聖女の祈り
ルナお姉ちゃんが攫われ、私はたった一人、教会に来ていた。
『リリス!頼みがある!』
お姉ちゃんは私の祈りが必要だと言った。
それもただの祈りではない。
強い祈り、揺るがぬ信仰心が必要だと。
だから私は教会の奥へと進み、静かに膝を着く。
急遽、孤児院の教会を借りたことで、驚かせてしまったけれど、シスターは快く受け入れてくれた。
頼んでもいないのに、私の横で手を合わせてくれている。
いつの間にか、目を覚ました子供たちも集まり、私の周りに座っていた。
彼らの目には不安の色が滲んでいたが、それでも小さな手を組み、神へと祈りを捧げる。
『神よ…どうかお姉ちゃんを守ってください…』
お姉ちゃんは今、戦っている。
どこか遠く、暗闇の中で、たった一人で。
だから、力を貸してください。
どうか、どうかお願いします…!
言葉にしなくても、心は一つ。
皆の祈りが重なり合い、まるでお姉ちゃんと手を取り合って祈った時のような、温かく優しい光が胸の奥に満ちていく。
静寂に包まれた教会の中、ろうそくの灯が揺れ、ステンドグラスを優しく照らしていた。
その時だった。
「任せて…リリスちゃん」
「っ!?」
確かに聞こえた。
いつも聞いている神の声とは違う。
それは、柔らかく包み込むような優しい女の人の声。
はっとして顔を上げ、周囲を見回す。
けれど、それらしい人影はどこにもない。
それでも、確かに感じる。
安心できる、温かい気配。
まるで誰かがそっと手を添えてくれたかのような感覚。
──あの人が「任せて」と言った。
ならば、信じよう。
だって私は聖女。
皆を導く者だから。
『優しい優しいお姉ちゃんが、どうか幸せでありますように…』
そう願いを込め、目を閉じる。
その瞬間、胸の奥から光が溢れ、教会の中に広がっていった。
まるで、天からの祝福のように。




