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【第47話:ラウマとノア】

セルミアの他にも数人の影に生きる者が視界をすぎた。

その中にはダウスレムやカルヴィリスの姿が見えた。

星の上にあまねく広がった第二の世界の、ありとあらゆる場所で彼らは争った。

そうした戦いはやがて2極に収束していった。

東と西に大きな勢力が出来上がった。

東側にはセルミアがいた。

そしてその中央で2つの大きな光が生まれる。

なにかの兵器であろうか、その光は衝撃波を世界へ広げていった。

光が落ち着くと、そこには巨大な山脈が現れた。

その山頂に白銀の竜が降り立つ。

「あ、またシルヴァリア?だ?」

『この個体はシルヴァリアですね。最初はたくさん居ましたがこの時点では一匹でした』

視界のなかではシルヴァリアが世界中の兵士達を焼き払っていった。

焼かれた人は影獣となり消えていくのだ。

銀竜の殲滅力は高く、戦争で疲弊した世界を焼き尽くすにはそれほど時間がいらなかった。

また場面は切り替わり、新しい世界を映し出した。

それは3度目の世界。

現在の世界だ。

シルヴァリアは先程の山脈に留まり、時々起こる戦争に介入し影獣達の広がりを抑えていた。

『この頃表立って動けなくなった影達は世界の闇の奥に消えていったのでした』

あの作られた山脈が雪月山脈だったのか、とアミュアは理解したのだった。

次の場面に移る。

それは先程までいたラウマの暗黒空間であった。

ここからはアミュアも知っている映像。

ダウスレムとユア・アミュアの戦い。

ユアの右手の力でダウスレムが滅びる場面だ。

ユア・アミュアとダウスレムの超常的な戦闘が第三者視点で見える。

アミュアは自分を外から見ているのだが、ひまわりTシャツしか着ていないので、角度によって色々見えてはならぬものが見え、そちらが気になった。

「銀色アミュアはちいさかったんだな」

「今はアミュアの方が大きいです!」

「同じくらいだよ」

『もう少しで終わるので、二人共静かにしましょうね』

ラウマの仲裁でやっと黙る二人。

そしてペルクールの雷が放たれて、世界は金色に染まった。

光が収まるとまた暗転し、元の視界に戻るのであった。


 一歩も動いていないが、とても長い旅をしてきた気分を味わう二人。

手を離して立っているラウマには表情がない。

どこを見ているとも言えない姿であった。

『あの光の影響で、今いるこの空間は一度無くなってしまいました』

はっと二人がラウマを見る。

『このときノアがこぼれ落ち、わたくしの手を離れてしまったのです』

衝撃を受けふるえるノア。

『実はもう少し前にも同じような衝撃に、この空間が襲われたことがあります。

その時も一回この空間は無くなり、アミュアがあの泉の祠に取り残されたのです』

アミュアをみてにっこりするラウマ。

『そして長い年月貴方を救い戻したいと、色々試して届くことがなかったのです』

アミュアは改めて意味が解りゾッとした。

(わたしはそもそも存在していなかった?強い衝撃で分かたれただけの影だった?)

青ざめたアミュアは恐ろしくなり、震えながらラウマを見つめた。

『そうして困っているとユアが現れ、貴方に名前をくれたのですね』

それ以上はアミュアになにも話さないラウマ。

次はノアを見つめてにっこり話し出す。

『そしてノア。貴方はわたくしの失われた半身の追憶から生み出しました』

とても長き孤独な時間は、女神ラウマをして、失われし双子のノアを求めせしめたのだ。

『そしてわたくしは長い孤独を貴方と過ごしたのですよ?ノア』

ノアもまたショックを受ける。

では、自分は女神ノアですらなく、もちろん人でもないのだと。

影獣ですらないのだと。

作られたのだと。


 しばらくの沈黙がそれぞれの思考をまとめた頃。

見計らうようにラウマは、二人にまた話し出すのだった。

『貴方達の生まれた経緯は理解できたかと思います』

左右にいるノアとアミュア、双方を視界にいれるためそっと後ろにさがるラウマ。

アミュアにはその動きが見捨てられるように感じで悲しみを増す。

ノアは思考に囚われ気づきもしなかった。

そうして双方を視界にいれるラウマが続ける。

『どうですか?二人共ここへ戻ってきませんか?一人で世界と対するのは辛かったでしょう?この空間はわたくしの許可なく出入りができないようになっております。』

言葉の意味を理解したノアが叫んだ。

「いやだ!ノアはノアでいる」

叩きつけるような否定。

それがどれだけの恐怖と否定か。

ノアは震えていた。

やっと与えられた答えがそれだと認められずに。

『あなたを損なうという意味では無いのですよ?』

ラウマの声はもう届かない。

ノアは黙って扉を開け去った。

そこに扉は無いのだが、アミュアにはそう見えたのだった。

その深淵の空間にただただ沈黙が残った。

アミュアの唇が切なそうに言葉をもらす。

「ラウマさま‥‥」

なんだか急にラウマ様が小さい子供に見えて、アミュアの胸は締め付けられる。

ラウマは答えず下を向いている。

そこには癒やし手の女神たるラウマは見えず、ただ手を払いのけられ傷ついたような女の子が居たのだった。

アミュアは考える。

アミュアは今考えるべきことは何か、心をさぐる。

(これはラウマさまの望む答えをただ言えばいいわけではない)

とても複雑な答えをアミュアは導いたのだった。

そのすみれ色の瞳を、同じすみれ色の少しだけ違うラウマの目に向けて。

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