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追放して良かったと思った冒険者パーティーのリーダーの話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/08/16

「追放だ!カルロス!お前なんていらない」



 俺は冒険者パーティー『自由の翼』のリーダーのケビン。

 今日、一人の男を追放した。


 ポーター兼雑用係のカルロスだ。新進気鋭の冒険者だそうだ。


「何故ですか?リーダー!僕はきちんと仕事をしましたよ!」


「はあ?まず何故勝手に料理に野草を入れた!狩りまでした!」

「だって、美味しくなりますから!」

「街で買った食材以外使うなと言っただろうが!何回言ったか!」


「だって、他のパーティーは現地で調達していますよ」

「あれはベテランだからいいのだ!お前はひよっ子だ!」


「だって・・・」

「お前は『だって』としか言えないのか!」


 こいつは働き者の馬鹿だ。こういった奴は初めにきちんと言わなければこいつのためにならない。



「・・・食材だって見張り中に取りに行きましたよ」

「荷物おいてどっかに行くんじゃねえ!」


「このパーティーの名前は『自由の翼』ですよ!」

「自由は義務があってこそ。はき違えるのではない!」


【お前は追放だ!】



 と解雇を宣言した。他のジョブなら大目に見るが奴は料理番もやる。

 料理をする者ともめたら即解雇が通常だ。

 何を入れられるか分からない。


 だが・・・


「リーダー、私も抜ける。言い過ぎだと思うわ」

「そうよ。カルロスの料理は美味い」

「リーダー、厳しすぎ」

「「「私たちも抜ける」」」


「ああ、そうか、勝手にしろ!カルロス装備は置いていけよな」


 結局、俺1人になった。


 噂が広まりパーティーメンバーを募集してもこない。


 変な噂が広まった。

 やれ、給金を払っていないとか。装備まで取られたとか。パーティーの金で買ったのに・・・


 カルロスは大げさに言う傾向が強いが、それでも、俺は目についたら注意をした。


「おい、カルロス、魔物はギルドの屠殺場に持っていけ。自分でやるな。資格が必要だろう?」

「また、僕はもう貴方のパーティーではないよ。自分で食べる分はいいって・・」

「毒があるかもしれないだろう?」

「それはたいした問題ではないね」


 いつも、たいした問題ではないといいやがる。




 元のメンバーは・・・『暴虐から逃れた者たちの連帯』なんて名前にしやがった。

 当てつけにもほどがある。


 カルロスはリーダーみたいな立ち位置だ。


「皆、僕が美味しい料理を作るから、頑張って!」

「「「はい」」」


 胃袋をつかんだ方の勝ちか・・・・ワイバーンまで狩っている。


 そんな評判の悪い俺の募集に一人来た。



「あの、パーティーメンバーの募集の張り紙を見て来ました・・・」

「あん?あ、すまない。面接をしよう」


「ロザリー、15歳なのです。こちらが黒猫のクロちゃんなのです」

「ニャア!」


「ほお、俺の評判を聞いているな。どうして来た?」

「はい、どこでも雇ってくれないのです」

「ニャン!」


「何が出来る?」

「雑用と簡単なお料理なのです!」

「ニャア!」


「猫は相棒か?」

「はい、唯一のお友達なのです」

 黒髪はボサボサ、眼鏡は分厚い・・・


 まあ、良い。


「雇おうか?ただし二分の一はキツいな。見習い期間は1日大銅貨8枚だ」

「そ、そんなにもらえるのですか?」


 大銅貨10枚で銀貨1枚だ。最下層の食事付の宿が銀貨の半分だから。

 この子、どんだけ貧乏な家から出てきたのか?



 案の上。


 飯は不味い。


「アワワワワ、お味はどうですか?」

「うん。中々いけるよ」


「やったーなのです」

「ニャン!」


 狩りもロザリーに荷物番において俺1人だ。

 ワイバーンで金貨10枚とか一度に稼いでいたが、魔アナグマにした。

 魔アナグマキングを倒せば金貨1枚か・・・・落ちぶれたな。



「いいか、ロザリー、これから狩りに行く。この場を絶対に離れるな」

「はいなのです。おトイレの時は・・・」

「ほい、スコップだ。荷物の目が届く位置でやれ」

「はいなのです」

「ミャア!」





 ☆☆☆十四時間後



「ロザリーいるか?」

「はいなのです!」


 彼女はいた。目を見開いている・・眠いのか?そうか、リヒトは寝ていたのだ。

 何故、気がつかなかったか?気づかせなかったのか?

