国の再建2
国の再建が始まって数日が経った。
ちがやは何もしないのは性格に合わなかったので、見守るくんを使って手伝うことにした。ドワーフ族の地に放った見守るくんだったが、その後、増殖しすぎてしまったため、何人かを再建作業に回ってもらっている。
どの子もすでに知能を持っており、名前を付けてと言われたのはいいが、大変だったのは言うまでもないことだろう。
とはいえ、見守るくんのシステムで国の全て、どころか他国の情報まで閲覧できるようになっていた。いかに彼らが増えすぎたかが分かる話だ。
いまや世界中に配備されている彼らは、ちがやの眷属として受け入れられており、他国でも幸せそうに暮らしているそうだ。
そんな状況の中、ちがやは日々集まってくる膨大な情報を元に指揮を取っていたが、あることに気付いた。
「……今の自分なら、天空城で起きたことを、時を遡って映像化できるのではないか?」
なぜそのようなことをするかというと、それは歴史に残すためである。
四聖獣に言われた通り、この愚かな行為を記録に残す義務がある。過去に起きた出来事を映像として保存し、後世に伝えることは、未来への警鐘となるだろうとちがやは考えた。
「ルナ、ちょっと手伝って」
「いいよ」
即答したルナの頼もしさに、ちがやは少しだけ安心した。
二人は転送陣に乗り、早速、廃墟と化した天空城にたどり着いた。
ここで邪神と闘ったことを思い出すと感慨深いものがあったが、それよりも今はやるべきことがある。
「なにするの?」
「歴史に残すための記録を摂る。過去を遡り、何が起きたかを映像化する」
「どのくらい遡る?」
「この国ができた時から」
「戻りすぎじゃない!?」
ルナは思わず声をあげた。だが、ちがやの目には揺るぎない決意が宿っていた。
「この国の歴史すべてを記録しておきたい。それが四聖獣の望みでもあるからな」
「わかった。手伝えることはある?」
「一応、そばにいて支えててくれ。記憶を見て、倒れることもあるかもしれん」
「わかった」
ルナはちがやのそばに寄り添い、しっかりと肩を支えた。
……
「終わった……やっぱり酷いものだったよ」
映像化を終えたちがやは、肩で息をしながら呟いた。その顔には疲労と、どこか後悔にも似た憂いが浮かんでいた。
「もう死んでいないとはいえ、ここに来て正解だったみたいね」
「……あの慰霊碑とリンクしておかなければな」
二人はしばし無言で祈りを捧げた。風が、かつての戦場を静かになでるように吹き抜けていった。
……
「これが戒めにしなければならない記憶の映像だけど……毎日見るには心を病みそうだ。ハンス、慰霊日は一年に一度くらいにしておいたほうがいいかもしれない。もちろん、この記録を再生するためには王族の権限を必要とし、通常時は見れないようにしておくがな」
「そうだな……そうさせてもらう」
ハンスは深くうなずいた。彼の瞳にも、かすかな涙がにじんでいた。
そうして慰霊の記憶は、年に一度だけ王族のもとで見られる真実として語り継がれ、戒めとなった。
それは、強い、強い愚か者の戒めだった。
その末路を恐れ、誰もが真っ当に生きようと心に誓ったほどだった。
そして、それが国の犯罪率が一気に減ることになったきっかけにもなったのだった。
なぜなら、誰もが、あのような末路にはなりたくないと心から思ったからである。