名探偵登場!(四百文字お題小説)
沢木先生のお題に基づくお話です。
「巻き爪」をお借りしました。
雪の降りしきる一月のある日の朝、ある病院の院長が殺害された。
犯人は院長に相当な恨みがあったらしく院長の遺体は惨たらしい状態で発見された。
現場に急行した県警鑑識課はすぐに犯人の残した痕跡を探るべく調査を開始する。
するとそこへ院長夫人が雇った私立探偵がやって来た。
「犯人の見当はおおよそつきました」
捜査員達は色めき立った。
「何だって?」
捜査一課の刑事達は噛みつかんばかりに探偵に詰め寄った。
「犯人は自分の痕跡をしっかり残して行きました」
探偵が示したのはビニール袋に入った足の爪だった。
「犯人は酷い巻き爪に悩まされていたのです。被害者の院長は巻き爪ではない。しかもこの部屋は昨日の夜、業者が隅々まできれいに掃除している。よってこの爪を調べれば、犯人はすぐに特定できますよ」
探偵は得意満面で言った。すると刑事の一人が、
「院長は巻き爪治療の第一人者で、ここを訪れる患者の大半は巻き爪だよ」
と哀れむように言った。
間抜けな探偵でした。