 俺は数日間平気でも彼女は違う。



「クロちゃん。お休みなのです」

「うむ。料理は・・・」

「申訳ないのです。冷めてしまいました!」

「暖め直せば良いだろうよ。次からはもっと早く帰ってくる」


 グウウウウウ~と腹の音が彼女から聞こえた。


「何だ。お前は食べていないのか?」

「はいなのです」

「分かった。一緒に食べよう」


 まあ、何というか気の利いた事はしないがそれで十分だ。


 冒険者ギルドに行くと大騒ぎだ。

 カルロスのパーティーが大戦果をあげたそうだ。



「ワイパーン十羽だよ・・」

「すげえ、1日だ」


「皆、今日は僕からおごるよ」


「「「さすがカルロス!」」」


 俺は背を向けた。だが、ロザリーにも声をかけた。


「ロザリーさんも如何ですか?」


「ヒィ、いいのです」

「そんなことは言わずに、さあ、相談に乗りますよ」

「私は『自由の翼』なのです!」


 カルロスは俺をジィと見る。ニヤニヤして嫌な表情だ。


「行け。貧乏だろう」

「行かないのです・・・グスン」

「ニャア」


 それからロザリーはカルロスからスカウトを受けるようになった。


「行かないのです。役に立たないのです」


 何故か懸命に固辞をしている。

 理由は・・・まあ、冒険者は訳ありが多いから聞かないでおこう

 と思ったが、自分から話しやがった。


「苦手なのです。自信満々な人が・・弟みたいで嫌いなのです」

「そうか・・・」

「ニャア!」


 魔道師の家で才能豊かな弟に比べられていつも肩身の狭い思いをしていた。


「で、魔法は何が出来る?」

「攻撃魔法と防御魔法は出来ないのです。・・・お野菜やお肉を少し新鮮に保つぐらいです・・」


「それはすごいことだぜ。何故、気がつかない?」

「たった、3日、腐らすのを遅らせるだけなのです」

「冒険者にとって3日はすごいことなのだ・・・」


 そうか、金持ちの家なので重宝されなかったのか?

 なら・・・


「ロザリー、食材に魔法をかけろ。行動範囲が広がるぜ」

「はい、分かりました・・」

「ニャン!」



 彼女の特性が少しずつ分かって来た。

 攻撃、防御魔法は出来ないが。食べ物関係に関連する魔法系統らしい。


「何か、ロザリーが魔法をかけたからか美味くなったな」

「ヒィ、じゃあ、今までは・・」

「いや、美味しかったよ」

「良かったのです」


 腕もあがっているな。

 仲間に食べさせたら好評だった。


 だが、それがカルロスの目にとまった。



「ちょっと、冒険者料理番対決しようよ!」

「うちは参加しない」


「いいじゃん。料理対決だよ。それとも怖いの?」

「ああ、怖いさ。くだらないプライドで大事な仲間を傷つけられてもかなわない」



 断ったが、ロザリーは参加を申し出た。



 どちらが美味いか冒険者で決める。

 こちらは野菜スープを作ったが。


 カルロスの料理は豪華だった。


「「「カルロスのは美味い」」」

「それに比べてロザリーは・・・普通だな」

「いや、冒険者料理対決だよな?冒険の時に使う料理だからロザリーちゃんに一票だな」

「私も。ロザリーちゃんかな。カルロスのはホロホロ鳥で香辛料タップリでしょう?レストランに行けば食べられるわ」


 結果は100対3くらいでロザリーの負けだったが。


「三人も美味しいって言ってくれる人がいるのです。グスン」


 なんとまあ。どれだけ自信がないのか?

 いや、この姿勢は見習うべきだ。彼女は前向きなのだ。


 それから100人ぐらいに白い目で見られて3人くらいに同情される境遇まで持ち直した。


「ケビン、ちょっと来なさい」

「はい、ギルマス」


 こいつは、少しも仲裁しない。いつも片方の意見だけ聞く奴だ。

 まあ、子爵家出身で現場を知らないからこうなったのか?


