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ハンティング        :約2000文字

作者: 雉白書屋

 ん? 今、聞こえませんでしたか? 

 え? 何がって? ほら、あいつらの声ですよ。『にゃあー』だの『まーお』だの『ぎゃー』なんて、騒がしいあれですよ。そうそう、小さいやつほどよく鳴くんですよねえ。

 ははは、空耳ですかね。でも、懐かしいなあ……。私の子供の頃なんか、しょっちゅうあいつらで遊んだものですよ。草むらを掻き分けて、塀の裏や物置の下を覗き込んで探し回ってね。


 捕まえるときは、まず首の後ろをぱっと掴むんです。あそこを押さえると、あいつら不思議と大人しくなりますからね。で、そのまま塀や岩に向かって力いっぱい投げつけるんですよ。鈍い音がして、頭がぱかっと割れてね。しばらくぴくぴく痙攣したのち、動かなくなるんです。あれは実に愉快でしたねえ。


 物陰に隠れて見ていると、たまに仲間が死骸に寄ってくるんですよ。匂いにつられたんですかねえ、それとも探しに来たのか。ああ、小さいやつに寄ってくるのは、たぶん親なんでしょうねえ。もう、ははは、ぎゃんぎゃん鳴くんですよ。うるさいのなんの。

 だから、すかさず捕まえるんですけど、親はまたよく暴れるんですよねえ。引っ掻くわ噛みつこうとするわで、もう大変。

 でも当時、近所に太鼓や三味線を作っている職人がいましてね。あいつらを殺して持っていくと、駄賃をくれるんですよ。だから、絶対に逃がしてやるもんかって、そりゃあもう熱心に殺したもんですよ。


 なんでも、皮を剥いで使うらしいですよ。あいつらの皮は音がいいそうでねえ。だから少しでも傷がついてると「こりゃ使いもんにならねえよ」なんて言われちゃってね。がっかり。

 それで、いかに皮を傷つけずに殺すかって、子供ながらに工夫を覚えていくんですねえ。


 捕まえたらまず、ぱっと空中へ放り投げるんです。で、落ちてくるところを足を掴んで、そのまま思いっきり振り回すんですよ。遠心力を利用して、ぐ~るぐるとね。数分も回していると腕がだるくなってくるんですが、そのうちあいつら、げえげえ吐き始めるんですよ。それが服や体にかかると気分が萎えちゃうんですが、そこが合図なんです。思いきり地面へ頭から叩きつけるんですよ。

 必要なのは胴体の皮ですから、頭は割っても構わないんです。何度か叩きつけて、だらんと完全に動かなくなったら地面に置いて、靴の踵で頭を踏みつけてやるんです。ゴリッ、ゴリゴリッ、パキッ、ボキッと骨が砕ける音と感触、あれが楽しいんですよねえ。

 ただ、裸足でやるとたまに怪我しちゃうんですよねえ。顔から飛び出した骨が刺さったりして。クラスメイトの少年が「痛い痛い!」って泣きながらその場でぴょんぴょん跳ねてましたよ。


 ああ、毒餌って手もありましたねえ。ホームセンターで安く売っていて、子供の小遣いでも買えたんですよ。なんて名前だったかなあ。赤いパッケージのやつが抜群に効くんです。食べて数分もすると、げえげえ血の混じったゲロを吐き始めるんですよ。尻からも、ぶびぶばびびっと赤い泡を弾けさせながら垂れ流すんです。その跡を辿れば、どこに隠れていようと簡単に見つけられるんですよねえ。

 吐いた毒餌の中に、原型が残っていることもあるんですが、もったいないからって再利用しようとしても、あいつら案外ずる賢くてね。もう引っかからないんですよねえ。生意気に学習能力があるんですよ。

 それに意外と感情豊かというか、反応が多彩でねえ。だから、木に縄で括りつけて目玉をほじくり出してみたり、ションベンを飲ませたり、ダーツの的にしたり……。楽しい遊びを次々と思いついて、結局、皮が使い物にならなくなることもしょっちゅうあったなあ。


 いやあ、たくさん狩りましたねえ。百か、二百か……もう正確な数は覚えてないですねえ。ふふふ。でも私が成人する頃には、あいつらてんで見なくなりましたし、見かけても首輪付きの誰かに飼われているものばかりなんですよねえ。首輪がなくても、『地域のみんなで飼ってます』みたいな扱いでね。だから、体がうずいても手を出せなくてねえ。それに、保護法なんてものまでできちゃいましたから。いやあ、時代の流れってやつですねえ。つらいもんです。


 あの職人さん、今どうしてるんでしょうかねえ。きっと困ってるだろうなあ。まだ元気にしてるんですかねえ。ああ、久々にあいつら捕まえたいなあ……。


 え? へえ、そうなんですか。今でもあいつら、縄張り争いなんかやっているんですか。相変わらずですねえ。……ほう、そのどさくさに紛れて、こっちに連れてくるんですか。それはいいですねえ。いやあ、また数が増えるといいですねえ。まあ、野に放したりしないかあ。

 ……へえ、来週、原産地で狩りを? いやあ、いいですなあ。え? ええ、ぜひご一緒させてください。休みを取って行きますよ。ちょうど、ローンで新しい宇宙船を買ったところですしねえ。ふふふ。いやあ、楽しみだなあ……。

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