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あくまで天使っ!  作者: 熊川修
プロローグ 編
17/51

下界への門 2


 シュアが監視塔へと戻って数分後。

 メイたちの目の前にそびえる天下の門。

 威圧的なまでの重厚さを纏っているその門に、ある変化が現れた。


 それは、小さな光。

 巨大な門の、ちょうど中心にスッと現れた、おそらくは小指の先よりも小さな光。


 豆粒のような光は、空に打ち上げられた花火が、その光の輪を広げていくかのように。

 放射状の直線で、中心から隅へ。やがて門全体へ電流が走るように進み、広がっていく。


 数本の光の線が2本に分かれ、それらがまた分かれ、さらにそれらが……それの繰り返し。


 門に施された、目を奪われるような細かく、精巧な彫り装飾。

 その溝を埋めるように、その立体的な絵画のふちをなぞるように、光線たちが走っていく。


 やがて、それらの光線が門全体……四角まで到達したとき。

 門を、ちょうど中心で縦一文字に切り裂いたかのように、鋭く、そして巨大でまばゆい光が放たれる。


 地響きのような音。門から発せられる光は一呼吸ごとに大きくなり、ついに門は開け放たれた。

 向こう側が見えぬほどにまばゆい……先ほどまで目の前にあった門のサイズと同じ大きさの、まさしく光の壁を形成して。


 光の向こう側は、下界。これが、天下の門。

 この世とあの世を繋ぐ、唯一の門。


 門が開く様子を、一部始終見つめていたメイとペン八。

 メイにとって、それは初めての光景ではない。

 しかし彼女の胸の内は弾んでいた。久々に下界へと降りられる喜び。

 それは未知の冒険へと繰り出す、若者の心境によく似ていて。


「シュア、さんきゅーっ。帰ってきたら、お土産に『パッキーチョコ』の空き箱あげるからね」


「――いらない」


「んじゃ……行くわよペン八! レッツ下界っ!」


 微笑ましいほどはしゃぎながら、メイは門の中、光の先へと飛び込んで行った。


「だからワシの名はペンディエール8世じゃと言って……って待て待て! 置いていくなというにっ!」


 光の中へ吸い込まれるように消えていったメイを追いかけ、慌ててペン八も門の向こう側へと飛び込む。


「――――――」


 2人の姿が光の中へと消え、見えなくなったのを確認してからシュアは門を閉めた。


 何気なく監視塔から出、シュアは門の前に立つ。

 いつも見慣れた景色。いつもと変わらぬ門の外見。


 だがシュアはその時、これまで感じたことの無かった不思議な違和感を覚えた。


「――風」


 一陣の風が、その白銀色の髪を踊らせる。


 天界にも、風が吹かないワケではない。

 だが下界と違い、天界のそれは穏やかで心地良いもの。

 このような、ともすれば悪寒を感じかねないような風は、今まで吹いたことが無かったはず。


「――――――」


 シュアの脳裏に、ここ最近天界下界問わず発生している問題……魂絡みのトラブルが思い浮かんだ。

 先ほどの珍しい風といい、何か異変でも起きているのか。

 それとも、これから何か起きようとしているのか、と。


 しかし、この場で考えても無駄なことだと思い、シュアはまた監視塔の中へと戻っていった。


 ただの思い過ごしであること。

 何も起きぬことを、ただ胸の中で願って。



 こうして。

 天界初の『悪魔で天使』な少女メイと、その使い魔ペン八は下界へと降り立った。


 彼女たちはどこへ行くのか。

 誰と出会うのか。


 行き着く先にきっとあるであろう、新たな出会い。


 悪魔としてのメイ。天使としてのメイ。


 行き着く先、彼女が見せるのはどちらとしての顔か。


 彼女らは歩み始めた。


 神々さえ分からぬ、その道の先へ。





 『プロローグ編』――Fin――



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