「君のパーティーはC級に降格だ」

「分かりました」


「それとカルロス君に意見をするな。意見をすると言うのは軍師とギルド職員の仕事であって君の仕事ではない。肝に銘じなさい・・・」


「はい」


 うんたらかんたら始まった。

 なら、そうするか・・・



 その後、一人パーティーに入った。

 エスダという15歳の子でこれまた癖がある。

 ジト目の子だ。


「魔道師?炎限定?何故、うちに来たの?」

「炎しか使えないから・・・」



「・・・そうか、ここは森でのクエストがほとんどだからな・・」

 簡単に火事になる。


 ロザリーの相棒にした。


「先輩、お願いします・・」

「ヒィ、初めて後輩が出来たのです」


 拠点では二人は話さない。

 ただ、交代で休んだりトイレに行ったりした。



 その後、カルロスはますます有名になり。


 勇者パーティーが来た。

 専属の料理人が欲しいそうだ。


 ギルドで公開で審査が行われた。

 勇者パーティーは勇者殿を筆頭に3人だけ来ていた。服は豪華だが機能的だ。ポーターの服装もきちんとしている。S級は違うな。


 勇者様は黒髪か。転移勇者は強いが、この世界に疎い。修行期間が終わって討伐に行く感じか?


「出来ました!ホロホロ鳥と肉のスープと特製ソースのサラダです」


 しかし・・・


「君、これは食べられないよ。勇者様の意見は?」

「うん・・・これは城で食べる物だね。野営とは違う。ハンスの意見は?」

「ポーターとしては、これは無しですね・・・うわ。後方で豪華に食事だけをしていた貴族冒険者を思い出す・・・」


「なら、ハンスさんの意見を採用する」


 呆気なく落選した。


「ちょっと、待って下さい!少し時間を下さい。採れた魔物で調理します!」


「・・・現地調達か。勇者殿如何ですか?」

「そうだね。チャンスを与えよう」

「分かりました。少し待ちます」



 その時、エスダが現われた。


「勇者・・・これ食べる。野菜スープ・・・すごく美味しい」


 肝が据わっているな。後ろにロザリーがアワアワしている。


「まあ、余興だ。私が毒味役で食べるわ」


 女魔道士が一口啜ったら・・・質問攻めが始まった。


「味付けは?」

「ヒィ、塩です」

「お野菜は現地調達?」

「いえ、違います」

「何日持つと思う?」

「え~と、頑張って魔法を重ねてかけて今は一週間がやっとなのです」


「「「ハアアアアアーー」」」

「おい、この子、自分のすごさに気がつかないタイプだ」


「皆、この子の野菜スープ飲んでみて」


「「「美味い」」」


「勇者様、後で実証実験をしてこの子を採用したいのだけどどうですか?」

「うん。僕もリサリサの意見に同意する」

「聖女のローザにはない魔法だな」


 何か風向きが変わってきた。


「君、パーティーのリーダーは?」


 俺に風向きが来そうな時に・・・

 ギルマスからお呼びがかかった。


「おい、ケビン、カルロス君を助けなさい」

「はい、ギルマス」


 裏の調理室ではリヒトは自信喪失して当たり散らしていた。


 俺が狩ったアナグマキングを調理しているが・・・まだ、加工されていない。マイナーな食材だ。


「ちょっと、ハンナ、皿は用意した?」

「まだよ」

「早くしろよ!」


 俺はカルロスの解体を見ていたが・・・

 ギルマスに言われたので意見をしなかった。


 あれは毒抜きをしていない・・・たまたまカルロスのは上手くいっていたのだ。


「おい、おっさん!鍋をかき混ぜろ!それくらい言われないでもやれ」

「ほーい。カルロス君」


 俺だけは軽口を叩いて手伝った。元のパーティー員たちはキツそうだな。


「給仕はハンナとミリー、おい、サティは持つなよ。顔を考えろよ」


 うわ。ヒドいな。

 そして。


「お待たせしました。勇者様、ギルドで採れた素材で作りました。魔アナグマ鍋です」


 そこで俺は意見した。カルロスに意見はするなと言われたが、勇者様に進言するなとは言われていない。


「お待ち下さい。勇者様、私は調理の現場を見ましたが、これは毒抜きされていません」


「・・・本当?貴方の名誉にかけて?冒険者同士の足の引っ張り合いともとれるわ」

「はい、なら、私めが毒味いたします」


「ちょっと・・・」


 俺は強引に木のスプーンで一杯汁を啜った。


「ウウ・・・」

 目が回る。

 俺が駆け出しの時はこれで失敗した。だから若い者に失敗して欲しくなかった。


「リサリサ、回復魔法を!」

「はい、勇者様」

「ハンスさんはポーションを宿まで取ってきて」

