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【第66話:カルヴィリスは準備をする】

 午後早くに宿まで戻ったノア達は、荷物を部屋に行って片付けるのだった。

「これ使うといいわ。昔使ってたバッグだけど、今はもうちょっといい奴使ってるからあげる」

そう言ってカルヴィリスが腰のベルポーチから取り出したのは、やはりベルトポーチ。

魔導圧縮技術による収納スペース圧縮である。

時空魔法の応用で作られるもので、効果だが非常に便利である。

魔力は加工した魔石でもいいが、生活魔法程度の魔力で動くので使いでがある。

取り出しと収納がセットで動き、種類や量を問わず一括の出し入れで1セットだ。

このセットが多いものは高価で、天井知らずである。

ノアに渡したものは5セット入るので、それなりに高価である。

カルヴィリスのは5セットの他に多重圧縮でさらに10セット分入るのだ。

多重圧縮分は別途解凍して5セット単位で入れ替えるのだ。

これは時空魔法が使える人間でないと使えない。

「ありがとう?どうやって使うの?」

にゅっと取り出したのを見ていたので、ただのバッグでなはいと思い聞くノア。

「これは5セットまで入るから、5回収納できるのね先ず」

詳しい使い方や収納方法、取り出し方などを教えるカルヴィリス。

ノアはこう見えてお覚えるのは早く優秀なのだった。

「そうそう、できたわね」

すぐに使いこなしてみせるノア。

「おぉ!にゅうって出てくる」

ノアは服を畳んで1セット上から下までを下着付きでくるっと丸め、それを今日買った分4回収納した。

「出す時と収納するときに魔力を使うのよ。今はセットしてある魔石で動いている」

加工魔石は雑貨屋とかハンターオフィスで手に入るとも教えるのだった。

ただハンターオフィスは登録が必要だし、利用履歴が残るからとも忠告。

「なるほど、わたしのような逃亡者にはふむきね」

ノアは最近カルヴィリスからも言葉を教わっていて、なかなか教養もついてきていた。

一度教えると忘れないし、理解力もずば抜けていた。

「魔力が切れちゃうと収納出来ないし、取り出せなくなるわ。気をつけてね」

残量は加工魔石にゲージがあり、視えるようになている。

そうして宿にしまった風にしながら、荷物は全て身につけて再度町を見て回るのであった。

情報収集と観光に繰り出したのだ。




 観光しながら町を一通り見て回ると、晩ごはんにいい時間となり宿で食事を取り、入浴するのだった。

今日もノアはカルヴィリスに頭を洗われて、泣きそうになるのであった。

体は自分で洗えるようになったノアもしょもしょとスポンジで体を洗っている。

宿のお風呂は共有だが、部屋ごとの貸し切りなので二人なら十分広く使えた。

洗い場で四苦八苦しながら自分を洗うノアを、浴槽から観察するカルヴィリス。

背中以外は上手に洗えてるなと安心。

「背中流してあげるよ、こっちきてノア」

泡だらけのままノアが歩いてくるとペタリと座り背中を向ける。

スポンジを受け取ったカルヴィリスがノアの背中を丁寧に洗う。

くすぐったいのか時々身を捩るノアだが、抵抗するとひどい目にあうと前回学んでいた。

「はいおしまい」

そう言って自分も体を洗うため立ち上がるカルヴィリス。

カルヴィリスは実は結構スタイルが良く、女性らしい体つきをしている。

移動中にあちこち揺れてノアは物珍しそうに見るのだった。

自分以外の裸をあまり見たことがなかったノアであった。

身体の揺れ方と動きが、自分と違うと興味がわくのだ。

「カルヴィリスはいつもは揺れないのに、裸だとあちこち揺れるね」

「変なとこみないでよ」

返事と一緒にシャワーをかけられてわっぷとなるノア。

頭から濡らされて、そのまま捕まり頭も洗われるのであった。

「まってまって、1回ながしてからするから!」

ノアの抵抗も虚しく、泡だらけのまま取り押さえられるのであった。

ノアの髪は長いので、洗うのも一仕事なのだ。




 夜になり、最近寝付きがよくなったノアを寝かしつけるカルヴィリス。

(だんだんうなされなくなってきた。良い傾向なんだろうな)

最近のノアは一度寝ると朝まで起きることはないし、うなされる事も少なくなった。

時計を確認したカルヴィリスは、窓によりカーテンの端から外を確認した。

(まだいるわね。あれはギルドとは関係なさそう。おそらくセルミアの手のものね)

日中から付いてきた尾行は宿に付いても、外の通りに陣取っていた。

(同じ場所にいたら目立つでしょうに)

落第点をつけたカルヴィリスは着替え始める。

 ここのところ戦闘しないのと、ノアと一緒で安心出来るので武装は少な目にしていた。

今夜はさすがにそうはいかず、第一種戦闘配備だ。

鎧下の上には薄いチェインメイルを着込む。

黒く塗られ光を反射せず、輪が小さく音も少なくなる工夫がされている。

斥候兵用であった。

暗殺者なら身軽さを取るのだが、カルヴィリスは戦士として準備する。

チェインは腰までありそれなりの重さだが、格段に防御が上がる。

その上からいつもの巡礼服をはおり、革ベルトを閉める。

ベルトにはポーチが2つと、投げナイフが2本仕込んである。

ポーチにも武器は入っていた。

 これで普段なら十分だが、今日は小手と脛当付き革ブーツも履く。

それぞれ投げナイフや絞殺用ワイヤーが仕込まれている。

ブーツには短剣と言えるほどの刃渡りが仕舞われる。

最後に腰に片手持ちのシャムシールを釣り、完了だ。

フードをかぶり、ヴェールで口元を隠す。

すっかり戦闘準備を終えたカルヴィリスはそっと部屋を出るのであった。

ノアは気づかず眠り続けていた。








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