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初めての街とギルドの扉

森を抜けるのに、丸一日かかった。


途中、何度かスライムのような魔物に遭遇したが、ゴブリンとの死闘を経験したタクミにとっては、もはや脅威ではなかった。足元に小さな落とし穴を作って動きを封じ、石のつぶてを生成して叩き潰す。戦闘を重ねるごとに、物質創造スキルの応用力が格段に上がっていくのを実感できた。レベルも3まで上がっていた。


やがて、木々の切れ間から、陽光を反射して輝く石造りの城壁が見えてきた。


「あれが…街か!」


安堵感から、思わず足が速まる。

街の入り口には、槍を持った屈強な門兵が二人立っていた。タクミの姿を認めると、鋭い視線が注がれる。服装は森で汚れてボロボロ、手には自作の石槍。どう見ても怪しい。


「止まれ!何者だ!」

「旅の者です。森で道に迷ってしまいまして…」


タクミは正直に答える。門兵の一人が、タクミの全身をじろじろと値踏みするように見た。


「その槍…お前、冒険者か?にしては随分と貧相な装備だな」

「ええと、まあ…そんなところです」


曖昧に答えると、門兵は意外にもあっさりと道を開けてくれた。

「身分証は持っているか?なければギルドで登録してこい。この街――商業都市アークライトでは、身分証なしでの長期滞在は認められていない」

「ギルド…ですか?」

「ああ、冒険者ギルドだ。あのデカい建物がそうだ。そこで依頼を受けたり、魔物の素材を換金したりできる。お前みたいな奴にはうってつけだろう」


門兵が指差す先には、街の中でも一際大きく、活気に満ちた建物があった。これまたゲームで見たような展開に、タクミは心の中でガッツポーズをする。


礼を言って門をくぐると、そこは別世界だった。

石畳の道を行き交う、様々な人種。獣の耳を持つ獣人、小柄で屈強なドワーフ、すらりとしたエルフ。活気のある市場では、見たこともない果物や、魔物の燻製肉などが売られている。全てが新鮮で、タクミの心を躍らせた。


(本当に、来てよかった…!)


色褪せた世界とは違う、生命力に満ち溢れた光景。

タクミはしばらくその喧騒を楽しんだ後、目的の冒険者ギルドへと向かった。


ギルドの中は、酒と汗の匂いが混じり合った熱気に包まれていた。屈強な戦士たちが酒を酌み交わし、軽装の斥候たちが依頼ボードを眺めている。まさにファンタジーの世界そのものだ。


タクミは少し気圧されながらも、受付カウンターへと進んだ。カウンターの向こうには、快活そうな笑顔が魅力的な、茶髪のポニーテールの女性が座っていた。


「はい、こんにちは!ご用件はなんでしょう?」

「あの、冒険者登録をしたいのですが」

「新規登録ですね!はい、こちらの水晶に手を触れてください。魔力と適性を簡易的に判定しますので」


受付嬢の女性――名札には「リリア」と書かれている――に促され、タクミは水晶玉にそっと手を置いた。水晶が淡い光を放ち、リリアの前の書類に何かが自動的に書き込まれていく。


「えっ…!?」


リリアが驚きの声を上げた。彼女が見つめる書類を覗き込むと、そこには信じられない数値が記されていた。


【魔力量:580 (一般成人平均:50) 】

【適性:創造系魔法(Sランク)】


「ま、魔力量580!?しかも創造系の適性Sランクですって!?あ、あなた、一体何者なんですか!?」


リリアの大声に、ギルド中の視線が一斉にタクミに突き刺さる。しまった、と思ったがもう遅い。屈強な冒険者たちが、興味と嫉妬の入り混じった目でこちらを見ている。


「い、いや、俺にもよく分からないんです…」

「と、とにかく!こ、こちらが登録証になります!Fランクからのスタートですが、タクミ様ならすぐに昇格できますよ!」


リリアは興奮冷めやらぬ様子で、一枚の銅のプレートを渡してきた。それがタクミの身分証となる冒険者カードだった。


「あの、早速ですが、何か初心者向けの依頼はありますか?できれば、今日泊まる宿代だけでも稼ぎたいのですが…」

「それでしたら、ちょうどいいのがありますよ!『薬草採取』の依頼です。ギルド周辺に自生している『月光草』を10本集めてくるだけの簡単な依頼です。報酬は銅貨30枚になります」


銅貨30枚。この世界の貨幣価値はまだ分からないが、宿代くらいにはなるだろう。


「分かりました。その依頼、受けさせてもらいます」

「はい、承りました!こちらが依頼書です。頑張ってくださいね、期待の新人さん!」


リリアにウインクされ、タクミは少し照れながらもギルドを後にした。背中に突き刺さる視線が痛いが、今は気にしていられない。


薬草採取。一見、地味な依頼だ。

だが、タクミの頭の中では、ある計画が閃いていた。


(月光草の構造を一度理解してしまえば…あとは俺のスキルで「創造」すればいいんじゃないか?)


もしそれが可能なら、依頼は一瞬で終わる。そして、このスキルの有用性は、計り知れないものになるだろう。


タクミは依頼書に描かれた月光草の絵を頼りに、街の外へと再び足を踏み出した。彼のユニークスキルが、この世界で初めて「生産」という形で火を噴こうとしていた。

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