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フェンリルは夢を見る
フェンリルは夢を見ていた
ここでは無い不思議な世界
そこには人間の子と父親が住んでいた
フェンリルはその家庭で飼われている犬らしい
父親は全く面倒をみないが娘は優しかった
娘は父親に酷く暴力を受けている
何度も守ろうとするが小型犬の自分では太刀打ちできなかった
それどころか娘は自分が殴られそうになると身を呈して守ってくれた
本当は守りたいのに守れない
フェンリルは歯がゆかった
そんなある日、娘が死んだ
性格には殺された
それも娘の父親にだ
フェンリルは父親に噛みつき怒り狂った
小型犬とはいえ犬は犬
噛まれたら痛いはず
だが、娘を殺した父親は自分すらも容赦なく殺した
途切れかける意識の中娘を守れなかった自分への怒りが爆発した
その怒りと憎しみは夢から目覚めたフェンリルに宿った
フェンリルはあの父親への憎しみと怒りを思い出した
あれは夢だとわかっている
でも許せなかった
あの優しい娘を痛めつけ殺したことを
だから暴走し 魔力が感情に支配され黒く変色した
許さない許さない許さない許さない許さない
あの父親も自分も何もかも
大好きだったあの娘を殺した奴を絶対許さない




