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3.ユノの癇に障った発言

 今ティルカ様は何とおっしゃった?


 あたしが?


 大公の?


 愛妾……?


 あ・り・え・な・い・だ・ろ!!


「……誰があんな馬鹿大公の愛人になんかなるか」

「なんですって?」

「土下座されたって、あいつの愛妾になんかならないって言ったんです」

「あいつ、ってまさかお父様の事じゃないでしょうね?」


 あたしのことをティルカ様、否、ティルカはすさまじい形相で睨んできた。

 っは。それくらいで怯え去られると思ったら大間違い。ハーレイ様の腹黒笑顔に比べたら温いわ!!

 さっきの勘違い発言であたしの中で、ティルカは気に食わない女の子認定が下されたのであしからず。


「だったらなんだっていうんですか?」

「お父様を侮辱するなんて……!!許さないわ!」


 単純ファザコン娘決定。お父様大好きですーって全身で語っている。

 うん。こいつと友情を育むことは非常に難しい気がする。

 なんであたしが初対面のヒト相手にこんな敵意むき出しかって?

 あっちがものすっごい敵意を向けてきてるからだよ。あたしのこと知りもしないで、嫌ってくるような相手を好きになろう、という努力を放棄した、ってとってくれてもいい。

 いやあ。ニェンガやコミネとのやり取りを思い出すなあ。

 大公大好きっ子って、面倒くさい。ニェンガたちと違って、公女なんて立場だから、余計にその思いは強くなる。


「侮辱なんてしてませんよ。思ったことを言っただけで」

「それが不敬だと言っているのよ!レティ姉さま、どうしてこんなのがお父様の愛妾なの?!」

「人の話を聞かないヒトだね。あたしは、馬鹿大公の愛妾なんかじゃないっつってるでしょうが!」

「馬鹿、ですってええええええええ!!衛兵!!すぐにこの反逆者を牢に入れなさい!!」


 出たな、権力者発言。

 おあいにく様。暴言吐いて牢屋に行くようだったら、とっくにあたしは牢屋暮らしだよ!

 それ以前に、首が飛んでる可能性の方が高い。

 死亡フラグをことごとく裏切られてきたあたしの悪運が、この程度で揺らぐはずないでしょうが。

 ティルカの命令に従って部屋に乱入してきた衛兵は、あっさりレジーナさんたちに進路妨害されてるけど、何か?

 その衛兵たちも、反逆者と指さされているあたしを見て困惑顔をしている。レジーナさんたちの向こうで、足踏み状態になり無理矢理押し入ろうとはしていない。

 そりゃそうだ。一応彼らはあたしの護衛も兼ねているからね。いきなり護衛対象を捕まえろって命令されても、すんなり従えるわけがない。


「レジーナ!邪魔するなんて、どういうつもり?!」

「おやめなさい、ティルカ」


 レジーナさんに詰問するティルカを止めたのは、レティシア様だった。

 自分の邪魔をするレティシア様をティルカが驚いたように見た。


「レティ姉さま?!」

「まったく、ユウノも。お父様の愛妾扱いされて腹が立つのは分かるけれど、もう少し言葉を選びなさい。ハーレイやロダならいざ知らず、このは逆上するだけですのよ」

「人間、許容できることとできないことがあるんです」


 あいつの娘発言の次は愛妾?冗談じゃない。

 どっちもごめんだ!!さっさとあの馬鹿に撤回させようと狙っているのに、また行方くらましているんだよ。おかげで、ここでの生活をよぎなくさせられているんだから!

 さっさと戻ってこいアホ大公!!あんたがいないから、こんな勘違いをされるんじゃないか!!


「なんで、ハーレイ兄様やロダ姉さまがこの子の不敬を許すのよ!」

「ユウノは、お父様の新しい娘ですわ。本人は非常に嫌がっていますけれど」

「……こんなパッとしないのが?!」

「ティルカ、それハーレイの前で行ってごらんなさい。消されますわよ」

「なによ、それ」


 はっはっは。そこは激しく同意する。

 妹消しちゃまずいでしょ、ハーレイ様。


「あのあんぽんたんは、ミュウシャとユウノがいれば基本他はどうでもいいんですわ」

「ハーレイ様にも奥様とお子様いらっしゃいましたよね?」

「一応プレイムの奥方はいるけれど、まだ子供はいませんわね。ベタルの子どもは二人いますけれど、みなとっくに独立して城下に家庭を持っていますわ。側室も二人いますけれど、愛情があるかと言えば、微妙なところでしょうね」


 三人も奥方がいるのに、愛情を向けているのはミュウシャ様ってどうよ、それ。


「今さりげなく自分は除外しましたわね」

「何のことでしょう?」


 あんな怖いヒトのお気に入りになるつもりはないんだよ。余計な嫉妬を買うつもりはない。


「二人とも。お父様とハーレイ兄様に不敬すぎるわ。お二人はプレイムなのよ」

「それがどうかしまして?わたくしたちが遠慮しようとしまいと二人とも気に掛けることなんてしませんわ」

下手したてに出たら、どんどこ流されるだけだから絶対に嫌」


 レティシア様とあたしの言葉に、ティルカは肩をわななかせた。色白の顔が今は真っ赤だ。

 何か言いたいのに、頭に血が上りすぎて言葉にならないらしい。陸に挙げられた魚みたいに口をパクパクさせて、悔しさからか目には涙が溜まっている。

 しばらく、あたしたちを睨んでいたけれど、急に踵を返して部屋を飛び出していった。

 その背中をうんざりとしながら、あたしは見送った。


「もしかしなくても、プレイムって特別なのよ、て考えている輩ですね」

「お父様とハーレイに理想を持っている純粋培養の子どもが大きくなったと言った方が正しくてよ」


 レティシア様が、頭痛を抑えるように額を指先で抑えられた。


「無能ではないのだけれど、思い込んだらなかなか考えを曲げないところはユウノと似ているかもしれませんわ」


 単純な頑固者で悪うございました。

 ぷくり、と頬を膨らませると、レティシア様がおかしそうに笑われた。



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