俺に彼女を作らせたいならさ、忍がなってくれよ。彼女に」

「は? イヤですよ」


 即答であった。

 ほら~! ね? いっちゃん、どう考えたってあなたは勘違いしてるって! 忍が俺のことを好きなはずないんだって!

 あぁ~、わかっていたけど、なんか今日一日で二回もフラれた気分だ……

 いや、実際フラれたのか……?


 食事に戻る俺と忍だったが、忍がご飯をよそった茶碗を持とうとした時だった。手を滑らせたのか、茶碗は忍の手から零れ落ち、一年中出しっぱなしのコタツの上へと転がった。

 幸いにも、ご飯は茶碗にくっついていたためにテーブルに散乱することはなかった。


「わわっ!」


 だが、慌てた忍が手を伸ばすと、今度は水の入ったコップに腕がぶつかりひっくり返してしまった。


「わっわっ!! 台拭きん!!」


 忍が拭く物を取りにいそいそと動き回っている。

 こぼれた水を拭き取ろうと懸命になる忍なのだが……


「なぁ忍……」

「なんですか?」

「それ、台拭きんじゃなくて、俺のトランクスなんだけど」


 忍がコチンと固まった。ちょっと頬を染めて、恥ずかしそうにポツリと呟く。


「ま、まぁ、駄主人様のパンツは雑巾と一緒って意味です……」

「嘘つけ! 普通に間違っただけだろ! ドジっ子属性つけて萌えキャラアピールか!? 遅すぎんだよ!」

「うっせーですよ!!」


 なぜか逆ギレされた。

 本当に三次元の女心はわかりませんですはい……

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