聖女が仲間になる
宗教国家
この国でやるべきことを済ませたちがや達は平和な日常を送っていた
とはいえ、ちがや達はここに留まるつもりはない
騒動が起きていた時は、街にいるだけで落ち着かなかったが、終わってから見てみると案外過ごしやすく、街の雰囲気も気に入っていた
でも、ちがやにはミラとの約束がある
まだ見ていない国もあるのに旅をやめるのは勿体ない気がしていた
そんな時、ちがや達はリリスに頼まれて教皇に会いにきていた
「お父様!私、お姉ちゃん達と旅に出たいです!」
ズズイとリリスが身を乗り出しながら強く主張する
「リ、リリリリリス・・・!?」
ただでさえちがやが行ってしまうのにリリスまでと慌てる教皇
「え?リリス?ウチらも聞いてないんやけど?」
「今話ました」
説明なくつれてこられたちがやに満面の笑みでリリスが応える
ああ、これは確信犯だと察した
恐らく反対されることを見越して黙っていたのだろう
この状況で教皇を説得できたらさすがのちがや達も反論できない
なぜなら教皇はリリスの実の親なのだから
決定権は教皇にあるといってもいいだろう
「リリスは旅をしてみたいのか?」
そんなリリスに真剣な眼差しで問いかける教皇
「外の世界を見てみたいというのもあります。ですが・・・」
リリスはチラッとちがやを見る
「ウチ?」
「せっかく見つけたお姉ちゃんともう離れ離れなんて嫌です!」ヒシッ
「それはもちろんうちもなんやけど・・・」
ちがやも満更ではない
リリスの頭を優しく撫でてあげながらも話を聞くことにした
「聖女としての仕事はどうするの?」
ルナが問いかける
「いや、それはいいんだ・・・そもそも9歳のリリスには負担をかけすぎていた。聖女がやっていたことは私にもできる・・・だが」
「寂しいんやて、リリス」
「その通りだ・・・」
リリスは才能がありすぎたため9歳でありながら聖女をやっていたが、その仕事は教皇でも可能だ。
だが、単純に寂しい
ちがやは既に旅に出ると確信していたから覚悟していたがリリスは違う
あまりにも早い巣立ちに親としては心配でしかなかった
「お父様には悪いですけどお姉ちゃんと会えなかった期間、私が産まれてから9年間、取り戻したいと言ったらそれはわがままなのでしょうか?」
「うぐ・・・」
本来ならば、リリスが産まれた時から姉として接するはずだった
その9年間は空白で取り戻したいと言われると教皇には何も言えない
そしてリリスは更に教皇を問い詰める
「それに枢機卿に聞きました。祈り自体は御神体があればできると。つまり聖女としての祈りのお仕事はどこでもできるということなのです。私がわざわざここに引きこもらないといけない理由にはなりません。」
「かはっ!」
完全論破であった
なんだったら教皇が考えていたことまるっと当てられたのでダメージはでかい
「もしかして隠してたこと怒ってたんか?リリスの体質のこと・・・」
これにはちがやも苦笑いしながら聞いてみる
「親としては正しい判断です。ですが私を閉じ込めるために教えなかったような気もします。もちろんそこに悪意などないことはわかっていますが、もう知ってしまった以上私がお姉ちゃんから離れる選択肢はなくなったのですよ!」
「わかった・・・わかったからもう勘弁してくれ・・・寂しいがリリスの人生だ・・・」
「ふふん!」
やってやったと言わんばかりにドヤ顔をきめるリリス
教皇は完全に敗北を認め白旗をあげるしかなかった
「頑張ったなお父さん・・・」
「うぅ・・・」
トンと優しく肩を叩かれ励ましてくれるちがやの言葉が胸にしみる
「お父様、大切に育ててくれたことには感謝してます。聖女としての仕事も私はホコリを持っているのです。別にお父様を嫌いになったわけではありません。ただ、お父様のことだから何だかんだ言い訳して認めてくれなさそうだったので強行手段を取らせてもらいました」
「さすが私の娘・・・ぐうの音も出ない」
「9歳とは思えない賢さ!」
「口喧嘩で勝てる気がせんわ・・・」
「教皇・・・」
同じ親としてこれにはジェイソンも同情した
「すまない・・・いつかは旅立つ日がくるかもしれないとは思っていた・・・だが、ここまで早いとは思わなくてな」
「普通9歳で旅立つなんて思いませんよ」
「それだけリリスが自立してるっちゅーことやろな」
ちがやは肩をすくめながら妹の成長の早さに感嘆した
これはもう決着だろうと思っていたら、教皇が真面目な顔つきでリリスに向き直る
「リリスよ、一つだけ一つだけ条件を出してもよいか?」
「うーん・・・聞きましょう!」
それは教皇の譲歩
今更旅に出ることに反対はしない
その代わり一つだけ約束してほしかったのだ
「定期的に手紙を送ってほしい。」
「ふふ、それならいいですよ。私からも送ろうと思っていましたし。」
どんなことでもいい
定期的に手紙で報告してほしかった
娘のことをまだ聞きたかった
だから手紙による繋がりを教皇は欲した
「なら認めよう。すまないがリリスのことよろしく頼む。もし何か困ったことがあれば相談に乗ると約束しよう。」
リリスも納得し、教皇も認め、親として深々とちがや達に頭を下げた
「任せてくれ」
「妹やしな!」
「もちろんです!」
そうして、リリスの旅が決定したのだった
その後
ちがやが忘れ物したから先に行っててと伝え、一人教皇の部屋に戻ってきていた
「お父さん、ほい」
ちがやはぶっきらぼうに戸惑う教皇に手渡す
それは天使が祈りを捧げている小さな像
手のひらサイズのそれは確かに神力を感じる
ちがやが作ったのだろうということまではわかる
「これは?」
「転移門や。これを設置しておけばいつでもここに帰れる。だからそんな心配せんでもええんやで」
それはちがやから教皇へのプレゼント
寂しがる教皇には必要だろうと思い至り以前作って封印していたものを渡したのだ
その名を『てんいくん』といい、門を設置したところならどこからでも帰ってこれるという優れモノなのだった
それは対になっており、ちがやが持っているもう一つの『てんいくん』が必要なため悪用されることもない
ちがやにとって帰ってくる家はここというマーキングでもあった
「ありがとう・・・!」
いつでも帰ってきなさい
ここはお前の家だと言わんばかりに教皇は優しく微笑みかけるのであった
合流した後
ルナに例の物を見せていた
「いつの間に作ったのこれ?」
「物自体は結構前からや。」
実を言うと公爵家にいた時から完成していたのだ
ルナがいつでも家に帰れるようにと作っていたのだが、これは相互に移動が可能だ
過保護な公爵家がしょっちゅう会いにくるのはさすがにうざい
ルナには悪いがもう少し改良してから渡そうと考えていたのだ
そんなちがやの考えを察したのかニコリとちがやに笑うルナ
「ちがやにとって実家だものね。良かったね。」
「せやな・・・」
この世界にきて初めて実家と呼べる場所ができた
それは巣を持たないちがやにとって特別なもの
帰るべき場所
心の拠り所ができたちがやは、今日も元気に笑う
さぁ行こう、旅はまだまだこれからや