「はい、ついでに寝床を用意しましょう」

「そうだね。あのテーブルをベッドにしよう。僕がやるよ」


 はは、さすが勇者様、きちんと指示を出している。そして、パーティ員は意見を言ってその時の最適解を導き出している。

 さすがだな。俺もこんな・・・


「ちょっと、待って下さい!ケビンの謀略ですよ」

「君、味見をしたの?なら調理場を調べるわ。ギルマス、調理場を封鎖しなさい!」


 何か声が聞こえてきたが。意識が無くなった。



 目が覚めた。豪華な天井だ。勇者パーティーの宿らしい。


「あの、ご迷惑をおかけしました」

「そのまま寝ていなさい。いいや、命を救ってくれた恩人だわ。何故、あんな危険な事をしたの?調理の途中に注意しなかったの?」


「そりゃ、ギルマスにカルロスには注意をするなと言われたもので・・」


「何となく分かるわ・・・そういった事、時々、起こるもの・・」


 リサリサさんも苦労しているのだな。


「でね。ロザリーちゃん。入って来なさい」

「はい、なのです」

「ニャア」


 ロザリー、おどおどしているな。


「ロザリーちゃん。スカウトしたいのだけども、移籍金払うわ。2年契約よ」

「いや、その前にロザリーの気持が大事です」


「わ、私は行きたくないのです!グスン・・・」

「ニャン?」


「そうか、なら追放だ!」


「ヒィ、何でなのです!気持が大事と言ったのです!」


「冒険者で勇者パーティーの誘いを断る奴は追放に決まっているだろう?」


「グスン、グスン」



「国のためとは言わない。お前は勇者パーティーのスキルを盗んで来い!これはリーダーとしての命令だ!。リサリサさん。移籍金はいらない。その子をお願いします」


「フフフフ、分かったわ。でも移籍金はもらないさい。決まりよ」


「ヒィ、クロちゃんは連れて行けないのです」

「ミャア!」


「それが理由かよ。クククククッ」


「グスン・・クロちゃんは大事なお友達なのです」


「いいさ、俺が面倒を見てあげる」


 顔がパアと明るくなった。いいな。責任感のある子だ。

 結局、調理不十分なのでポーターのハンスさんの助手になった。

 勇者パーティー(仮)だ。


「ハンスさん。ロザリーをよろしくお願いします」

「まるで嫁に出すみたいだな・・・まあ、リーダー分かったよ」


 それからは、ロザリーの親がやってきた。


「リーダーからも言って下さい。家門への復帰を認めても頑なに断るのですよ」

「ほお、優秀な弟さんがいるのでは?」

「グスン、王都の学園にいって中の上くらいの成績で絶望して引きこもっています」


「俺は元リーダーだから権限ないね・・それにプライベードだ」



 また、元パーティー員がやってきて懇願する。


「ケビン、私達、戻りたいわ・・・」

「無理だね。カルロスの料理でキャハウハハしていなさい」

「「「そんな」」」


 断った。やめた奴でもいいが、やめ方が悪い。

 カルロスはレストランを開いたが・・・


「僕の味を何で分からないのだよ!」


 上手くいっていないみたいだ。廃業してどっかに行った。

 失敗から学ばない奴だろうな・・・


「ミャア!」

「おい、クロ、少し暖めたミルクとお魚だ。食べたまえ」


「リーダー、ギルマスが呼んでいるよ。クロちゃんを連れて来い。言っていた」

「おう、クロが食べ終わったら行こうか。エスダが抱っこしろよ」


「うん」


 あれから2年経過した。ボチボチパーティーは大きくなった。


 ギルドの応接室に行くと知らない女がいた。

 魔法杖を持っているな。魔道着は上等だが使いこなれている。良い魔道師だ。


「ケビンとエスダ、座りなさい」

「はい、ギルマス」


 あれからギルマスは変わった。どっか辺境のギルドに行ったそうだ。

 今は引退冒険者の赤毛のサーラだ。


「ミャア!ミャア!」


 クロがエスダの手を離れ女魔道士の元に行く。

「キャ、キャ、クロちゃん。お久しぶりなのです」

「ロザリーちゃん。久しぶり・・」


 二人はキャキャ言いながら手を合せた。


 もしかして、ロザリー?


「リーダー、魔王討伐成功して凱旋前に寄ったのです。エへ」


「おい、いろいろ成長しすぎだろうが?!体のあちこちとか?」

「エへへへへ、会いたくて来たのです」

「何で口調は変わっていない!」


「ケビン、いろいろ不適切ですわね」


 初めて、追放して良かったと思う俺がいた。


最後までお読み頂き有難うございました。

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