1話 1章
初投稿、初執筆です。
・プロローグ
かつて大陸全土を巻き込んだ大きな戦いがあった。争いをもたらした邪悪な魔法使いは魔王と呼ばれ罪なき多くの人々の命を奪っていった。多くの血が流れたのち、ついに魔王は時の英雄たちによって封印され世界はようやく安寧を取り戻すことができた。
しかし、そんな平穏な日々に再び魔の手が忍び寄るのだった。
・一章
少年は薄暗い森の中を一枚の紙と太陽のみを頼りに進んでいた。
「本当にこんなところにあるのかねぇ、まったく」
けだるげに一人愚痴をこぼす。その風貌は外套に覆われ詳細は確認できないが、肩に貧相な麻袋をひっかけているところから旅人であろうかと推測できる。
ところが、一人と思われていた少年の肩口から返答がある。
「私に愚痴られてもー困る!」
それは犬のような、はたまたリスのような人の拳程度の大きさの影であった。
「ごめんよクロ。まぁ偉い人から与えられた任務なんだ、嘘じゃないことを祈ろう」
しばらく進むと、クロと呼ばれた獣の影が何かに気付く。
「あっ、タクト!先の方開けた場所があるみたいよ」
タクトと呼ばれた少年影の示す方へ向かう。
影のいう通りにしばらく歩いていると、木漏れ日というには少々明るすぎる光をとらえた。
「おっ、あのあたりか」
少年の声色に喜色がうかがえる。心なし足も速く動いている。
「えへへ、偉い?」
クロがほめろと言わんばかりに胸をそらす。
「おう、偉いえらい」
タクトは適当に流し逸る心のままに足を動かすのであった。
「おお!」
光のもとにたどり着いた少年は思わず感嘆が漏れる。そこは森の中にぽっかりと空いた空洞のように開けた場所にでた。
開けた視界の中、一番に飛び込んできたのは白を基調とした聖堂のような建造物だった。
「これが鍵の神殿・・・」
自然と口から言葉が漏れる
「鍵の神殿て何?」
クロが素直な疑問を投げかける。
「ん?、ああ。まだ話してなかったけ。えーと、今回の任務の目的地」
タクトがなるべくわかりやすく説明しようとする。
「魔王の封印を解くための鍵を封印してる神殿さ」
「なんだかまどろっこしいね」
そうだなとうなずくタクト。
「で、その封印を解いて、鍵とその守護者を王宮につれて来いっていうのが今回の任務」
「えー、せっかく封印してるのに解いちゃっていいのー?」
タクトは扉の前に立つと背嚢から本を一冊取り出した。
「実は最近、ほかの場所にある鍵の神殿が悪い奴らに襲われてね、鍵を奪われちゃったらしいんだ」
「えー、守護者がついてたんじゃないのー」
取り出した本を左手に、扉に右手をかざす。
「うん魔王討伐に加わった英雄が守護してたんだけどね、殺されちゃったって」
「えー!悪い奴そんなにつよいの!?」
本と扉が淡く発光しはじめる。
「いや、封印の欠陥らしくてね、神殿内の時間は止まってるらしいんだけど守護者の力だけ時とともに落ちていくみたいなんだ」
「えーなんで?」
重く閉ざされていた扉が、ひとりでに開いていく。
「わからない。ただ、ほおっておくと非常にまずいってことは確かだからね」
「とりあえず鍵を安全な場所に移す?」
神殿への入り口が完全に開ききる。
「そういうこと、クロは賢いね」
「えへへ」
タクトは本を背嚢に直すと表情を引き締める。
「じゃあ、行こうか」
一人と一匹?は神殿へと入っていった。
・一章終わり
2章以降もきちんと書いていきたいと思います。