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第9話 主夫になれるさ

「どうぞ」

「ありがとう」


 部屋に入った二人はアカツキ作のソファに座り、向かい合う。勿論、ソフィアが上座である。アカツキはそういう配慮ができる男なのだ。どっかの神皇とは違うのだ。


「……美味しい」

「どうも」


 アカツキに出された紅茶を飲んでソフィアが言う。まあ、アカツキの紅茶が旨いのは当たり前だ。城のある神話世界で育てられている茶葉を使っているのだから。因みにこういう物はは木─この世界では植物全般─の精霊であるドリアードが責任を持って育てている。他にも精霊達は色々な仕事をしている。但し、精霊神はニートだ。

 それと、この言い方だとアカツキの腕は関係無い様に聞こえるかもしれないがアカツキ自身のお茶を淹れる腕も相当高い。


「アカツキ君、どこか行ってたの?」

「ええ、ちょっと修練場に」

「あぁ、だから。でも、上半身とはいえ裸で出歩くのはダメよ。この寮は貴方ともう一人を除いて女性しかいないんだから」

「へぇ、そうなんですか……え?」


 アカツキは衝撃の事実を知った。普通なら既に知っていてもおかしくはないのだが、アカツキは未だこの寮に住んでいる者達と接触を持ったことが無い。


「……は、はは。それナンテエロゲ?グリザ〇ア?9029しちゃう?」

「?」


 アカツキは壊れてしまった。アカツキが元に戻ったのは数分経ってからだった。








「落ち着いた?」

「はい…」


 ソフィアの言葉にアカツキはうなずく。

 そんな時だった。


 バタン


「「は?」」


 部屋の外で何かが倒れる様な大きな音がした。


「何、今の」

「いや、俺に聞かないでくださいよ」


 と、言いつつもアカツキは扉の方へ歩いていく。

 そして、扉を開けるとそこには……


「お腹、減った……」


 ピンクの髪の少女が倒れて……行き倒れていた。


「……」


 アカツキは無言で扉を閉める。


「俺は何も見ていない。決して行き倒れなんて見ていない」


 そして、扉に背を預けると言い聞かせるように呟き始めた。

 しかし、次の瞬間にアカツキは重大なことに気付く。


「俺、飯どこで食えばいいんだ?……部屋のキッチンで作ればいいのか?」


 そう、食事の問題である。今までは王城で出されたりしていたので問題は無かったが、今日は違う。それにアカツキが疑問に思うのも無理はない。貴族が料理するなどイメージできないからだ。


「何かあった?」


 そんな時、ソフィアがアカツキの方へ歩いてきた。


「いや、飯ってどうすれば良いのかなと」

「ああ、食事なら学園の食堂へ行くか外へ食べに行くか、自分で作るかすれば良いのよ……って何してるの?」

「自分で作るかすれば良い……つまり今から作ってしまっても構わんのだろう?(某弓兵風)」

「え、ええ」


 ソフィアの説明を聞いた瞬間、アカツキはインベントリからエプロンを取り出し、キッチンに調理器具と食材を用意し始めた。いや、正確に言えば冷蔵庫を空いていたスペースに設置して、そこの中に食材をぶちこんだ。


「和食……洋食……どっちにしよう?イギリスみたいにガッツリ行くか?いや、でもフランスみたいに簡単に済ませても……でも待てよ。最近和食食ってないからな……迷う」

「な、なに?」

「ふぅむ、フレンチトーストでも作るか?いや、やっぱり和食だな。……待て、俺。………会長、飯食べてきますか?」

「迷惑じゃないならご馳走になろうかしら」

「……つまり、納豆は厳禁だな。しかし、和食も合わない可能性がある。よし、やはり洋食だな。うーん、俺はガッツリでも簡単にでもどっちでも良いんだが……よし、プレート+サラダ+トーストにしよう。会長、少し待っててください」


 アカツキはそう言うと、冷蔵庫から卵、ソーセージ、各種野菜を取り出した。


 そこからは言うなれば演奏会だった。

 ソーセージの焼ける音や、卵の殻を割り、かき混ぜ、フライパンへと落としたときの音。さらに新鮮な野菜の切られた時の音。

 そんなこんなで数分後、朝食が完成する。


 メニューはシンプルにオムレツ、焼きソーセージ、サラダ、トースト。そして、シンプルであるが故に作った者によっての細かな違いがよく分かる。さらに言えば全てのものが最高級食材である。


 そう、オムレツに使った卵はこの世界での最高級食材【コカトリスの小卵】の神話世界産の物。ソーセージは腸の部分は神話世界で生産している羊の物、中身は終焉の島に生息していたカイザーオークの肉、さらに制作中に使用しているスパイスも神話世界産のものだ。他にも全てに於いてこの世界での最高級食材を凌駕する物を使用している。


「出来ましたよぉ」

「……ごくり」


 運ばれてきた朝食を見て、ソフィアも思わず喉を鳴らす。


「食べましょうか」

「うん!」

「いただきます」

「いただきます」


 ソフィアはナイフとフォークを使って上品にソーセージを切り、口に運ぶ。


「~~!」


 そして、咀嚼した瞬間、口の中を肉汁が蹂躙する。

 しかし、それは不快なものでは無く、むしろ幸せと言えるものだった。

 二人は穏やかに朝食を食べ進めていく。




「お腹……減った…」


 その頃、アカツキの部屋の前では未だに一人の少女が倒れていた。












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