アルバム1
「○○さんって北中なんですか?」
そんな始まりだった気がする……。
「えっ!?…あっ、そうなんですよ。なんで知ってるんですか?」
涙袋をたくさんつくった笑顔で返した。
「この前、伊藤さんに聞いたんです!」
負けないくらいの笑顔で返してくれた。
「あー、そうなんですね。××さんも北中なんですか?」
今度は少し無愛想に。
「そうなんですよ。○○さんって今20歳ですよね?私18なんで、私が中1の時○○さん中3にいたんですかね?笑」
知らんがな。
「そうだと思います笑。それじゃお疲れ様です。」
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「こんな感じだったけ?」
そう言うと隣にいる女性は微笑んだ。
「ちゃんと覚えててくれてよかった。○○そういうの全然覚えてないんだもん。」
「まさかこうなるとは思ってなかったからね笑。」
「私もだよ。次に会ったとき○○が一緒に帰りませんか?って言ってくれなかったら、なにもなかったと思う」
「そうなの?」
「うん、だって私別に好きじゃなかったもん。」
「てっきり行為寄せてたから話しかけてきてくれたんだと思ったし、ドライブにも付き合ってくれたんだと思ってたよ」
「ほんと童貞野郎だな。お花畑すぎるし、自意識過剰。」
「××と毎日してるから童貞ではないかな笑」
「つまんない冗談……。」
今度はぶっきらぼうに返された。
たまに、こうして昔の事を話題にすることがある。ただの思い出話ではなく、昔の関係に戻って会話を始める。ボディタッチはもちろん、きちんと「さん」付けだ。
昔ごっこを始めるときは必ず、××が現状に満足していない証拠だ。マンネリ……。初めてその言葉を聞くまで××が自分といることに嫌気が差しているなんて、微塵も思わなかったし考えなかった。
最初は、こんな可愛い子が俺の彼女!?浮かれて毎日セックス三昧……。
都合のいい自分は、「それが嫌ならどうしてもっと早く言わないんだ!」
なんて言ってたくさんの涙を見てきた。
知らないだけでおそらくもっとたくさん苦しんでいたと思う。
客観視のできない人間をそれができる人間はどう見ているだろう。
幾度となくあった別れ話には決まって、彼女が苦しみ、涙ぐむ姿が目の前にあった。