【第20話:暑い夏の王都にて】
ここから第3部です。
スリックデンからの長い旅を終え、4人は王都に着いた。
王都は巨大な城塞都市で、真っ白な内壁と外壁に2重に守られ、北側に巨大な白い王城が沢山の塔を伴い建っている。
外壁の外側にも大きな市街地を三方にもつ、国内最大の都市だ。
商業、研究、教育、ハンターオフィスあらゆる頂点機関がここにあった。
スリックデンから続いた大きな街道も一旦ここで終点となる。
町の中まで街道は続いて外壁を越える門の内側に広場がありそこで終点だ。
祝福するような快晴のなか、高い気温に4人は辟易としているのだった。
「すごい!見えたよあれが王都か、でっかいな!」
一人だけ元気なユアが運転席から、車内に通じる窓を開け言った。
オレンジの短いノースリーブからおへそが見える。
残り三名はと言うと、客車でぐてっと転がっている。
締め切った車内にはカーニャとアミュアが交互に氷魔法の応用で空調している。
熱を外に逃がすことで車内の温度を下げるのだ。
ここ数日の熱さで3人共疲れ果てていた。
「わかったから閉めて窓、あついです」
とはアミュア。
「ごめんユア私も辛いから閉めて。ハンターオフィス着いたら教えてね」
ぐったり椅子によりかかり、とても弱っている様子のカーニャ。
ミーナはアミュアの膝枕で冷やしタオルを顔に乗せている。
「はーい、お大事にね!」
元気に言って、窓を閉めるユア。
車内のアミュアとカーニャが話す。
「ユアはどうして平気なのでしょう?暑さ」
「鍛え方がちがうのよ、きっと」
アミュアはまだ余力があるが、カーニャは限界に近いのか言葉少な目だ。
街道を旅する中戦闘は全くなかったので、2人とも軽装で武装はしていなかった。
王都のハンターオフィスまで到着した馬車。
ハンターオフィスは外壁の手前に大きなビルとしてあった。
見上げる高さは、外壁の上まで出ている。
オフィス横の駐車スペースにはたくさん馬車が停まっていた。
ユアは器用に空きスペースに白い馬車を停める。
後ろの窓を少しだけ開けて、話しかける。
「ついたけど、どうするかな?待っててもいいよ?」
やさしく囁きかけるユア「気配りもできるおねーさん」と言った顔。
「大丈夫、私は行くけどアミュアちゃんはミーナを見ててくれる?」
「了解です。室温コントロールもまかせてです」
頼もしいアミュアに任せ馬車から降りるカーニャ。
ドアをくぐった瞬間顔をしかめた。
「ちょっと暑すぎるわね。防具までつけられないわ、これじゃ」
「中はきっと涼しいから、行って見ようカーニャ」
手を引きずんずん進むユアに引かれカーニャも進んだ。
オフィス館内は予想通り室温管理されている。
スリックデンでも普及している魔道エアコンで、排熱しているのであろう。
1階は広大なホールと支える太い石の柱が並んでいた。
ハンターオフィス全体の装飾は統一感があり、シンプルながら格式まで感じられた。
その広いホールに込み合ってはいないが、かなりの人数のハンターがいる。
右端に依頼掲示板をみつけ、二人はそちらに向かった。
ハンターオフィスに寄る提案はカーニャだ。
Bクラス以上のハンターは、移動の申請が義務であった。
宿泊する場合は旅程表を所属ハンターオフィスに出すし、大きな街に泊まる際は滞在予定の申告が必要となる。
そういった面倒以上の利点もあるのだが、カーニャがしたかったのは情報収集だ。
依頼ボードの依頼表からは様々な情報を読み取れるのだ。
しばらく眺めていたカーニャがつぶやく。
「スリックデンでも出てたけど、人型影獣の注意がだされてるわ。気を付けましょうユア」
すぐ隣でドラゴンやベヒモスのAランク討伐依頼を指をくわえてみていたユアが振り向く。
「そうなんだ?…まさか紛れ込んでいたりしないよね?」
後半はカーニャの耳にささやく。
彼女たち以上に人型獣を知っているものもいるまい。
「それは無いと思う。外壁には影獣を探知できる検知装置が極秘につけられているのよ。スリックデンでも先日の火災から導入検討中よ。影獣の研究は王都の方が進んでいるそうよ」
「そっか。じゃあ中に入ったら安心だね」
そうして情報もある程度集めたので、申請を出して次は壁の内側で宿を取る予定だった。
4人が選んだ宿は中堅どころ。
内壁に近い商店街近くにある老舗ホテルだ。
外壁の白が眩しい、青い柱が支える6階建てのコンクリート補強建築だ。
古風なガラスの回転ドアを4人でくぐる。
ユアとアミュアは物珍しそうに、見回していた。
玄関ホールはそれほど大きくないが、吹き抜けで2階まで見える。
狭く感じさせない工夫が見て取れた。
カウンターにいつもの二人が行き、アミュアとミーナは待合のソファに座った。
「ふわぁやわらかいですね」
ゆっくり沈み込み、白い革ソファに腰がつつまれるアミュアが思わず漏らす。
「空調もきいてて助かります」
とは、王都周辺の熱さにゲンナリのミーナ。
ソファは慣れてるのかあまり感動はないようだ。
「このいすを馬車につんだら、きっと快適です」
両手でひじ掛けの柔らかさを、もにもに堪能するアミュア。
「うふふ、荷物詰めなくなるし、きっと重いですよこれ」
とはむしろ常識的なミーナである。
ちょっとお姉さん成分まである。
「そうですか、ざんねんです」
ちょっと眉を下げるアミュアは、かなり本気で積む気だったようだ。
そこに二人が戻り、部屋に行くこととなった。
アミュアをユアが片手で引っ張り上げ、立たせた。
「アミュアきにいったの?ソファ」
「とても肌触りもよいです」
いつでも話題の途切れない4人が賑やかに魔道エレベーターへ進むのだった。
館内の涼しさは、屋外の暑さと表裏一体なのだとまだ気づいていなかった。




