表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/92

【第37話:なんだかかわいいな】

 ヴァルディア家に泊まる時は、ユアはいつもカーニャの部屋で一緒に寝る。

カーニャは最初嫌がって別の部屋を準備すると頑張ったが、今では何も言わずここへ通すのだ。

沢山持っている夜着を借りたり、化粧を教わったりもする。

カーニャのベッドはミーナのとおそろいでとても大きな天蓋付きなので、二人で寝ても余裕があるのだ。

今はカーニャがお風呂に行ってるので、一人で寝室の続き部屋でソファに座ってお茶を飲んでいた。

ヴァルディア家御用達の紅茶はとても香りがよく、リラックスできるのだった。

 ユアは先日の戦いを思い出していた。

(スヴァイレクといった、あの影獣。どこまで話を信じていいのかな?)

戦闘の初期にまるでユアを煽るように告げたのだ。


ーーーお前の母親を殺したのは俺だ。

 抑えきれない感情が、右手の剣に流れ込みその輝きを増した。


ーーーあの村を襲ったのは、お前を殺すためだった。

 全身にまわるラウマの異能、身体強化が燃えるように体を熱くした。


その後の戦闘をよく覚えていない。

長年研鑽した剣技だけで動いていたのだと思われる。

最後は上空にいた別の敵から、すごい攻撃で落とされたので、逃がしてしまった。

その時のユアは心がはち切れそうで、何も考えられなかったのだった。

(今冷静になって考えれば、どう見ても誘いだった)

きゅっとそれでも眉が寄ってしまうのは、あまりにも酷い情報だったからだ。

それだけは聞きたくないとさえ思えた情報。

 ユアは母親の死を見ていない。

どこかで生きているとは考えないが、未だリアルに死を感じられずにいた。

それを受け入れてはいるのだが。

そこにその情報。

間違いなく死んだのだぞ、と。

それだけでも辛かった、怒りにふるえた。


ーーーさすが手強いなペルクールの使徒、ラドヴィスの娘。

(あたしの、ううんおとうさんの力を知っていて、村を襲った?迷わせるための嘘?)

ユアの心はぐちゃぐちゃと整理がつかないが、感情は落ち着いていた。

(こうゆう情報を整理するのはカーニャが得意だよなあ。あたしは苦手だ)

カーニャに相談しようか、しても仕方ない事かと悩んでもいた。

そこにカーニャが戻り、ユアもお風呂に行くこととなった。




カーニャは髪を乾かしながら、考え事をしている。

生活魔法で温風を出し、ゆっくりと髪をすいていく。

(ミーナの決心は堅そう。恐らく適正も高い。)

心を占めるのはここの所一つの事だ。

それはミーナの魔法適正にも強くかかわる。

12才で真実を知ってから、誰にも相談したことがない事。

まだ子供だった自分には受け入れ難く、また誰にも話せない姉妹の秘密であった。

それ以来両親とはまともに顔を合わせていない。

憎しみがあるとかそういうことではなかった。

秘密を持っていた両親をそのまま受け入れられないのだった。

断片的に思い出される記憶。


ーーーこの子に健やかな日々を授けてほしい。願いをこめて名を贈る「カーニャ」と。

母親のノートに書いてあった言葉だ。

カーニャとは「希望」という意味を持つ。

(単純に嬉しかったのを覚えているわ)

だからこそその前後の記述に違和感を覚え、探るように読み込んだのだ。

隠してあった母のノートを。

末尾にはこうも書かれていた。


ーーー二人目のこの子はとても儚い。どうか人並な幸せを受け取ってほしい。願いをこめて名を贈る「ミーナ」と。

ミーナは「未来」という意味だ。

儚いミーナにふさわしく美しい名付けだと、涙ぐむほど嬉しかった。

だからこそ確認せずにいられなかった。

問い詰めたのだ、両親を。

当時飛び級に飛び級を重ね、大学に進学が決まっていたカーニャである。

戦術情報処理や組織心理学も得意で、論理的な推論が可能であった。


ーーー私たちはあなた達の子供じゃないの?!

そこには姉妹の誕生にかかわる情報が散見されたのだ。

一般的な出産ではあり得ない内容だった。

優秀なカーニャは本人たちが隠していても、家人や他者から情報を得てほぼ正解と言えるものを見つけていた。

二人がとある特殊な技術の研究者であったと。


そこまで考えたころには髪は乾かし終わり、ガウンから夜着に着替え終わっていた。

丁度ユアが戻ったので、悩むのは一旦棚上げにした。

カーニャにとってもユアと過ごす夜は、掛け替えのない楽しい時間となっているのだ。

「ユア髪かわかしてあげる」

「うん、拭きながら来たからほとんど乾いたけどね!」

「お行儀わるいわよ。今度躾けてあげますからね!」

「アミュアみたいなこといわないで~」

そう言いながら座ったユアの髪に櫛を入れながら、温風を当てるのだった。

(ふふふ、なんだか大きな妹が出来たみたい)

ミーナにはない愛らしさがユアにはある。

宣言通りすぐに髪は乾くのだった。

(ユアの髪はとても柔らかいのに腰が強いわ)

にこにこしながらそのつやつやな手触りを堪能する。

「ユアって髪伸ばしたことないの?」

乾いたかな?と髪に触っていたユアが振り向く。

綺麗な茶髪もくるりと回るのだった。

「いまくらいが一番長いかも??」

ユアの髪は肩に触れる程度だ。

確かに出会った頃より大分伸びた。

「そっか?延ばさないから栄養が行き渡るのかな?」

最近のカーニャは二人の時、とても自然で可愛らしいなとユアも感じているのだった。

なんだか可笑しくなり、二人でクスクス笑い合うのであった。

こうして相手がもう欠くべからざる相手だと、自覚なく心で理解しているのだった。

お互いに悩みを抱えながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