第11話 加護
サバゲーやりたいよおおおお!!!
アカツキは気配を感じ出入り口へ即座に銃口を向ける。
そこに居たのは……
「ソフィアさん、何してんですか。授業中ですよ」
ソフィアだった。アカツキは自分のことを棚に上げ、ソフィアをたしなめる。その間、何故かキチM9をクルクルと回しているのだが、気にしてはいけない。
「何って…君を探しにきたのよ。授業に出てないようだし」
ソフィアは少し呆れたように言う。
因みにこの時ミスリルクラスの授業の科目は数学。とは言ったものの、日本の小学校3、4年生レベルのものであり、アカツキからすれば幼稚園の時には完璧に出来ていた事であった。
つまり、アカツキからすれば数学もとい算数は出る必要が無いのだ。それどころか、教師の心を粉々に粉砕する可能性さえある。なんせ、アカツキは小学校一年生で幾つもの懸賞問題を解いた変態だ。この世界程度のレベルなんてたかが知れており、中学校で底辺レベルの学力でもこちらなら天才レベルになるのだ。それがもしアカツキとなったら……察してもらいたい。
「出る必要あります?」
アカツキはちょこんと首を傾げてソフィアに言った。あぁ、小動物なら可愛いんだろうなぁ。野郎のそんな仕草なんて見たくねぇよ。という声は聞こえないことにする。
「四則演算なんてどんな桁でも暗算で出来るし必要なさそうですけど」
「う…ここに天才が」
アカツキの何気ない言葉にソフィアは軽く衝撃を受ける。実はこのソフィア。数学もとい算数が苦手だったりする。もちろん、他の生徒よりは出来るのだが、5桁×5桁の掛け算になったりすると大混乱に陥る。解せぬな。
「ま、そんな事は良いじゃないですか」
「良くないわよ、兎に角授業にはちゃんと出なさい」
アカツキは言うが、ソフィアはそれを否定する。当たり前だ。
「えー、やだー。……それより、ソフィアさん!従魔ってどう思いますか?」
「話を変えてきた!って、従魔?従魔ってあの?」
「そうです。いやぁ、今従魔師って少ないですよね。テイムしても従魔を連れていくの面倒だし、召喚魔法なんて今じゃ遺失魔法ですからねぇ」
アカツキの言っていることは正しい。現在、従魔を持つのは酔狂な貴族や、一部の裏ギルドの者だけだ。前者は大型種をテイムしている場合もあるが、基本的に前者も後者もテイムしているのは小型種、それも鳥系のモンスターだ。その理由はアカツキの言ったことである。
かなり昔なら召喚魔法というものがあった為、従魔師自体もそこそこ存在した。それは召喚魔法の有用性によるものだろう。
召喚魔法とは自らの魔力を使用し、モンスターを召喚(厳密に言えば構築)する(勿論、消すことも、そのままテイムし続けることも可能)、もしくはテイムしたモンスターを格納し、必要とあらば呼び出すという魔法だ。その難しさは度を越えているが、以前なら使用者もいたのだ。また、馬鹿王子ことアキムが使用したのは後者のほうだ。そして、召喚と言えば誰もが勇者召喚を思い浮かべるだろう。だが、勇者召喚は召喚魔法によるものでは無いのだ。現象としてはモンスターの召喚(構築)に近いが、勇者召喚は構築ではなく、勇者自体が召喚されるのだ。
例えていうならば、モンスター召喚(構築)は高級ブランドのコピー品を渡されることで、勇者召喚は高級ブランドの本物を渡されるということだ。要するにコピー品かそうで無いかということだ。
閑話休題。
「で、従魔ってどう思います?欲しいとか思っちゃいます?」
「まあ、居たらいいとは思うけど…」
「うんうん、そうですよね。どういうのが良いですか?」
「可愛いのかなぁ」
「空飛びたいですか?」
「うん…」
「大きくても良いですか?」
「うん…」
「よし、決定ですね」
アカツキはそんな問答をしてから、人差し指で虚空に何かを描くとそれをソフィアに向かって弾いた。そして、それに当たったソフィアの回りに金色の光が漂い、そして消えた。
「よし、OKです。運が良ければ召喚魔法を覚えてますよ」
「え…どういうこと?……あれ、召喚魔法が増えてる」
アカツキが行ったことは簡単。ソフィアに覇神の加護を与えただけである。その効果は……ステータスの大幅上昇、全スキルレベルが2上昇、新スキル取得(ランダム又はアカツキが決定)、新魔法取得(ランダム又はアカツキが決定)、成長率上昇、即死攻撃を一日一度回避、状態異常無効、そして全分野への適正である。
ちなみに今回のソフィアの場合、スキルは神剣術を覚え、魔法は召喚魔法を覚えたことになる。
「え、どういうことなの!?」
「実は俺、覇神って神の神官を務めてるんですよ。そんで、ソフィアさんが覇神の加護を受けるに相応しいと思ったから、覇神に聞いてからOKが出たので加護を授けました。おめでとうございます。その身に加護を受けたのは俺を除けばソフィアさんだけですよ」
以前、アカツキはリリーに剣を打った時、その剣に覇神の加護を付加した。しかし、それは剣への付加であり本人の身体にでは無かった。つまり、リリーは剣への加護を所有者として副次的に受けているだけにすぎないのだ。そして、それは真に加護を受けたとことにはならない。
「え?覇神?って、あの噂の神々の王のことじゃ…」
もちろん、どこかの神皇のことではない。
「うん、そうですよ。さて、次は従魔を探しに行きますか」
アカツキは簡単に肯定すると、さっさと神話世界への門を開いた。




