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胡蝶は可能性を信じる


満月が輝く祭壇の元、

ちがやはルナに協力してもらい、月光蝶を発動させる。

これからやることは、たぶんとっても難しいこと。

器である闇の聖杯を、月光蝶の力で変質させる。

ミラと同じ器。

本来なら邪神降ろしのために使われるはずだった道具。

ミラも闇の聖杯も、邪神降ろしに利用されようとしていたことは同じだ。

だから変質で無力化するのは可哀想だ。

この聖杯はどうしたらいい?

それは神に話を聞いてからずっと考えていたこと。

ミラならどう考える?

ミラは同化を望んだ。

世界を見せてと言った。

だからやることは決まっている。

闇の聖杯が変質を始め、ちがやの前に浮遊する。

ちがやはそれに優しく触れ、ふっと微笑む。

「闇の聖杯、お前に名前を与える」

そう、ちがやが思いついたこと。

それは道具として扱わないこと。

物として扱わず、仲間として受け入れる。

魂を吹き込むわけではない。

ちがやは神だが、そんな大それたことはしない。

でも名前を与えて、

そばに置いて、

ずっと大切に扱っていたら、

日本の付喪神みたいになるのではないかと考えた。

だからその形状を変質させ、己の身体に身につける。

まだ意志はない。

でもいずれ心が宿る日まで、

この世界の美しさを見せてみよう。

ちがやは覚えている。

祖母が「物を大切にしていると、いつか付喪神が宿る」と言っていたことを。

別に神にならなくてもいい。

子どものように少しずつ成長してくれれば。

だからまずは産みの親として名前をつけなければ。

「お前の名前はスピカや!」

祖母が教えてくれた。

『スピカは太陽より大きいけど、とても遠い場所にあるの。でもその輝きがここまで届くってことは、頑張り屋さんなのかもしれないわね』

夜空の下、キラキラと輝く一等星。

あの星のように輝いて欲しい。

邪神のような闇ではなく、光で照らす。

そんな存在になってほしくて名付けた、ちがやなのだった。

スピカはちがやの腕に絡みつき、青白いブレスレットに変化した。

そのブレスレットには、胡蝶のような紋章が刻まれている。

心なしか「よろしくね」とも聞こえてきて、ちがやはニコリと笑顔になった。

そして、帝国の邪神顕現計画は阻止され、これからも平和な世界が続いていく。



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