胡蝶は逃さない
アリアの相談を受けた夜
ちがや達は宿に泊まり、新しく友達ができたという高揚感で眠れなかったちがやは一人で窓の外を見ていた
街は眠り付き、どの家も明かりが消えている
そんな中、三日月が輝き照らしもう少しで満月ということを知る
だが、ちがやの安らぎは続かなかった
窓の外に何やら怪しい男たちが密談している
「例の物は手に入ったか?」
「ああ、王の命日にしてやる」
「!?」
魔道具らしきものを手渡していたがちがやは確かに耳にした
王の命日
つまり国王の危険が迫っている
国王が死ねばせっかく頑張っているアリアが悲しむ
そんなことは絶対させないとちがやは目立たない程度に力を解放
今にも飛び出しそうなちがやの肩に手が触れる
「ちがや、今の・・・」
「聞いてたか・・・うちはあいつらを止める」
「わかってるよ。私だって止めたい。だから・・・」
「これは?」
「魔法でマーキングしたわ。これでどこにいってもわかる。」
「少し泳がせたほうが情報を得られる」
「そうそう、そういうこと・・・ってジェイソン!?」
「うわ!全然気付かんかった!ジェイソンも気付いたんか?」
「ああ、ちがやが行く前に気付いてよかった。」
「わん!」
「ポチまで・・・なんやなんや?皆考えることはおなじっちゅーことでええんか?」
「当たり前でしょ!」
「ああ」
「わん!」
「ほなら、特別任務発令や!国王を守ってアリアの笑顔を守るで!」
『おう!』
「くそ!まだおったんか!あんのくそオヤジどこまで種をばらまくねん!」
ルナのマーキング魔法のお陰であの魔導が邪神から授かったもので魔物を引き寄せスタンピードを引き起こさせるものと判明した
だが、もう終わったと思っていたちがやの父との戦いがまだまだ続いてることに気付かされちがやはムキーと地団駄を踏む。
「それにスタンピードって国王どころか国民も巻き添えじゃない・・・一体どうすれば」
「あの魔道具も一つや2つやないと思ってたほうがええかもな・・・村の時といいどこまで手を広げとんねん!」
「二人共冷静になれ、お前達は今までどんな困難も乗り越えてきた。その最初に倒したのが邪神そのものってことを忘れていないか?」
「でも!」
「そうか・・・そこまで悲観しなくていいんだ。」
「どういうことや!?」
「邪神は確かに悪しき種をばらまいていまだに残っているかもしれない。でもね、これ以上増えることはない。種を一つ一つ潰していけば必ずいつかは終わる。だって、邪神はもう消滅しているから」
「そうだ」
「はは・・・せやったな・・・そうかそうやったな・・・」
「ちがや、ルナ、ポチ。俺達のやることはずっと変わらない。」
「せやな、へへ」
「そうだね!」
「わん!」
「ふう・・・お父様の魔法書読んでてよかったわ」
真夜中に三人のローブを被った集団が危険思想を持った男たちを一掃していた
「もー!こんな危険なもんはぼっしゅーや!ほい」
アリアにバレバレだということを指摘され秘密裏に動くために作った ちがや特性迷彩ローブだ
これを装着している限り誰にも視認できない
匂い、気配、音など気付かれるであろう要素も全て無効にできる
スタンピードを企てている集団を片付けるにはもってこいの代物だった
「無限マジックバックにこんな使い方があったとはな」
「このマジックバッグはゴミ箱やな・・・やっぱ四次元ポケットの方が夢が詰まってるわ」
「はは、当然だ。」
邪神の魔道具は想定より多くばらまかれていたがそれを一つ一つ探し出し無限マジックバッグという時間も時空も超越した空間に封じ込めていく。
ちがやはこれを作る時、無限に収納できればええなー程度にしか考えていなかったがその中は時間が停止しいくら魔道具が誤作動しようが外部には影響がない。
むしろ、入ったら最後、外部から取り出されなければ出られない夢境となっていた。
夢はちがやの専売特許だ。
誰にも侵されないし侵せない。
なぜならその空間はちがやだけの想像の世界なのだから。
すると、フェンリル形態になった大きな大きな白い狼の姿をしたポチが10人の男たちを加えて持ってくる。
「おお、ぽち頑張ったな!10個も見つけたんか!」
「わん!」
フェンリルの鼻を使いばらまかれた魔道具を持った男ごと捉えてきたポチをワシャワシャと褒めまくる
このときばかりは神々しいフェンリルもただの犬になってしまうがそれも愛嬌
ルナ、ジェイソンもよくやったと褒め称える
「ぽち、臭いはまだあるか?」
「私の鼻がきく範囲にはもうありません」
ちなみにポチの鼻は王都全体を嗅ぎ分けられる
そのポチがもうないというならこの王都には存在しないということ
大量にばらまかれていた魔道具をようやく根絶やしにできたということだった
「あとはうまくやるんやで・・・アリア」




