表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

小六戀し

〈極端を極端せしめ寒さ去る 涙次〉


【i】


【魔】に* 斬首された筈の天神一享博士が、これもまた【魔】に依り、蘇生させられた。讀者に氣を付けて貰ひたいのは、博士の生命を奪つたのは、**「オールド・ウェイヴ【魔】」逹のコミューンであり、蘇らせたのは「ニュー・タイプ【魔】」逹だつた、と云ふ事だ。兩者の力は今や拮抗してゐる。これは、取りも直さず、「オールド・ウェイヴ【魔】」の殘党は、根強い潜在勢力を持つてゐた、と云ふ事だ。



* 當該シリーズ第27話參照。

** 當該シリーズ第53話參照。



【ii】


だが、「ニュー・タイプ【魔】」逹には、魔界軍と云ふ「奥の手」がある。博士の優秀な頭脳は、その軍師に就かしめんと云ふ、「ニュー・タイプ【魔】」逹の願ひに支へられ、慾されてゐたのだ。軍の(かなめ)は、軍師である。云ふなれば、「將」などカリスマさへあれば、お飾りであつて良い。



【iii】


博士は、「ニュー・タイプ【魔】」に依り、刃を突き付けられ、無理矢理に、魔界軍に協力し、軍師に就任する事を誓はせられてしまつた。だが、博士もさる者、この一點だけは譲れぬ、と云ふ条件を、「ニュー・タイプ【魔】」逹が呑む迄、梃子で動かしても無駄だ、と強情を張つた。その一點とは- * 天才猫テオのコピー、袴田小六を將軍の坐に就ける、と云ふ事だつた。猫の將軍- それで魔界軍の士氣は上がるのだらうか、と云ふ疑ひがあつたが、取り敢へず野良猫生活を送り、あちこちを放浪してゐるらしい小六探しを、「ニュー・タイプ【魔】」逹は請け合つた。



* 前シリーズ第199話參照。



【iv】


何故小六? 推測が許されるなら、それは、「ニュー・タイプ【魔】」逹が小六を探し当てる迄、猶豫期間が設けられるから、ではないか。だがそれは博士のみが知り得る事。たゞ、博士には、良心と云ふものが有り余る程殘つてゐた事だけは確かなのだつた。



【v】


然し、小六の行く方は杳として知れない。焦らされて怒つた「ニュー・タイプ【魔】」逹、テオを誘拐してその居場處を吐かせた方が早いと、或る日、テオが散歩中に彼の身を拉致した。



※※※※


〈鹽バターフランスなるパン後を引く我が眠りたる食慾こゝに 平手みき〉



【vi】


「知らぬものは、知らぬのだよ」-事實、テオの天才脳を持つてしても、小六の居場處は摑めなかつたのである。珍しく冷靜さを欠いた「ニュー・タイプ【魔】」逹は、テオにも刃を向けて、彼を小六の替はりの魔界軍將軍に就かせやうとした。勿論、生命を賭してゞも、テオはそれに諾はなかつた-



【vii】


「間一髪、間にあつたか-」カンテラ・じろさんが魔界に降りて來た。實は日頃、「ニュー・タイプ【魔】」逹のミステリアスさ(何しろ、カンテラの水晶玉の魔術を以てしても、その眞相は不可思議なヴェールに覆はれ、ブロックされてしまふ)に、彼らは業を煮やしてゐたところだつたのだ。こんな機會は滅多に訪れるものではない。カンテラ・じろさんは、「ニュー・タイプ【魔】」勢力を一掃せんと、白虎と、牧野の「龍」を連れて來てゐた-



【viii】


その結果、目茶苦茶に破壊された「ニュー・タイプ【魔】」逹の「領土」は、復興する迄には暫く時間が掛かりさうだつた。かうして、博士とテオは釈放され、人間界に帰る事となつた。博士「まるで惡い夢でも見てゐるやうだつた...」



【ix】


この仕事振りを見て、對立者である「オールド・ウェイヴ【魔】」逹のコミューンは、謝禮金を醵出して來た。果たして【魔】からカネを受け取つて良いものか- それには倫理上の問題が横たはつてゐさうだつたが、易々とカンテラ、そのカネを受け容れた。「ふんだくれるところからは、ふんだくるのさ」-それがカンテラの哲學なのは、云ふ迄もない。



【x】


人間界に戻つて來た彼ら、「ニュー・タイプ【魔】」撲滅、と云ふ事で、* 仲本堯佳=ルシフェルの率いる「魔界健全育成プロジェクト」からもカネを受け取つた。だが、こちらは「オールド・ウェイヴ【魔】」の出したカネより大分、少額だつた。** 多數の死者を出したからである。「ま、いゝさ。取るべきところからは、取つたからな」-カンテラ、髙笑ひを「プロジェクト」會議室に谺させた...



* 當該シリーズ第36話參照。

** 前シリーズ第196話參照。



【xi】


果たして「ニュー・タイプ【魔】」復活はあるのか、また、「オールド・ウェイヴ【魔】」逹の動向も氣になるところであつたが、それよりも、* 小六戀しのぴゆうちやんの「小六クン、何処カデマタ會ヘタライゝノニナ」と云ふ悲痛な願ひ、小六には届いたのであらうか?



* 當該シリーズ第26話參照。



※※※※


〈人去りて猫探しをる寓居春 涙次〉



PS: 後日談。小六はひよつこり、カンテラ事務所に顔を見せた。「小六クン!!」ぴゆうちやん大喜びである。彼は天神博士の許で飼はれる事になつたが、博士再度誘拐、の話を聴くと、直ぐにまた姿を晦ませてしまつた。嗚呼、哀れ小六。己れの業への責任感には、彼は人(?)一倍鋭敏なのだつた...



〈蛇足〉


またしても言葉

地球上には言語渦卷く

(手話含む)

きみに會へると

意氣込みを燃やすが

その實風呂にも入らない

言葉の使徒

嗤はゞ嗤へ

コロンは髙価い

何もかも俺の手からは

遠い

口説いてみやう

鳴かぬほとゝぎす

きみ口は固かつたつけ

内緒だ

皆々と同じく

俺だつて逃げたいんだ


-永田-


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