心を一つに
天空王宮で邪神が権限した時
地上には、大量の魔物が迫ってきていた
砦の外でハンスとエリスが立ち向かうために覚悟を決めていた
「スタンピードなんてレベルじゃないな・・・」
迫り来る魔物に冷や汗をかくハンスだが、不思議と怖くは無かった
「でも、ジェイソンの修行に比べたら・・・」
SSSランクのジェイソンにスパルタ修行を乗り越えたハンスは一味違った
あの圧倒的な越えられない壁に比べたら目の前の魔物の大群などゴミ同然
自然とニヤリと笑みが溢れる
そして周囲には仲間もいる
1人で戦うわけじゃないと思うと心強かった
「ハンス」
「姉さん・・・」
「今度こそ必ず守ってやる!お姉ちゃんに任せろ!」
「あはは・・・守るんじゃなくて共に闘おう姉さん」
「っ!?そうだな!うん!そうだ!」
そして全員が構えついに開戦する
「弓隊、魔法部隊!放て!」
ハンスの指揮によって一斉に攻撃が放たれる
そして前線にハンス、エリス達が突撃し残った魔物達を次々と切り伏せる
魔物のランクはどれもsランク以上ばかりだがハンスとエリスの前では敵では無い
とはいえ、数が数なため出し惜しみせずに一気に畳み掛ける
「はぁ!」
魔物が減りまた押し寄せ魔物が減りまた押し寄せを永遠に繰り返す
広範囲の斬撃で一気に減らしているにも関わらず絶えず湧き続ける
冒険者達も負けじと応戦している
軍隊のように統率が取れてる訳では無いが相手は魔物だ
これでいい
彼らは魔物退治の専門家なのだから
鍛治ギルドと商業ギルドも怪我人を治療したり物資を補給してくれている
戦えるドワーフは前線に立ってくれている
それなのに・・・なのにだ
絶え間なく迫り来る魔物に徐々に士気が下がっていく
ハンスはジェイソンの修行のおかげでまだまだ戦えるが全員がそうではないことをよく理解していた
なぜならハンスもあちら側だったからだ
魔改造される前は普通の体力だったしこんなにも強くはなかった
だからこそどちらの気持ちも分かる
このままでは魔物に押し切られてしまう
そうだ ちがやからもらったあれなら一時的に彼らを休められるかもしれない
「姉さん!少しの間頼む!」
「任された!!うおおおお!」
「結界展開!怪我人と限界のやつはこっちにこい!」
何人かが結界の中に逃げ込む
幸い結界はしっかりと機能している
迫り来る魔物が攻撃しては弾き返されていく
とはいえ、これではジリ貧だ
すぐに立て直さなければならないと無限マジックバックからちがや特性のポーションを取り出す
「全員飲め!回復したら交代だ!」
「すげぇ!なんじゃこりゃ!体力まで回復してるぞ!これならいける!おい!交代だ!」
「すまねぇ!」
交代でポーションを飲ませ体力魔力怪我状態異常を全て回復
その上ステータス向上もしていることに徐々に気付き始める
さっきまで疲弊していた冒険者が前線を押し上げていく
全員回復し終わったところでエリスと交代し休ませようと思ったのだが・・・
「ハンスに頼まれからには魔物共を滅ぼしてくれる!はっはっは!」
弟愛だけで全て覆しそうなほど元気だった
ブラコンパワー恐るべし
ポーションよりハンスのキスとかの方がパワーアップしそうだった
もちろん姉弟なのでそんなことしないが
そして第2軍が迫ってくる
今度は飛行する魔物が多い
ドラゴンまでもいる
弓と魔法を放つがなかなか落ちない
一方的に攻撃され防御に回るしかなかった
だが、そんな時だった
空中を雄々しく飛んでいた魔物達に稲妻が次々と落ち魔物達が落下していく
そして空中から現れた新たな影は魔法国家の部隊だった
救援がきたのだ
それに続くように宗教国家や商業国家も攻撃に加わる
「ちがやちゃんのため魔法国家第1王女馳せ参じますわ!」
話に聞いてたちがやの友達のアリアだ
それに宗教国家の猊下や枢機卿までもいる
そして商業国家の賢者達
謎のマッチョ達はちがやが助けたという魔法国家の村の人達だろうか
