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胡蝶になる前

ちがやの元の肉体はミラという優しい少女だった

平民の子として育てられた

父はいないが自分と同じ黒髪の母が愛してくれる

だからミラはそれ以上は望まず父のことも聞いたことがなかった

でも教皇の話をすると母が悲しそうにすることに気付いた

ただの世間話だったのだがなぜか一瞬目を逸らす

教皇は国のトップで国民なら誰もが知っている

だから目を逸らす理由がない

何でだろうと疑問だけが残った

でもそれは誘拐されてはじめて知ることになった

ある雨の日

私は1人で歩いている時に急に背後を取られ眠らされた

目が覚めた時にはすでに捕らわれており自分のことを知らされた

私は教皇の隠し子で神の器としての力がある

だから帝国に攫われ邪神の器となるらしい

度重なる人体実験に拷問

怖くて苦しくて何度も泣いて過ごした

与えられる食事もカビた硬いパンとよく分からないスープだけ

尊敬した教皇にも捨てられ器として利用される日々

こんな想いするぐらいなら早く死にたい

なのに帝国は私を薬で無理矢理生かす

地獄だった

何もかもが嫌だった

そんな時綺麗な蝶が目の前に現れた

いや、現れたというより飛び出してきたと言った方がいいだろう

ほんの一瞬だった

薄れゆく意識の中一瞬だけ目に入った

それは虹色に綺麗に輝いていた

そんな綺麗な蝶が私目掛けて飛び出してきた

その瞬間、私の魂は蝶と同化した

それが手に取るようにわかった

なぜならそれは私にピッタリとハマったから

こんなに気持ちのいい感覚ははじめてだ

心が満たされていく

でも同時に悲しみもあった

同化してわかった

魂が融合する

邪神じゃなくてよかった

私はあなたとなら共に歩める

いいや、あなたと魂を共有してみたい

だから私にも見せてね

あなたが見る景色を

そして後悔しないでね

私は器をあなたは心を共有するの

それはお互いに欠けているもの

だから悩まなくていいんだよ

悲しまなくていいんだよ

あなたとならどこまでも飛べる気がするから

どこまでも羽ばたいて

だってあなたにはそんなにも綺麗な羽があるのだから

虹色の世界

私にも見せてね

私の器はあなた専用なんだから




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