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第24話ꙩ語らい

「ところで、だ」

「なんだよ?」


グランは手を止めることなく飲み続けるアカツキを見ながら、ふと思い出した様に声を掛けた。


「お前、いつ迷宮都市に来んの?」

「んー、そのうちな」

「そのうちって……」

「俺だって色々やることあんだぞ?昼寝とか昼寝とか昼寝とか」

「昼寝しかしないのか、お前は」

「いや、別に」


もちろん冗談である。アカツキには昼寝をしている時間などない。もうすぐ領地を得ることとなる。基本的には代官をたてる予定ではあるが、それでもまずは自分が行かなくてはならないのは変わりない。それこそ、大きな問題があれば学園など辞めて、領地運営をする可能性さえある。


アカツキの治めることとなる領地は王家直轄領となっている場所である。そこを貰い受けることとなったが、ただ貰うというだけでは済まない土地なのだ。

その理由として、まずはその広大さが挙げられる。アカツキの貰い受ける王家直轄領ルミナール地方は王都の北西部に位置するが、他国との国境に面しているため、おいそれと貴族に与えられる場所ではない。しかし、すぐとなりの西部を治める辺境伯に与えるわけにはいかない(国王派貴族ではあるが、領地が広大になりすぎるため)ため、広大な土地が直轄領のままとなっている。

そして、ルミナール地方には大きな湖……クロイツ湖(その名の通り十字の形をしている)があり、これを中心とした都ハイリヒは温泉とクロイツ湖を利用したリゾート地となっている。

これが二つ目の理由である。ルミナール地方はハイリヒだけでなく、領都テルセンなど多くがリゾート地となっている。それはダオルーク王家やダオルーク王国貴族はもちろん、ダオルーク王国の北部の諸国の貴族も訪れるほどである。つまり、並の貴族には渡せないということだ。

そして、三つ目。モンスターの質が高さである。この地の温泉は魔力に富んでいる。つまり、モンスターにも良い影響を与える。それを求めて集まったモンスターは場所を奪い合い強くなる。ということが繰り返されているため、自然とモンスターの質が上がっていった。


こんなところだろうか。

そして、現在アカツキがルミナール地方を治めるにあたって考えていることを説明しておこう。


当初、アカツキはテルセンだけを貰い受けるつもりであったが以上の事を知ったことによりルミナール地方全体を治める事を、決めた。

その上で行うこと。

それは領都テルセンの移動及び新たな領都──大公都の制定である。貰い受けることが決まる以前からアカツキはテルセンに目を付け、様々な内政案を考えていた。テルセンは老朽化が進み、このままでは碌な修復もできぬままに廃れていく。かといって無理に修復を進めても多額の費用がかかる。仮に自分自身アカツキが修復を行ったとしても領都としての発展は望めない。ならどうするか。迷った末に出て来たのがテルセンの移設案である。

テルセンから数百メートル行くとクロイツ湖へと着く。そして、テルセンの対岸側にはハイリヒがある。それならば思い切ってテルセンを移設させようというのが移設案だ。だが、せっかく都市同士が近くなるのにそれで良いのかと考えた結果、否と判断しアカツキの中で決定したのが新テルセンとハイリヒの融合都市……大公都の制定であった。

と、もっともらしい理由を述べてみたが、実際にはこれはほとんど後付けである。一番の理由は領内で最も大きな2つの街が離れているのが面倒ということである。


「それより」


アカツキはコップを片手にグランを見る。


「なんだ?」

「お前、ウチで働く気はないか?」

「はっ、大公家に仕えろってか?俺が?おもしれー冗談だな」

「冗談じゃねーよ、ガチの話だ」

「酔ってんのか?絶対にねーよ。俺は冒険者だ」

「であると同時に二児の父の愛妻家の孝行息子」

「おま」

「で、もうすぐ三人目が生まれる」

「……それで?」

「お前、いつまでこんな不安定な生活続ける気だ?」

「お前は俺に冒険者をやめろ、その上で自分に仕えろって、言ってんのか?」


グランはアカツキを睨みながら低い声で言う。


「お前も所詮は他と同じってことかよ」

「……なあ、お前なんか勘違いしてないか?」

「勘違いもなにも、俺が言ったこと間違ってるか?」

「別に俺は冒険者やめろなんて一言も言ってねぇぞ?」

「はぁ?」

「俺が不安定って言ってんのはあっちこっちふらふらする生活のことだよ。別に冒険者がどうなんて言ってない。それに冒険者で生活するにしても辺境なら安定してるしな。怪我とかしないかぎり」

「ますますわからん」

「怪我とか含めれば冒険者は不安定だけど、別にお前は平気だろ。

で、ウチで働く気無いかってのはウチの領に来いってことだな。個人的には仕えてもらいたいところではあるが。その方がこちらとしてはありがたいし」

「大公領で冒険者やれってか?