恐ろしく強い、なんだあれ・・・
「あれは・・・味方なのか?」
そんな時更に現れたのは魔族の人達だった
種族は様々だが、皆魔物目掛けて突撃していく
「助太刀するぞ!人間共!我は魔王なり!」
「ま、魔王!?なんでだ!?まだ行ったことないのに!?」
「はっはっは!そんなことしれたこと!ちがやとはあの珍妙な眷属を通じて交流していたからじゃい!友が困っている時に駆けつけず何が魔王か!」
何この魔王、すんごいいい人、良い魔族か
というかいつの間にそんなことしてたのかちがや
とはいえ、一気に形勢逆転だ
国境を越え、種族を超え、ちがやの元に1つになったんだ
胸が熱くなるのを感じる
下がっていた士気は回復し我こそはと立ち向かっていく
魔物達を押し上げ徐々に数を減らしていく
上でなにか起きたようで魔物の増殖も減り始めている
それに何より世界が虹色に輝き出した
これはちがやの月光蝶の力だ
今までにないほどの絶大な力を感じる
その光景に誰もが勇気を貰う
そうしてしばらくするとキラキラと小さな小さな虹色の蝶が世界に降り注ぐ
その虹色の蝶は魔物に触れると次々と吸収し消えていく
消えた瞬間もキラキラと輝きを放つ
魔物は完全消滅し蝶達が役目を終えたと言わんばかりに天へ群れを成してかえっていく
それは蝶の天の川のようだった
そして空で文字のようになりこう書かれていた
『ウチらの勝利や!^^』
その瞬間うおおお!っと歓声が上がった
そしてブホッと吹き出すものも現れた
ちがやらしい伝え方に思わず笑がこぼれた
そして虹色の大きな蝶の羽を生やしたちがやとその仲間たちが空から舞い降りてきた
後ろには四聖獣らしき存在もおり亀の背中には縛り上げられた王がいた
その姿に全員がポカンとする
ドスンと地上に降りるとハッと我に返り慌て出す輩が現れる
なんたって四聖獣全員揃っているのだ
慌てるに決まっている
宗教国家の人達に至っては既に平服していた
ハンスはフェンリルと玄武には既にあったことあったのでまぁちがやが話してたしなとしか思わなかった
そしてエンシェントドラゴンと思わしき神々しいドラゴンが王を口に加えて玄武から降ろした
「人間達よ、邪神は再び封印された。それもちがやの力で幸せな夢を見ている。今後現れたとしてもその性質は既にいい方向に変わっていることだろう。」
ん?性質を帰るほどのいい夢ってなんだ?
封印ならわかるけどなんで夢の話?
と考えている時にふとちがやの性質を思い出した
「胡蝶の夢・・・」
そういえばちがやは神であり胡蝶だったなと思い出し納得した
なんともちがやらしい封印方法だ
「それとこの愚か者、お前らが捌きたいだろうがここは神に委ねてくれんか?誰が捌こうがお前達にわだかまりが残るだろう?この愚か者で死んだものは多すぎる。家族や関係者は恨んでいることだろう。戦いの連鎖を防ぐためにも帝国の神に断罪を任せたい。いいだろうか?」
この場にいる全員が納得しひれ伏す
たしかに誰が捌いても後々争いを産むかもしれない
そう考えるとこの国を守る武神様に委ねる方がいいだろう。
どうなるかは分からないが神ならば相応の罰を与えてくれるだろう。
逆を言うと神に裁かれるほど悪事をしてきたということなのだがな。
我が父親ながら愚かな人だ。
「人間共よ、この愚か者のような者を二度と生まないように心に刻め。そしてその者の末路も歴史に残すのだ」
なるほど、今後のことも考えてのことなのか
たしかにこんな末路誰も歩みたくないもんな
恐ろしい戒めになることだろう
「では、我々は帰るとしよう。ちがや、またな」
「おう!おおきにな!じっちゃん!」
『じっちゃん!?』
皆の驚きも何処吹く風、四聖獣達は帰っていった
ちなみにポチはポフンとチワワ形態に戻ってちがやにワシャワシャされている
これにて王は神界に連れていかれ邪神は封印され魔物達の脅威は消え去った