第21話ꙩ初戦
更新遅れてすいません!
難産でした……
『さあいよいよ本日一番注目の一戦が始まろうとしています!最年少候補VS五年首席!普通ならば勝負にもならないであろうこの戦い!しかし!候補者として推されたからにはなにかがあるはずです!』
こんな試合にも実況がつくのかとアカツキは思いながら刀の鯉口をきる。実に小さな予備動作。しかし、これだけでアカツキの戦闘準備は完了した。
先ほどまでとはガラリと印象が変わったアカツキ。抜身の刀のような静かで鋭い雰囲気を纏っている。
一方ジルも右手に剣を持ち、左手にはナイフを挟んで持っている。だが、その顔は若干ではあるが歪んでいる。
その理由は
「剣を抜け」
アカツキが刀を抜いていないことに対する苛立ちであった。通常、決闘であれば剣を抜いていないというのは不利以外のなにものでもない。そして、それを理解してなお抜かないというのは相手へ対する侮辱──お前など剣を抜く必要もないという意思表示に他ならない。
だが、アカツキはそれを完全に無視する。ただ静かに、山の如く佇み、呼吸をしている。
アカツキの黄金の眼は鋭くジルを射抜いていた。
「セレンソン。お前も来ていたのか」
「はい。先輩も見に来たんですか?」
観客席。
その一角に前年度の学内一位と二位が居た。
「ああ。何故か、見なければならない気がしてな」
「そうですか」
二人は話しながら試合の開始を待つ。
そして……
『それでは準備はよろしいでしょうか!』
『試合開始!』
第四試合。
アカツキの初戦が始まった。
「ハッ!」
ジルは左手に持ったナイフを投げる。そしてそれらは意思を持つかのようにアカツキの後ろに回ったり不意をつくように移動したりする。
さらにジルはナイフを投げる。
次のナイフは飛翔する途中で何十本へと分裂し、また様々な動きでアカツキを攻撃しようとする。
これが【千刃】。
ジルの2つ名の由来となった攻撃である。何本ものナイフに翻弄され、傷を負い、さらにはジルの攻撃もどうにかしなければならない。普通ならば厄介な戦い方である。
そう、普通であれば。
「《圧壊》」
アカツキが呟くと全てのナイフが金属の屑と化す。
それだけで、ジル。彼の得意とする戦術は瓦解した。ここまでに経過した時間は凡そ5秒。
これだけの僅かな時間で、アカツキはジルの戦術を潰した。
「くそ!」
その事実が認められないのかジルは剣を構えて突撃しようとする。
「っ!」
だが、それは途中で止めざるを得なかった。
アカツキが抜刀する。それを確認できた者は居たのだろうか。いや、居なかった。そう、学内一位である男ですらも見えたのはアカツキが刀を振り抜き、動きが止まったところだけであった。
神速の抜刀。
それはジルを傷付けることはなかったが、代わりにアカツキとジル。二人の間に一本の線──それは二人の力の隔たりを示し──をつけた。
「そこは越えないほうがいい。
それは死線。現世と黄泉を隔てる境界だからな」
アカツキは先ほどと大きく変わった口調で忠告を行う。
美しく力強い金眼がジルを射貫く。
「退け」
アカツキが静かに告げる。
それは降参しろという通告。
そして……
「退くわけねぇだろ!!」
最初で最後の逃走のチャンスであった。
ジルが死線を越える。
アカツキは僅かに目を見開くと刀を鞘に戻し、突っ込んでくるジルの剣を避け、腹に拳を叩き込み、剣を持つジルの腕を取ると背負投の要領で地面に叩きつけると同時に倒れたジルの顔の横にナイフを突き立てる。
「寝てろ《麻痺》」
その上で麻痺の魔法を強めに掛け意識を奪った。
『し、試合終了!
勝者、一年アカツキ・ユウキ!』
実況がアカツキの名を叫ぶ。
初戦が終わった。




