元の世界に戻る前に、もう一度。その魔石は危険だと何度でも言います。
「ライラ殿。
こちらの一方的な召喚だったにも関わらず、
魔石について、知識や技術の共有に感謝する。
元の世界でゆっくり暮らしてくれ」
国王はライラにそう言った。
言葉の内容とは真逆に、ライラはぐるぐる巻きにされ、体の自由が許されなかった。
両脇には武装した兵士がいる。
ライラの、銀に近い水色の髪が揺れる。
「私を元の世界に戻す前に、もう一度。その魔石は危険だと何度でも言います」
縛られたライラは、最後の頼みとばかりにハッキリと言う。
「魔石 アダマイトは危険です。
美しい黄や緑で、
感情や肉体の回復を早めますが、毒物であるため、流通は慎重に。
普通のアダマイトですら、石から繊維を吸い込めば死にます。
魔石アダマイトは、依存性が強く過剰摂取をすると死にいたります。
冒険者や兵士たちに推奨するのはおやめくださいませ。
あれは、毒にもなるのです。
暗殺にだって使われます」
「はは。わかったわかった」
国王はライラの言い分を受け流す。
ライラが元いた世界に繋がる穴を魔術師が作り、両脇にいた兵士は丁寧にライラをそこへ放り込む。
「まったく。魔石アダマイトによる感情や肉体の回復能力は目を見張る物がある。
気をつければいいのだ、これを利用する手はない」
「国王陛下の言う通りでございます」
一同はその場で笑ったが、この時は誰もが気づいてなかった。
魔石アダマイトが、暗殺用の毒として使われることを。
国王が国内で魔石アダマイトを積極的に流通を促すと、
貴族間の毒殺が増えたのだ。
粉砕して紅茶や菓子に入れれば、誰も気づかない。
もちろんライラはこうならないよう、事前に王宮内の信頼のおける者に対策を伝え、手を打っていた。
それでもなお聞かなかった貴族が、大勢死んだ。
王族が無事だったとはいえ、政治の中核を担っていた貴族達が死に、国は疲弊した。
『アダマイトは、希望って意味があるから』
国王は、かつてライラがそう言っていたことを思い出す。
「ああ……ライラ殿……
そなたは、嫌な顔ひとつせず尽くしてくれたと言うのに……」
国王はその場で崩れ落ちる。
国王は、ライラに謝りたかった。
魔術師を使って何度召喚を試しても、ライラが呼び戻されることはなかった。




