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プロローグ02(改稿済)

改稿済

回想は次へ続きます。

その日、彼──結城ゆうき あかつきは普段と変わらず午前5時に目をさました。

日課の朝稽古。

ちょっとしたストレッチを済ませ、家の周りを数周走り、敷地内の道場でトレーニングと素振りを行い、母屋へ帰る。


全部で1時間半ほどの運動。

しかし、育ち盛りの彼からしてみれば早朝からの運動はかなり腹が空くものだった。



「おはよう」

「おはようございます、お兄様」

「おはよう父さん、咲良。母さんもおはよう」

「おはよう、暁」


母屋のダイニング。

二年前に建て替えられたばかりのいかにも和モダンといった雰囲気のそこに入り、あいさつを交わす。


新聞を下ろし、声を掛けてきたガタイのいい男が父の優作。キッチンに居るのが、母の陽子。

お兄様と言った艶やかな黒髪を伸ばした少女は暁の双子の妹の咲良。産まれた時間で言えば半日も離れていないが、いつからかお兄様なんて大仰な呼び方をする彼女にツッコミを入れることを暁はしない。そんなこと、かれこれ数年前に無駄だと悟っていたためだ。


「爺さんは?」


椅子に座りながら暁は咲良に聞いた。

いつもならこの時間にはダイニングに居る祖父が居なかったためだ。


「おじいさまなら、さっきトイレに行きましたよ。……と、噂をすれば帰ってきました」


その言葉に暁は扉の方を向く。

引き戸からスッと入ってきた老人は、肩を回しながらテーブルの方へ向かってくると、ヒョイッと優作の手から新聞を抜きさり席へと着いた。


「ちょっ、親父」

「なにも言うでない。儂はお前の父、そして年長者、OK?」

「なにもOKじゃないし、今時そんなこと言ってたら老害扱いだよ」

「ほっ、老害だと?ふむ、それは……だが、それとこれとは話は別。奪われるお前が悪い」

「もう意味わからないって……まあ、目ぼしいとこは読んだしいいけどさ」

「ほっほ、それと暁おはよう」

「お、おはよう爺さん」


父と祖父のどこか子供染みたそんなやりとりを見て、暁は苦笑いする。

こんなことをしていても、実の親子でいがみ合う家庭なんかよりは余程いい。

そんな風に思っていると、目の前に焼き鮭が置かれた。


「はいはい、優作さんもお義父さんもじゃれ合うのはそこまでにしてご飯にしましょう。咲良、手伝ってくれる?」

「はい」


スッと、席を立つ咲良を見て我が妹ながらよくできている……なんて、兄バカ、ともすればシスコンと取られかねないようなことを思い浮かべ、暁は目の前に置かれた焼き鮭を見る。

ふっくらとした身に、うっすらと見える塩。香ばしい匂いが鼻まで届き、暁の身体が早く食わせろと主張する。


少しして、テーブルに朝食がすべて揃い、全員が席についた。


「いただきます」


食材に、そして作った母へ感謝を込めて。

手を合わせ、暁は焼き鮭に襲い掛かった。








◇◆◇◆◇


「行ってきます」


食事を済ませ、手早く身支度を整えて暁は家を出た。

時刻にして7時05分。徒歩で15分ほどの学校へは7時半頃に着く予定だ。

7時半頃に到着予定、とは言っても暁の通う学校の始業時間は8時50分。1時間以上の猶予があるにも関わらず、暁がこのタイミングで学校へ行くのは所属する部活の朝練に参加する為だ。

とは言っても、今は10月中旬。中間考査まで一週間といったところであり、本来なら部活動は禁止されている期間だ。にも関わらず、朝練を行うのは暁の所属する部が全国屈指の強豪であり、その主将が校長ひいては理事長まで直談判したからに他ならない。しかし、高校生という立場上本業である学業を疎かにするわけにはいかず、便宜上、調整のための早朝練習として行われるためそれほど大した練習が行われるわけではない。