俺がダンジョン攻略してるの知ってるよな?」

「ああ、知ってる。さっきもその話してたしな。

『ダンジョンには未知が溢れている。冒険者だからこそその未知を冒険しなければならない』だったな」

「そんな事も言ったな」

「ああ。

さて、周りには何も聞こえないからはっきり言おうか」


アカツキはコップをテーブルに置くと居住まいを正した。その姿は大公爵としての姿だ。自然とグランも緊張する。


「これはもっと後に言う予定だったんだけど、さっき言っちまったからなぁ…だから今言う」


「グラン、俺と共に来い。

俺なら永遠にお前に未知の冒険をさせてやれる」


「普通に冒険者として来てもらってもいい。

だが、先にこっちの話を聞いてくれ。

お前が俺に着いてきてくれるという場合、俺はお前に未知と少しばかりの地位を与えられる」


「まあ、後者のはこちら側の都合なので省かせてもらう。

ここからは交渉だな。

まずは俺の領地について。場所はルミナール地方全域。つまり…」

「辺境と変わらないモンスター」

「そう。そして、王国一のリゾート地を持つ場所だ」

「はっきり言って興味は湧かないな。これが答えだ、もういいだろ」

「まあ、待てって。

本題はこっちだから」

「なんだよ」

「ダンジョン」

「なに?」

「ダンジョンは各地に存在する。だが、小さなものだ」

「そうだ。だからこそ大きなダンジョンには人があつまる」

「そして、ルミナール地方には」

「小さなダンジョンがいくつかあるだけだな。やっぱりこれで終わりだ」

「知られてる限りではな」

「なに?」

「見つけた。見つけたんだよ、ダンジョンを。それも超大型だ。お前が籠ってるやつと同じかそれ以上のやつを」

「嘘……じゃないんだな?」

「ああ、もちろんだ。ただし」

「……」

「そのダンジョンは封鎖する」

「なっ!」

「探索は領軍で行う」

「ふざけんな!ダンジョンの探索は誰でも自由に行えるはずだ!」

「落ち着け。最初はだ。しばらくすれば封鎖は解く。

ただし、上層10層がクリアされた時だ。つまり、いつになるかはわからない」

「なぜ、そんなことをする」

「慣例にならって……というと語弊があるかも知れないがそんなところだ」

「…」

「大型ダンジョンは基本的に上層10層の分布からランクが付けられる」

「そうだな」

「ただし、近年では大型ダンジョンは発見されていないから知られていないかも知れないが、大型と見られるダンジョンはまず軍が偵察することとなっている。それはお前の籠るダンジョンもそうだった」


「ここまで言えばわかるだろ」

「ああ。つまりお前は俺にそのダンジョンを攻略させようとしてるんだな」

「正確には誰よりも先にダンジョン攻略をする権利をあげようということだな」


「まあ、お前に着いてきてほしいのも本当だが、最も大きな理由は誰も踏み入れたことのない未知を見せたいということだな」


「さて、グラン。来てくれるか?」


「誰も踏み入れたことのない未知……よし、行ってやる」


「お、マジで。やったぜ」


「じゃあ、さっきは伏せてたけどお前の待遇を。

グラン・シャトーはグラン・ウェヌス・シャトーとなり大公付きの伯爵となり、シャトー家はシャトー伯爵家となる。

同時に大公家【明星の騎士団】団長とする」


「はぁ!?伯爵!?」

「ああ、よろしく頼むよ伯爵」


こうしてアカツキはさりげなーく、臣下を得た。




そして…近く大公付きの貴族が生まれるということの意味をアカツキは知ることとなる。

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