50年桜
とある時代のある国で、みんなは酔いしれ浮かれてた。
大人数の大所帯、有象無象の制服姿。
夢は必ず叶うよと、希望は幸せ呼ぶのよと、愛は地球を救うのと、嘘八百の丸儲け。
飛ぶ鳥落とす勢いの、田舎娘の出世頭。
あどけなかったその顔も、今じゃ別人あんた誰?
富と権力、地位と名声。こんな女に誰がした?
いいえ元々自分の意志よ。だけど正直自分でも、ここまで来るとは思わなかった。
テレビにラジオにドラマに映画、今じゃあちこち引っ張りだこ。
辛い事もあるけれど、ゴシップ、叩きは人気の証。空気もぎずぎずしてるけど、どこの職場もおんなじよ。
すぐに消えると言われたけれど、実際消えた娘いたけれど、今がピークと言われたけれど、ほうら見なさいまだいるわ。
だけど彼女ら悩んでた。若さはいずれは失われ、誰も彼もが去ってゆく。気付けば元のすかんぴん、田舎娘に逆戻り。
ああ、神様こんな私に、数奇な運命授けた訳は、夢は必ず叶うから?愛は地球を救うから?
多くの人に見守られ、一世風靡もしたけれど、時の流れは早すぎて、気付けばあれから五十年。
ファンもすっかり年老いて、ハゲに入れ歯に加齢臭、ドンキホーテの最上階に、昇る足腰ちときつい。
だけどこの日は行かねばならぬ。わしらのアイドル再結成。時間が何年経とうとも、わしらの愛に変わりはない。
わしの推しメン○ちゃんも、あいつの推しメン×ちゃんも、みんなばばあになっておろうが、そんなことにはおかまいなし。酸いも甘いも飲み込んだ、皺の数だけ愛がある。
思い出話に花が咲く。CD沢山買ったとか、何回ここに通ったとか、握手した手でオナニーしたとか、誰をオカズに抜いたとか。
乱痴気騒ぎに火がついて、つまみ出されもしたけれど、今はそんなに元気も無く、断末魔の様呻くばかり。
熱気ムンムン加齢臭ぷんぷん、じじいの呻きで溢れてる。生きてここから出られるか?ここで死ねれば本望か?
一気に照明落とされて、わしらは急に怖くなり、地獄の沙汰かと騒ぐ中、スポットライトが照らされた。
一縷の光が差し込むと、じじいの呻きはぴたりと止んで、光る頭が揺れている。
ペースメーカー響く舞台に、とうとう彼女ら現れた。夢にまで見たタータンチェック、たちまち歓声湧き上がる。
ノーブラの娘もいるけれど、垂れた乳でも愛嬌、愛嬌。
ポニーテールをプルンと揺らし、回る彼女らスカートひらり。たまにおむつも覗くけど、わしらにしてみりゃ純白のパンチラ。
会いたかったよ君たちに、会いたかったよ死ぬまでに。
RIVERが流れる三途の川が、桜の栞は濡れ落ち葉。
ヤンキーソウルだ暴力団。昔誰だか引退したっけ。
生死の境をローテーション、死後の世界じゃわしらはビギナー。
いっそこのまま急逝往生、いやいやまだまだEveryday健常者。
アキバの小さなビルの八階、劇場の二本の柱の奥に、涙の再会サプライズ、やっと咲いたよ50年桜が。




