【第30話:しずかな朝】
ノアは追い詰められていた。
(あの銀色空をとんだよ?!)
ノアの身体能力は高く、普通の人間が入れない所まで簡単に登ってしまう。
最近はセルミアの勧めで、またアミュアとユアを監視していて、この城にも夜中に潜入して来ていた。
窓から二人が寝る所まで気配を隠し覗いていたが、夜中に銀色の方がテラスにでてきたのだ。
顔が見たくて覗き込んでいたら、アミュアに気付かれ逃げた。
慌てて本丸の影まで移動したのだが、アミュアはレビテーションの魔法で追いかけてきたのだ。
完全に気配を隠しているのに、アミュアの視線はノアを捉えている。
「こっちから何かを感じる‥‥しせん?」
ぶつぶつ言いながらアミュアが忍び足ですすむ。
ノアは慌ててさらに本丸の上部にある丸い外壁沿いの通路を逃げる。
結構な速度で周り、アミュアの背中を見つけ止まった。
ぐるっと一周して後ろにでたのだ。
「そこか?!」
ぱっと振り向くアミュア。
何故かびしっと指さしている。
決め顔であった。
こちらにアミュアが走ってくるので、あわてたノアはまた反対向きに疾走。
半分も行かない所でごっちんこ。
アミュアは逆向きに回って走ったのだった。
頭と頭が当たり、星がちったのが二人には見えた。
ばたりと反対方向にそれぞれ仰向けに大の字で倒れた。
頭の上ではそれぞれくるくる星が回っているのであった。
ーーー
先に目覚めたのはノアの方だった。
足元のアミュアを睨みつけ、すっと遠くまで一足にジャンプして消えた。
そのすぐ後に、ぱっと上体を起こしたアミュア。
体には異常はなく、おでこが赤くなっているくらいだった。
きょろきょろして腕組み。
コテンと首を曲げ考える。
「夢かな?」
こうしてノアとアミュアの初めての接触は終わったのだった。
真実を見ていたのは満月のみであった。
翌日、ユアより先に起きたアミュアがぼーっとベッドの上に上体だけ起きていた。
(どうして昨日の夜あんなことしちゃったのかな?)
昨夜ベッドに戻り寝る頃には、なんでレビテーションまで使い、上に行ったかよく思い出せないのだった。
頭うったせいかもしれない。
その後に見た夢の方が鮮明に覚えていた。
コンコンとノックの音。
「アミュアちゃん起きてるかしら?ユアは寝てるでしょうけど」
カーニャの声だった。
「起きてます、どうぞ入ってください」
アミュアが答えるが、ユアはうーんと言って寝返りを打ち、まだ寝る気だ。
ドアからちゃんと服を着て髪も整えたカーニャが入ってくる。
後ろからミーナも手を振り入ってきた。
「おはようございますカーニャ。ミーナもおはよう」
にこりとあいさつするアミュア。
「ユアはやっぱり寝てるのね」
とはカーニャだ。
ユアのベッドに座り声をかける。
「おきなさーいユア。今日はチェックアウトして外でご飯ですよー」
どうせ起きないだろうと、カーニャはユアの掛けていたタオルケットをずばっとはいだ。
「わあー!なんで服着てないのよ!?」
横向きでお尻を向けたユアは全裸であった。
あわててタオルケットをかけるカーニャ。
「やーんまだねるよお‥‥」
むにゃむにゃそれでも起きないユア。
「あ…そういえば」
昨日寝る前に話したことを思い出したアミュア。
すみれ館のセリナさん情報で、下着をつけないで~と説明した。
「ユアとかアミュアちゃんの年ならそんなの関係ないわよ?」
とはカーニャ。もちろん私もと付け足す。
「とにかく、ユアを起こして荷物まとめたらこっちの部屋に来てね」
「あとでね、アミュア」
出ていくカーニャに続きにっこりのミーナ。
ドアがしまった所でアミュアはユアを起こしにおしおししに行くのだった。
目覚めたユアは自分でも全裸を忘れてて、ベッドから降りてから気づくのだった。
「え‥‥」
驚愕の表情で固まるカーニャ。
「ですから、昨夜夜半にふとめざめて。しせんを感じたきがして見に行ったら黒い女の子が見えました」
なぜか隣にいたユアの腕を取るカーニャ。
ユアは、んっとなるがアミュアに聞いた。
「それってお化けがいたってこと?」
ユアの腕がぎゅっと引かれてカーニャの胸にめりこむ。
ユアはふにゃっとなる。
「追いかけたら消えてしまいました。夢かもと思いもどって寝ました」
アミュアの説明は要領を得ない。
姉の様子にいち早く気づいたミーナ。
「わかった、姉さまお化けが怖いんですね!」
「ええ?」
「??」
恥ずかしいのか怖いのかユアの背中に回り隠れるカーニャ。
「やめてよお」
小さな声で震えるカーニャは、史上最大可愛いのであった。
「なんかそう言われると、気配が変な気もする」
苦笑しながらユアが言う。
「いじわるしないでユアぁホントにこわいの」
背中から顔を離さないカーニャ。
「いや、冗談じゃなくてね…なんか気配が少なすぎる気がする。少し様子見てくるからカーニャをよろしくねアミュア」
ユアはそういってカーニャの背中を押してアミュアに渡すと、するっとドアから出て行った。
今度はアミュアに抱っこされて震えるカーニャ。
ユアの話でさらに怖くなったようだ。
「よしよし、こわくないですよ」
カーニャの背中をなでるアミュア。
ミーナは残っていた小物をしまったり、チェックアウトの準備をするのだった。
それなりの時間がすぎ、ユアが戻った。
「まずいね。誰もいなかった」
真剣な顔のユアがもどり、アミュア達に話す。
「駐車場にもあたしの馬車しかなかったよ。カーニャこれはお化けじゃなく襲撃かもよ」
アミュアの背中に移動して隠れていたカーニャが顔を出す。
「ほんと?お化けはいなかった?」
にっこりユアが答える。
「まちがいなくいないから、そろそろ移動しよう。城内は情報が少なすぎる」
そうして、お化け騒ぎ?も終わり、本当の騒ぎに向かって進みだすのだった。
そーいえばごはんまだだなあ、とユアは真面目な顔で考えているのだった。