が、特別な許可がされているために、サボるというような選択肢は暁には無かった。





私立太刀原学園。

中高一貫の、高等部だけの生徒数が2000人に達する、俗にいうマンモス校だ。

特徴としては、その生徒数はもちろんのこと、部活動の盛んさ、敷地内に学生寮を持つほどの敷地の広さ等が挙げられる。


そんな学園の正門。

テスト前の期間でなければ、活動の盛んな部活動の部員達で賑わっていたであろうそこに、人影があった。

派手な赤のマウンテンバイクに、頭にはこれまた赤のニット帽を被り、そこから明るい茶色の髪が覗いている。校門に寄りかかりながら、片手を制服のスラックスに突っ込み、片手でスマートフォンを持っているその姿は、世間一般のイメージにある名門校太刀原学園にはそぐわない格好だ。

しかし、着ている制服は暁と同じ紛れもない太刀原学園高等部の物だ。

知らない者が見れば、ほぼ確実に『チャラそう』または『不良っぽい』という感想を持つであろう、その人物を見て暁は口角を上げ、その名を呼ぶ。


「大智!」

「オッス!暁」


名を呼ぶ声に釣られ、その人影──大智と呼ばれた彼はスマホから目線を上げ片手を上げた。


「おはよう」

「おう、おはよう」


パァンと、ハイタッチをして、二人は並んで学園の中に入る。


「随分はやいな、大智」

「まあ、な」


暁の隣を歩く赤ニットの彼──河東かとう大智だいちは少しバツが悪そうに頬を掻いた。

それだけで、大智が早い時間に学園に来た理由、そして校門に居た理由を暁は察する。


「なあ、暁……?お前を親友と見込んで────」

「まあ、待て。みなまで言うな」


神妙に切り出した大智の言葉を遮り、暁は鞄を少し上げる。


「古文に数学、あとは世界史……だな?」

「あ、ああ。よくわかったな」

「お前のことだから、今日提出しなきゃならない課題がある教科で、なおかつ得意科目はやってないと仮定すれば簡単なことだろ?」


同じ部に入っているわけではない大智がこの時間に学校に来るなど、そうそうあることではない。

そして、大智の性格上あり得ることはこれくらいだった。


「そこまで読まれてちゃあ、仕方ねぇ!ノート貸してください暁さん!学食奢るから!」

「唐揚げ定食全増し、豚汁セットで手を打とう」

「くっ……だが1000円程で単位が取れるなら安いものよ!」


ノートを貸してもらう対価に学食を奢るというのはなんとも言えないが──まあ、対価無しに無心し続けるよりは余程いいが──、当人同士が納得しているならいいのだろう。


交渉成立、とばかりにグッと握手を交わし、暁は鞄からノートを3冊取り出す。

大智が足を止め、パラパラとそれを捲れば中には整然と授業の記録が取られていた。


「うっへぇ〜、長えなあ」

「仕方ないだろ、2学期のはじめからの分なんだから」

「だよなぁ」


ここだけ見れば、大智は授業をまともに受けていない不真面目な生徒イコール成績が悪い、というようにとれる。

だが、実際には1学年600人を超える生徒の中でもトップクラス、上位3%に入る学力の持ち主だ。

にも関わらず、課題の提出日に切羽詰まっているのには理由がある。


「それで?現役高校生作家さんは新作を書き終えたのかい?」

「ふっふっふ、あったり前よ!」


鞄にノートをしまい、大智は暁に向けてVサインを作る。

河東大智、またの名をかわとう大智。ここ最近、徐々に知名度と人気を伸ばしている作家の彼は、得意科目の授業中にその執筆を行っていた。それ故に、提出課題を終えていないのだが、まあそこはご愛嬌といったところだ。



