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第29話 国王様は常識人

「《停止》と。さて、アリサ殿下に質問です。

 彼、アルーン王国第一王子アキムはアルーン王国にとって必要ですか?貴女にとって敬愛するに値しますか?」


 アカツキは《混沌断罪》とアキムの時間を止めるとアリサの方を向き問い掛けた。その目──地球と同じく日本人にしては珍しい金眼──は真剣そのものでアリサの心まで見透かす様だった。しかし、アカツキはこの世界に存在するスキルを使用してはいない。スキルではなく自らの心で判断しようしている。


 そして、アカツキに問われたアリサは未だ答えていない。アカツキはもう一度アリサに問い掛けた。

 すると、アリサは何かを決めたようや表情でアカツキを見返すと口を開いた。


「お兄様は……………我が国においては軍事に関しては必要です。ですが、敬愛する事は出来ません。家族ですから家族愛ということはありますが私はあの傲慢さを強欲さを持ったお兄様を慕うことはできません」

「そうですか。では一つだけ訊いてもよろしいですか?軍事に関しては必要とは?」

「…………現在、アルーン王国では次期国王争いが繰り広げられています。時期尚早としか言えませんが。

 そして、それは第一王子派、第二王子派、第一王女派で起こっています。第一王子派は主に大貴族の中でも権力闘争に明け暮れている者と同じような取り巻き貴族が。第一王女派、第二王子派には大貴族や貴族社会の中でも『貴族は民の為に尽力する者』という貴族とお父様とお母様、隣国である神国の教皇派と呼ばれる常識的な方達が付いています」

「ちょい待ち。神国について教えて貰える?あ、それとちょっと口調変わるよ」

「あ、はい。神国には質素な生活を行い教義に基づき人の命は平等であり人を助ける事を良しとする教義教皇派と教義を曲解し傲慢に振る舞い自らの私腹を肥やす等の事を行う教義革新派と呼ばれる二つの勢力があるんです」

「なるほど。要するに教皇派と第一王女第二王子派は『民の為に尽力する』ということで意見が一致したと。

 なら、予想だけど第一王子派には教義革新派がついてるだろうな。続けてくれ」

「はい。それで、お兄様は同年代の中では上位の強さを持っています。それは国に──特に軍事に関しては特に重要なんです」

「それで周辺国でも有名な王子は周囲への牽制になるから必要だと。だけど、それだけだと弱いよな?ユニークスキル──それもユニークの中でも一人しか持ち得ない原典(オリジン)スキルか《写本》スキルを持ってるんじゃないか?」


 アカツキはアリサの言った事から自らの推論を披露した。

 一応ユニークスキルの説明をしておくと、ユニークスキルの中には、

 その世界で一人しか持ち得ない《原典》スキル。

 極々々々々少数しか持ち得ない《原典》の複製《写本》スキル。

 厳しい修練の果てに持つ《導書》スキル。

 が存在する。さらに《原典》スキルの中には《写本》スキルが存在しない者もある。例えばアカツキのユニークスキル《我流暁》だ。


 アリサはアカツキの言葉を聞くと目を見開き何故か震えた声を出した。


「な、何故それを」

「やっぱりか。予想だが披露させてもらうと、確かにアイツは牽制にはなり得るかもしれない。だがそれだけだと理由としては軽い。だったらスキルだ。軍事関係で重要視されるスキルは《鼓舞》なんかだ。だが、そんなのは指揮官──それも優秀な者なら確実に持ってるからそれも理由としてはあまりにも御粗末すぎる。ならばユニークスキルか特殊スキルになる。特殊スキルで軍事関係で良いのは《英雄の威風》や《勇者の希望》だが、これはジョブと称号の両方で《英雄》などがないといけない。そうなると残るのはユニークスキルだけだが、《導書》スキルでの軍事系スキルは《勝利への道標》とかだけどこれはほぼ不可能だ。

 だったら《原典》か《写本》しかないと思った。それだけだ」

「…………そうですか。その通りです。お兄様は《写本》スキル《栄光》を持っています」

「なるほど。《栄光》か。効果は『味方へのHPMPリジェネと各ステータス小上昇』だったな」


 アカツキはスキルの効果を言うと一人納得した。しかしそれを見て言いたい事がある者が一人。もちろんアリサだ。


「もしかして全スキルの効果を覚えてるんですか?」

「ん、まあ一応。

 でもそれよりもアキムが必要なのは分かった。でもさ、それは本当に必要なの?」


 アカツキはアリサの問いに軽く答えると本題へと戻った。


「だってさ、第二王子は神子なんだろ。それも《原典》を二つ、《写本》を四つ持っている。もっと言えば性格も頭も良いと来ている。そして………転生者なんだから。そう考えるとアキムって要らないよね。あ、でもこのままだとそっちが攻めてくるのか」

「ち、ちょっと待ってください!なんでカイトが転生者だと……」

「秘密だ。それで、どうなんだ?」


 アカツキはアリサの問いを秘密などという戯れ言ではぐらかすと再び問いかける。

 この時、アリサは内心で考えた。そして、その最中に思い出した。父──つまり現国王がアキムの更正を考えていたことを。そして再び考える。さすがにここまでは庇いきれないのではないかと。他国のそれも大国の最高位貴族に対する強盗未遂に殺人未遂。ここまででも王子とはいえ幽閉クラスの事であるのに、彼はEXランク冒険者でもあり、ギルドでもトップの権力を持ち、その恩恵で各国家で最高位貴族クラスの待遇を受けるのだ。ここまできたら幽閉では済まない。軽くて処刑。重くて市中引き回しの上で公開処刑だ。


「…………お父様に話を通してもよろしいですか?」


 そこまで考え、アリサはアカツキにお願いした。アカツキは正当防衛だし、戦争になったら俺一人で叩き潰すからいいか。と考えそれを了承し、手を差し出した。


「それじゃあ、俺の手を握ってくれるか?」

「え?何でですか?」

「いや、だって話は早い方がいいだろ?

 魔法で話せるようにするけど会ったことのある人としかできないから発動は俺がして、相手の選択をしてもらおうと思ったんだよ。その為に手を繋ぐ必要があるんだ」

「あ、そうですか。それでは……(あれ?騎士団長の手よりも固い。なんで?)」

「それじゃ、いくぞ。《魔法式念話》発動」



 この後、国王との話は意外にもすぐに終了した。

 その結果、アキムは国王による判断で死刑。このまま死亡する事となった。

 また、アキムの死に際を見るために国王がアカツキに頼み込み、国王が急遽アカツキにより転移することとなった。

 アキムが死亡した後、国王によりアカツキに対するとある事実が露見した。

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