第32話
団体戦選抜第4戦 対『破拳』センライ・クルシオ 勝利。
団体戦選抜第5戦 対『狙撃手』ユリア・バークランド 勝利。
団体戦選抜第6戦 対『直剣』フカセ・エル・シーケンタブル 勝利。
団体戦選抜第7戦 対『黒剣』シーナ・エル・ブックリン 勝利。
団体戦選抜第8戦 対『迅雷』エミリア・エル・セードカルス 勝利。
団体戦選抜第9戦 対『爆神』ルミナ・エル・コッセン 勝利。
連日行われる四煌極星祭の団体戦出場選抜予選。
他の候補者たちが勝ったり負けたりを繰り返している中、アカツキは全勝のまま、残り3戦まで戦いを終えていた。
現在、団体戦出場が有力なのは3人。
『神閃』グレイ・アグナムル、『戦姫』ソフィア・エル・セレンソン、そして『黒魔乃剱神』アカツキ・エル・ヴァルシア・ユウキである。
現在この3人のみが選抜戦無敗を保ち続けており、グレイとソフィアの2人が今日戦うこととなっている。
前年度の校内一位と二位。
これまでで一番激しい戦いになることは誰もが予想していた。
◇◆◇◆◇
予想に反して、アカツキの眼下で繰り広げられるグレイとソフィアの戦いは静かなものだった。
いや、実際には二人の間では意識や間といったもので激しい戦いが行われているのだろうが、見ている観客達からすれば殆ど動いていない2人の試合は静かなものだった。
観客たちの服の擦れる音。
外で吹く風、地面に叩きつける雨の音。
そんな音は恐らく、2人には聞こえていないだろう。
極度の緊張状態。
相手の隙を逃さんと集中するがゆえに、無駄なものは全て省く。
そんな状態が続いていた。
そして……
「あっ……」
観客の殆どが気付かないような一瞬の隙。
それに気付いたアカツキが声を漏らす。
その隙を見逃さなかったのだろう。
剣が閃く。狙いは首筋。
防御は、間に合わない。
「参りました」
先に集中力を途切れさせ、敗北したのはソフィアだった。
◇◆◇◆◇
「神速の抜刀術か……」
アカツキは呟いた。
神速の抜刀術。どこかの人斬りのような技だが、そのスピードは恐らく比にならないだろう。
溜めがどうこうとか、抜刀術に関しては色々あるが、極論として刀を振る以上、腕力がものをいうのは当然のことだ。
魔力によって身体強化を行えるこの世界で、ほぼ一挙動で攻撃のできる抜刀術は強力であることは疑いようがない。
それが、技術を持つものならばさらにだ。
グレイは、技術を持つもので、さらにその身体能力も突出している。
ソフィアが負けたのは、集中力を途切れさせたのもそうだが、反応に着いてくるだけの身体能力を得られていなかったのも原因になるだろう。
さて、そんなことを考えているアカツキの次戦の相手は今アカツキを見ているグレイである。
はたして、どんな戦いになるのか。
高い技術と身体能力を持ち合わせた相手との戦い。
本来アカツキが望んでいたものに限りなく近い戦い。
アカツキは楽しみでならなかった。




