表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/119

第8話 幼馴染みヒロインは見習え!

 領地強奪&婚約記念の日の翌日。

 アカツキは初めて寮で起床した。


 だが……


「はぁ、はぁはぁ」


 アカツキは息を荒げながら飛び起きる。息をあらげているのは決して若く有り余る性欲を自分で……などということが理由ではない。ちょっとした悪夢を見ていた為だ。

 そう、駄王が五千人ほどに分裂する夢を……


 ま さ に 悪 夢 !


 悪魔や魔神を越える凶悪さである。

 もはや、アカツキにダメージ(精神的)を与えられるのは駄王しか存在しないのではないのだろうか。




 アカツキが起床した時刻は午前5時10分。かなり早いがアカツキからしたらいつも通りより少し早いくらいの時刻である。「春眠暁を覚えず、処処啼鳥を聞く、夜来風雨の音、花落つること知る多少」とは孟浩然の有名な詩ではあるが、アカツキには関係ないようだ。


 悪夢のせいでびっしょりと汗をかいたアカツキは風呂に入ろうかと一瞬考えたが、この後にする予定の事を考え、浴槽に湯を張るだけに留めた。


 アカツキはそのまま【黎明ノ時】を手に取ると、部屋から出て特別寮の修練場へむかった。













「さて、と」


 バサッ


 アカツキは修練場に着くと、修練場の真ん中へ歩みをすすめ、二畳程の大きさの茣座(ござ)を敷き、汗で濡れたままの寝間着代わりの黒Tシャツを脱ぐ。そして、アカツキの極限まで絞られ、鍛え上げられた傷だらけの肉体がさらされた。現在のアカツキの肉体は元の世界での体を再構築したものである。そして、それは傷も同じである。現在ついている傷は元の世界での傷で12歳までについていた傷──傷はついた年齢になると出現?する──と、自身の分身を創り出し──鍛練の為にだけで、終わったら即削除──戦闘を行った際の傷だ。

 アカツキはTシャツを畳み、茣座の上に置き、刀を傍らに置くと、足を組み黙想を始めた。

 いや、正確に言えば黙想とは違うかも知れない。『気』と呼ばれる(正確には結城流で呼んでいた)ものを丹田で練り、全身を循環させ、丹田に戻ってきたら戻ってきたものをさらに練り、また循環というものを繰り返している。だが、これは所詮地球でのものであり、アカツキが今行っているのは此方に来て分かった彼しか使えない『氣』──『緋氣』を使ったものである。また、これはステータスには反映されない。理由としては『気』というものがこの世界に存在しないのと、アカツキしか使用できないためだ。それと、【原典スキル】としてステータスに反映させることもできるがアカツキはそれをしていない。

 まあ、そんなことはさておき。


 静かに呼吸をするアカツキの回りで緋色の何かが揺らめき始める。これが『緋氣』である。

 まあ、勿論アカツキは何度も厨二病と評した。











 アカツキが黙想と称した練氣を初めてから40分。


 アカツキは目を開け、立ち上がった。

 そして茣座から降り、腕立てを行う。回数は50回。それを終えると茣座へ寝転がり腹筋、そして背筋を行う。こちらも回数は50回。この三種の筋トレを4セットを終えるとアカツキは茣座から離れ【黎明ノ時】を抜き、鞘をインベントリへと収納した。


「フッ!」


 そんな声と共にアカツキは上段に構えた刀を一気に降り下ろす。全く無駄の無いその動作を何度も何度も繰り返す。その早さは既に構えて降り下ろしてまた構えるまでが全く見えないほどだ。だが、それでも刀身は全くぶれていなかった。


 そんなこんなでその後は色々な形を繰り返し、時刻は6時25分となった。


 そして、現在アカツキは嘗て戦った自身の分身を仮想敵として、シャドウボクシングならぬ、シャドウバトルを行っていた。

 だが、それも所詮過去──それも一年前の自分であり、決着はすぐに着いてしまった。まあ、それでも体には修練場の土がついていたのだが。


 アカツキは手早く荷物を片付けると、部屋へと戻った。

 これがこれからの習慣となるのは間違いないだろう。









 コンコン


「アカツキ君?起きてますか?」


 アカツキの部屋の扉を金髪の美少女がノックする。言わずもがなソフィアである。アカツキが朝食の食べ忘れや遅刻をしないように起こしにきたのだろう。幼馴染みヒロインの様に部屋に凸したりしないでノックをして声を掛けるというのは幼馴染みではないとは言え、かなりポイントは高いと思われる。


「アカツキ君?」


「なんすか?」


 そして、ソフィアに答えた声は部屋の中からでは無く後ろから聴こえた。


「?きゃあ!」


 後ろを振り向いたソフィアが可愛らしい声を上げる。


「え、何!?……って、俺上脱いだままだったわ」


 アカツキもその声に驚くがすぐに理由に気付く。そう、アカツキは上半身裸のままだったのだ。鍛練やら何やらをしていたため、実家の感覚だったのだろう。


「お見苦しいものをすいません。取り敢えず中に入ります?」

「え、ええ」


 アカツキはサッとインベントリから新しいTシャツを取り出して着ると、一言詫びてからソフィアに提案した。彼女は顔を赤くしながらも確かに頷いた。














 これだけは言おう。

 お前ら数年後にはベッドの上でお互いの裸体くらい見んだろ。そんくらいで赤くなってんじゃねぇよ、ソフィアさん。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