「って、やばい。もう時間が……」


そんなことを話していたが、暁は腕時計の指す時刻を見て少し焦る。

7時27分。朝練は7時半集合だ。かなりギリギリである。


「大智、悪い、俺はもう行くわ。ノートは後で返してくれ、じゃーな」


暁はそれだけ伝えると、全力で走り始めた。






「はぁっはぁっ、セーフ!」


7時29分。

ギリギリながら、暁は道場に入った。


「ギリギリ、ね」


危なかったぜ、とかいてもいない汗を拭う暁にそんな言葉が掛けられた。

横を見れば、すでに道着に着替え終えた先輩方がずらりと並んでいる。

どうやら、みなさん用意はできているらしい。


「早く着替えてきてね」


にっこりと笑って男子剣道部主将である相馬そうまは暁にそう告げる。

いつもなら間に合っていたのに大智め……などと軽く思いつつ、暁は剣道場備え付けの更衣室へ走った。



その日、俺はいつも通り家族と鍛練をしてから、学校に登校した。






 ◇◇◇◇◇




 私立太刀原高校。


 そこが俺の通う学校だ。




「オッス!暁」


「オウ、大智。朝から元気だな」




 校門の前で会った河東大智と他愛ない会話をしながら教室に向かっていた。






「オッス!みんな」




 そんなことを言いながら教室に入る大智。そして、大智の後ろから教室に入る俺。その瞬間、少しだけ教室が静まりかえる。いつもと同じだ。




 俺は学校内でかなり浮いていた。


 もともと浮いていた気もするが、それは大智のお陰で改善されていた。でも、とある事件のせいでそれまで話をしていた奴らは、大智と先輩以外俺と話さなくなった。


 でも、1人だけ話し掛けてくるようになった者もいた。




「おはよう。河東君、結城君」




 彼女は、三枝雫。あの事件の関係者だ。




「おはよう、三枝さん」


「おはよう」




 いつものことなのだか、こんなやり取りをしていると、殺意と嫉妬のこもった視線と、恐れの視線が注がれる。俺にだけ……。




 でも、それも当たり前の事だと思う。彼女は、学校でも3本の指に入る美少女なのだから。そんな彼女が俺みたいな問題児(だと思われている)と話していたら、やはり男子としては、面白くないし、女子としては、彼女が心配なんだろう。恐がっているようだが。彼女に気がない俺としては困るのだが、実害がないだけ、良いだろう。






「おーい、席に着け。出席とるぞ」




 担任教師のそんな言葉で視線も、無くなり、大智と三枝は席に戻って行った。




 なんでこんなに、怖がられているんだろう?などと、考えていると




「結城、結城暁」




 と、呼ばれた。「はい」と返事をしておく。その後、そのまま担任の話を聞き、学校生活が始まった。






 ◇◇◇◇◇




 今日の授業全てが終わり、帰宅しようと荷物をまとめていたら、彼女が近寄ってきた。




「結城君、ちょっと良いかな?話があ……」


「暁―。ノート貸して~」




 彼女が何か話していたが近寄ってきながらそんな事を言った大智のせいで聞こえなかった。




「ゴメン三枝、あいつのせいで聞こえなかった。もう一回言ってくれるか?」


「何、話してたの?ま、とにかくノート貸してよ。」


「少し落ち着け。で何を貸せば良いんだ?」


「えっと、古文と数学と……」


「わかった。今日の授業全部だな。ちゃんと明日返せよ。」


 そう言って、ノートを渡すと大智は、部活に向かった。




「ああ、ゴメン三枝、話の途中だったな。で、話ってなに?」


「やっぱり、明日でいい。ゴメンね呼び止めちゃって」


「いや、別にいいけど」


「じゃあ、また明日ね。バイバイ結城君」


「じゃあな」




 そう言って、彼女も部活に向かった。






 ◇◇◇◇◇




 俺は家に帰るためバス停に向かっていた。


 いつもの店、いつもの公園。まだ1年にも満たないが、既に見慣れた街並みだ。




(あの子……、また1人で遊んでるのか。)


 そんな事を思いながら、通り過ぎようとする。




(車とか来たら危な…!?)




 そんな事も考えていたら、白いセダンが、その子の方に突っ込んできた。


 俺は何も考えず突っ込み子どもを突飛ばした。




 すぐに衝撃が襲ってきた。






「…………くっ…」




(あの子は………無事みたいだな。良かった。)




 そんな事を思いながら俺の意識は、暗転した。








◇◆◇◆◇◆◇

【当時のあとがき】




如何でしょうか。

割とテンプレな展開だと思います。

やっぱり、文章力ないなと痛感させられます。

それと、ちょっとしたキャラ紹介をさせていただきます。


結城 暁/ゆうき あかつき

主人公です。この後詳しくわかります。


三枝 雫/さえぐさ しずく

ヒロインでありヒロインでないという、曖昧なキャラです。


河東 大智/かとう だいち

主人公の親友です。高校生になってからの付き合いです。小説家志望で、授業中に執筆しています。


こんな感じです。あと、大智はほぼ出てくることはないです………多分。三枝さんは…出ますかね?


作品の中ではまだ出てきていませんが、暁には好きな人がいます。

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