スラムを立て直そう
国境の街トレードフロント
孤児のハルトに孤児院を建てることを約束した。
ちがやは当初宗教国家を頼ろうと思っていた。
教皇はちがやとリリスの父親であり、頼りになるだろう。
宗教国家までは転移門でひとっ飛びだし、2人で分担すれば進みも早くなる。
しかし、この国は実力主義であり、力のない者は食われる運命だ。
教会の力を借りたところで、金の力で襲わせて教会員を殺すこともできるかもしれない。
買収される可能性もある。
金と暴力がいかに理不尽であるかを、ちがやは身をもってよく知っていた。
「お姉ちゃん、宗教国家へなら私が行きますよ?」
「そのつもりやったんやけどな……」
ちがやは腕を組み、深く考え込んだ。
「心配なの?」
「あぁ……」
ルナはちがやの様子を見て、少し眉をひそめる。
「教皇が出たらさすがに商業国家も強く出られない気もしますが……」
「逆や、商業国家に教皇の権威は通用せんかもしれん。金に全てを捧げてる連中や。教皇に対して敵対心を抱く可能性もある」
「なら魔法国家の廃村の時と同じようにしたら?」
「は? あの時とこの国の状況はちが……あ」
ちがやは何かに気づいたように目を見開いた。
「ちがやは子供一人助けるために村を建て直した? ちがうでしょ? 村丸ごとだったじゃない」
「丸ごとってまさか!?」
ちがやの表情が一気に明るくなる。
「せやったせやった! 視野を狭くしすぎてたんか! スラムごと立て直せばええんか!」
「この街のスラムって街の半分を占めてますよ?」
「うちは商人で相手も商人……金には金で対抗する。」
ちがやの目には、すでに新たな計画の光が宿っていた。
「でも、ただ孤児院を作るだけじゃダメや。根本的に変えなあかん」
「つまり?」
「スラムごと買い取って、雇用を作るんや。働く場所があれば、子供たちも未来を掴めるはずや」
「……でも、それには莫大な資金が必要ですね」
「ふーむ・・・」
ちがやは地図を広げ、スラムの土地とその周辺をじっと見つめた。
「さて……どう料理したろか」
「スラム街を買い取りたい? あんな場所いらん。ほしいならくれてやる。」
「おおきに」
大商人は愚かだった。
スラムを見下し、邪魔な存在とみていた。
買い取ってくれるならくれてやると、軽い気持ちで手放した。
だが、ちがやは土地が欲しかったわけでも、資産を増やしたい訳でもない。
ちがやは万物を創造できる。
故に、金も土地も本質的な価値はない。
真に価値があるのは人だ。
人だけはちがやでも作れない。
だからこそ、価値がある。
そして、それは必ず黄金の輝きを放つ。
ちがやは経験則でよく知っている。
「これで、やるべきことは決まったな……」
ちがやは拳を握りしめ、目の前に広がる未来を見据えていた。




