第3話 シェルベン辺境伯
《魔四駆》を走らせていると正面に大きな壁が見えてきた。
「あれがタルカか」
辺境の『城塞都市タルカ』
二重の壁に囲まれ王国で王都に次ぐ大きさの都市だ。強固な壁と実戦を繰り返してきた兵達によってこの都市はモンスターの脅威と戦っている。そして冒険者と呼ばれるもの達が多く集まる場所である。
「すごいな」
遠くに見えるタルカを目指し更にスピードを上げた。
◇◇◇◇◇
俺達はタルカの貴族用の門に向かっていた。
「と、とまれぇ」
門の前に行くと門番がこちらに武器を向けてきた。
「何だ?」
「き、貴様これはなんだ!?」
「マジックアイテムだよ」
「どうしたんですか?アカツキさん」
そんなやり取りをしていると後部座席からリリーが顔を出してきた。そしてリリーを見た門番はというと………
「貴様、リリー様に何をした!」
などとほざいていた。
「サイクロプスに襲われてたから、助けたついでに送ってきたんだよ」
「嘘をつくな!貴様の様なガキがサイクロプスを倒せる訳がないだろ!リリー様を解放しろ誘拐犯め」
なんだこの決めつけは?めんどくさいな。
「待って下さい。アカツキさんは私達を助けて下さいました!誘拐犯等ではありません!」
「誘拐犯に脅されているのですね、こいつは、我々が捕らえますので安心して下さい。殺しはしませんが、痛い目を見てもらいますか!もう大丈夫ですよリリー様」
リリー、ありがとう。そしてこいつは何だ?話を聞かない上に自分の妄想を現実だと思い始めたみたいだぞ?
「違います!!話を聞いて下さい」
「おい、どうした?」
「班長!リリー様を誘拐した者がいました!それどころかリリー様を脅しています!」
「だから違います!!!いい加減にしてください」
「リリー様、脅されているののは本当でしょうか?」
「違います!!!」
「班長、こいつはリリー様を脅しているのです!」
何だこれ。
「いい加減にしてください!!!人の話を聞かないで、妄想を現実のように語るのはやめてください!第一、見てもいないくせに決めつけるのもどうかと思います!」
あ、リリーがキレた。キツいなー言ってる事、まぁ事実だけど。
「リリー様、何があったのか教えていただけますかな?」
「はい…。私達がタルカに………」
「なるほど。そういう事でしたか。それとそちらにも聞きたいのだが?」
「構いませんよ。自分が………」
「成る程、ありがとう」
「いえ」
「それと、先程は部下が済まなかった。ここは通ってもらってかまわない」
班長さんは話がわかる人で良かった。さてこれでやっとタルカに入れr…
「班長!そんな奴のいうことを信じるのですか!リリー様は、きっと騙されているのです!」
「黙れ!」
班長さんがキレた。
「お前はその妄想癖と妄言で何回誤認逮捕をしてきた!お前の妄想の被害者が何人いると思ってる。お前の言う事何て今じゃ誰も信じちゃいねぇんだ。お前が周りから何て呼ばれてるか知ってるか?『歩く妄想』 、『歩く迷惑』だ。寝言は寝てから言えってんだ、馬鹿が!」
どうやら、常習犯らしい。
「で、でも一応何があったか聞くじゃないですか」
「形式上そうしてるだけだ!」
どうやら、相当ダメな奴らしい。それより、これ以上は、関係無い。
「すいません、俺達もう行きますね」
「どうぞ」
「それでは」
班長さんと一緒に来ていた人に声をかけて俺達は車から降りた。そして、タルカに足を踏み入れた。
「お前はクビだ!!!!!」
まだやってんのか。
◇◇◇◇◇
「アカツキ殿」
執事さんが俺に声をかけてきた。
「何ですか?」
「アカツキ殿にはこれから一緒にシェルベン辺境伯爵邸に来ていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
伯爵邸へ?行く意味あるのか、まぁ暇だしいいか。
「はい、構いませんよ」
「ありがとうございます」
「いえ」
しばらく歩いていると、デカイ家(砦と城を足したような感じ)が見えてきた。あれが伯爵邸か?
「あれが、シェルベン辺境伯爵邸でございます」
どうやらそのようだ。そんな事をしていると伯爵邸についていた。
「こちらの方は……………」
「わかりました。おい、お前旦那様に伝えてこい!」
「はっ!」
俺の事を説明してくれているようだ。
しばらくすると、伯爵邸から人が出てきた。よくみるとメイドだった。
「お帰りなさいませお嬢様。
アカツキ・ユウキ殿はどちらでしょうか?」
「あ、はい。俺です」
「初めまして、ロティ・ザルツと申します。旦那様よりユウキ殿を案内しもてなすように申し付けられております。ご案内させていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
この世界の貴族を呼ぶときは『名字+爵位』です。また、当主は名乗るときに領地を着けます。
『名前+領地+エル+名字』と、いう感じです。




