第5話 ゴルミ侯爵という男
〓三日後〓
再び王城へと向かいシグリットと会談をしたアカツキとハンスは屋敷へと帰っていた。
ハンスはリリーに3日後に王都を発つことを伝え、アカツキは渡し忘れていた剣を渡すことにしていた。
しかし………
「やっと帰ってきたのか貴様ら。この私が来てやっているのに留守でさらにはこんなにも待たせるとは何様のつもりだ!立場を弁えたらどうだ!」
なぜかゴルミ侯爵が屋敷にいた。因みに待たされたと言っているが待った時間は10分程である。これは鐘で大まかな時間を図るこの世界としては誤差の範囲だ。しかも留守を咎めているがもともとアポをとっていないため当たり前だと言える。さらに上から言っているがシェルベン家は侯爵となったので立場は同等だ。もっと言えばアカツキは最上位貴族の大公爵になったため立場を弁えなければならないのはゴルミの方である。
さらには、
「それと小僧!貴様は私に刀というあの剣を持ってこい。あの様な物も私に使われることを望んでいるのだ!速く持ってこんか!薄汚い賤民が!」
などとほざいている。
普通なら怒るところだが、ハンスは穏便に済ませようとするが、
「それはまk「ウルセェぞ、ジジイ」…はぁ」
「なっ、貴様!私が誰だと思っている!」
アカツキが途中でさえぎった。
今まで我慢していたがそれも限界だった。アカツキはいつも国王やハンスに砕けた感じで話しているがそれでも最低限の礼儀と敬意を持って接していた。アカツキ自身幼少の頃か
ら礼儀というものを祖父や父に叩き込まれていた。そんなアカツキが嫌うのは最低限の礼儀すらまともに持たない人間だった。しかしどんな相手でもある程度の礼儀を持って接するアカツキも、ゴルミに対してはそんな事すら必要ないと感じた。その結果がこれだ。
「ダオルーク王国貴族、ゴルミ侯爵だ。それくらい知ってる。それでは逆に訊く、俺が誰だと思っている?」
「薄汚い賤民以外の何者でも無いだろう!」
「違うな、全くもって違う。質問を変えてやる。俺の爵位はなんだ?」
「はん!何を言っておる!貴様の様な賤民が爵位など持っ……て…いる……はずが………」
「もう一回だけ訊こうか。俺は誰で、俺の爵位はなんだ?」
「あなたは………ユウキ大公爵…です」
「That's right !その俺にボロくそ言ったんだ、どうなるかわかるか?」
不敬罪になる。この世界では大公爵というのは王族と同じ扱いになる。分かりやすく言うと家族内で名乗る名字が違うというだけだ。つまり大公爵というのは血の繋がりがある場合も無い場合も王族として扱われるのだ。
アカツキは大公爵となったため、ダオルーク王国の王族として扱われる。つまり、ゴルミのアカツキに対する『薄汚い賤民』発言は王族の人間に対する侮辱であり不敬罪になるということだ。さらに言うとランクSSS冒険者でもあるアカツキはギルドでも最上位の発言力を持つことになる。よって最悪の場合、ギルドに依頼が出せなくなる可能性がある。
その事を理解したゴルミは顔を青くする。
そして、先程までの威勢はどうしたのかアカツキに対してみっともない土下座を披露する。
「どうか、御許しください」
「さっきまでの威勢はどうしました?なんで高貴なゴルミ侯爵様が俺みたいな『薄汚い賤民』に土下座なんてしているのでしょうね」
そしてそんなゴルミを見たアカツキさらに追い撃ちをかける。
そして、
「すいません、こいつつまみ出してください」
アカツキはシェルベン家の騎士に声をかけゴルミを外に出させた。
◇◇◇◇◇
ゴルミの来訪による騒動を終え、アカツキとリリー、そしてハンスは夕食を摂っていた。その中での話にはゴルミ侯爵についての事があった。アカツキ達が帰ってくるまでの間ゴルミの相手をしていたのはリリーだったのだが、その時の話にハンスが激怒した。
その内容というのが簡単に言うと、
「貴様は我が息子に嫁げ」
というものだった。
それを聞いたハンスが激怒し、ゴルミを叩き潰すと言って聞かなかったということ以外はそこそこ穏やかに夕食が終わった。
そして、夕食が終わりアカツキはリリーに例の剣を渡した。デザインも気に入ったようでリリーは喜んでいた。
◇◇◇◇◇
時を少し遡りアカツキ達が夕食を食べている頃、ゴルミは自らの私兵(それも元盗賊や傭兵など)に王都から帰るアカツキ達を襲うように命令を出していた。
「これで、あの小僧はいなくなる!私に逆らうからこうなるのだ!」
しかし、これは無駄になることを彼はまだ知らない。
◇◇◇◇◇
〓おまけ〓
二回目の会談の為にアカツキ達は王城に来ていた。
今回の会談の目的はユウキ大公爵家の紋章のデザインを決めるためのものだった。
「それじゃあ、全員案を言っt…「もうデザインできてるよ」マジで?」
「ああ、これだ」
「あ、うん。じゃあこれでいいよ」
こうして会談はアカツキによって開始5分で終了した。
そして、ユウキ大公爵家の紋章は三日月と月桂樹と二振りの剣を持つ戦乙女、そして龍を基調としたものになった。
因みに紋章のデザインを決めるために、きたデザイナーは少し涙目になっていたとかなっていなかったとか。




