第13話 駄王、まさに駄王
「モフモフモフモフモフモフ」
「ハワァ…」
「……なんだ、これ」
修練場から帰る道すがら、アカツキは隣を歩くソフィアを見て呟いた。そのソフィアの腕には小さな四尾の白狐が抱かれ、モフモフされては幸せそうな声をあげている。その白狐は言わずもがな葛葉である。
あの後。
葛葉が二人と一匹の前に現れたあとはひどいものだった。
アカツキのモフモフで葛葉が嬉しさのあまり泣き叫び、その後の説明を聞き、さらに嬉しさで泣き叫んだのだ。
そんなにアカツキの嫁の従魔になれるのが嬉しいのだろうか。
まあ、そんなこんなでソフィアと葛葉は関係良好である。それはアカツキの嫁であることも関係しているのだろうが、ソフィアのモフりスキルが高かったのも関係しているかもしれない。
◇◇◇◇◇
「さて、駄王。覚悟はぁ、できてんだろうなぁ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。話し合おう、話し合おうじゃないか!」
「話し合い?ああ、良いとも。肉体言語で話し合おうじゃないか」
「回避不可!?」
モフモフは偉大事件もといソフィア使い魔獲得から数時間後。
ダオルーク王国王都にある王城。その中の豪奢な部屋──王の執務室には四人の男が居た。
執務室のソファに座り、テーブルの上の書類にサインをしているのは駄王の補佐にして王国の頭脳である【天才】アドルフ・エル・スペリア伯爵。
その向かい側に座るのは大公であるアカツキを支える【神官】ユリウス・ヘルツ。本名ユリウス・ヴァリガル・イラ・ドラゴニフ・ヘルツである。実はスゴい家の人である。
そして、王の執務机の横で土下座しているのがこの国の王【駄王】シグリット・レオ・ロード・ダオルーク。
その頭に延長されたバレルのM9を当てているのがこの国最高位の貴族大公爵の地位にある【黒魔乃剱神】アカツキ・エル・ヴァルシア・ユウキである。
ちなみにヴァルシアとは【大公爵】の者だけが名乗ることを赦される名であり、アカツキは正式の場ではこれを名乗ることになる。
さて、それではこんなカオスな状況になっている理由を説明しよう。簡単である。駄王が約束を違えた。これだけだ。
アカツキは昨日に「人を用意しとけ」とお願いもとい命令していたのが、この駄王はそれを忘れていたのだ。
その結果、アカツキを怒らせ、無様な姿を晒している。元々威厳なんて塵ほどもなかったが、それでもこれでいいのか国王よ……と言わざるを得ない状況だ。
実際、国王派の一部で「ユウキ大公を王にしたほうが良くないか」という話題も出ているのだが、不運なことにダオルーク王国の王族は異世界人──過去の勇者──の血を引いており、その異世界人(勇者)の血が流れていなければ王位継承の魔道具が反応しないのだ。それ故に「無理だな」と諦められている(エドルドはアカツキが異世界人だと知っているが教えておらず、さらに言えば魔道具の詳細もしらない)。
実際はアカツキ自身も知らないがその過去の勇者の血が流れている。
そう、嘗ての勇者。世界に忘れ去られし結城家最強と謳われた【鬼神】結城天厳齋兼定(兄とふざけて秘伝書wを書いた厨二病)の血を……。
そして、その秘伝書wは誰も到達できない境地(笑)として結城真流と呼ばれている。
まあ、そんなことはおいておき。
「それではユウキ大公。私はこれより出発いたします!」
「あ、よろしくお願いします。宰相殿が行ってくれて助かります。名も顔も知られているし、話も上手ですから。それと、その指輪は外さないでくださいね。即死無効や自動完全防御、状態異常無効がついてますから。それから、存分に羽を伸ばしてきてください」
「ありがとうございます…」
代役の宰相が出発した。
「あ、俺トイレに行き「お前は仕事だ、ボケナス。サボったら風穴あけんぞ!」
そして、駄王はアリ……アカツキに風穴を開けられそうになっていた。まあ、使っている銃は違…
「あ、ガバに変えとこ」
いや、なんでもない。
ただ、アカツキよ。お前は幼児体型じゃ、ないだろ。




