番外編:ハンスの受難! SSSランク冒険者ジェイソンの試練
商業国家・ギルド支部にて
ハンスは、ギルドの受付前で落ち着きなくソワソワしていた。
ここは 商業国家の冒険者ギルド支部 。
つい先日、ちがやたちに救出され、命を救われたばかりの彼は、今後の身の振り方を考えていた。
――そんな中、ちがやから衝撃的な情報を聞かされたのだ。
「ジェイソンと会わせたるで!」
その言葉を聞いた瞬間、ハンスは固まった。
SSSランク冒険者・ジェイソン。
彼は帝国にいた頃から、ずっと憧れていた存在だった。
「英雄」と呼ばれるほどの圧倒的な実力を持ち、どんな強敵にも立ち向かう伝説の冒険者。
そんな人物と まさか直接会うことになるなんて……!
「うおおお……緊張する……!」
ハンスは胸の前で拳を握りしめ、深呼吸を繰り返した。
心の準備はできた!
あとは、ジェイソンに会って、礼儀正しく挨拶を――
「ちがや! 例のヤツってどいつだ?」
「えっ?」
いきなり背後から 低くて威圧感のある声 が聞こえた。
ハンスが振り返ると、そこには 全身黒の装備に身を包んだ筋骨隆々の男 が立っていた。
それはまさしく、 ジェイソン だった。
「お前が……ハンスか?」
ジェイソンの鋭い視線が、ハンスを貫く。
ハンスはビクリと肩を震わせ、緊張のあまり直立不動になった。
「は、はひぃ!!!」
「?」
「す、すみません!!!」
「いや、別に謝らなくていいが……」
ジェイソンは腕を組みながら、じっくりとハンスを観察している。
その視線が怖すぎて、ハンスは冷や汗をダラダラと流していた。
(やばい……めちゃくちゃ威圧感ある……!)
「お前、どのくらい戦えるんだ?」
「えっ?」
「ちがやたちに助けられたって聞いたが……お前、自分で戦う力はあるのか?」
「そ、それは……」
ハンスは答えに詰まる。
ちがや達にはタンカを切ってしまったがこの人達と比べるとどうなのだろうと思ったからだ。
正直、帝国の王子として育った彼は、まともな実戦経験がほとんどなかった。
剣の訓練は受けていたが、実際に命をかけた戦いをしたことはほぼ皆無。
すると、ジェイソンは 何かを悟ったように ため息をついた。
「……ちがや、コイツ鍛えてもいいか?」
「ええで!」
「勝手に決まっていく!?」
「守るとかタンカを切ったらしいな?ハンス」
ジェイソンは再び腕を組み、 ゴゴゴゴ……と禍々しいオーラを発しながら 言い放った。
「……よし、ハンス。お前、俺が鍛えてやる。」
「えっ?」
「しっかり修行しろ。このままじゃ、ちがややルナたちにずっと守られっぱなしになるぞ?」
「ちょっ……!? えっ!??」
事態が飲み込めないまま、ハンスは 強制的にジェイソンの修行を受けることになった。
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修行開始! ハンス VS ジェイソン
「うおおおおおおおお!!! なんでこうなるんだぁぁぁぁ!!!」
広場に響き渡る ハンスの悲鳴。
そこは、ギルド裏にある 訓練場 。
そして、ハンスの目の前に立ちはだかるのは ジェイソン 。
「剣を構えろ、ハンス。」
「む、無理ですぅぅぅぅ!!!」
「無理かどうか、試してみろ!」
「いやぁぁぁぁぁ!!!?」
ジェイソンが 本気の一撃 を繰り出してきた。
ハンスは 情けない叫び声を上げながら 必死に剣を構える。
ガキィィィン!!
衝撃で 吹っ飛ばされるハンス。
「ごふぅっ……!!!」
「……なぁ、ちがや。」
ジェイソンが横で見守るちがやに向かって、呆れたように言う。
「こいつ、本当に帝国の第一王子だったのか?」
「せやで~」
「嘘だろ……?」
「ハンス、がんばれ~! うちらは応援しとるで!」
「この状況で応援だけ!?!? もうちょっと助けてくださいぃぃ!!!」
そんなハンスの叫びを無視して、ジェイソンは 剣を構え直した。
「お前、戦いの基本から鍛え直した方がいいな。」
「やっぱりそうなります!?」
「とりあえず、三時間ぶっ続けで俺の攻撃を避け続けろ。」
「三時間!?!?!?」
「ちなみに、避けられなかったら追加でもう三時間な。」
「無理無理無理無理無理ィィィィ!!!」
こうして、ハンスの 地獄の修行 が始まった――。
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そして夜――
「……お、終わった……?」
夜のギルド前。
ボロボロになったハンスが 地面に大の字で倒れていた。
「おぉ、意外とやるな。」
ジェイソンが 満足げに うなずく。
「……よく……やった……俺……」
「ハンス、成長したな!」
ちがやが ニヤニヤしながら 近づいてくる。
「明日もやるんか?」
「えっ!? 明日も!?」
「当然だ。まだまだ鍛え足りねぇ。」
「うわああああああ!!!?」
――こうして、ハンスの ジェイソン式修行 は続くのであった。
番外編:ハンスの受難! SSSランク冒険者ジェイソンの試練②
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翌朝――ギルド訓練場
「おい、ハンス。起きろ。」
「……うぅ……まだ寝かせて……」
「起きろっつってんだろ!!」
ドゴォォォォン!!!
ハンスの横で 地面が陥没するほどの拳打 が炸裂した。
「ひゃあああああああ!!??」
飛び起きたハンスの目の前には、 朝日を背負いながら立つジェイソン の姿。
まるで地獄の鬼のような雰囲気だった。
「さぁ、今日も修行を始めるぞ。」
「待ってください!! 昨日、散々ボコボコにされましたよね!? もう十分じゃないですか!?」
「昨日やったのは準備運動だ。」
「準備運動ってレベルじゃなかったんですけど!?」
「それに、昨日は最後の方でいい動きをしてたな。」
「ま、まぁ……少しは……?」
「だから今日は、昨日より さらにハードなメニュー を用意してやったぞ。」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
「うるさい、走れ。」
「うわああああ!!?」
――こうして、ハンスの 二日目の修行 が始まった。
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修行①:ジェイソン流・超過酷サバイバル
「さて、今日は サバイバル訓練 だ。」
「サバイバル!? 何をするんですか!?」
ジェイソンは 森の奥深く へハンスを連れて行き、 一本のナイフだけを渡した。
「これで三日間、生き延びろ。」
「は?」
「武器はそれだけだ。魔物が出たら、自力で対処しろよ。」
「ま、待ってください! ここって、 魔物の生息地 ですよね!? しかも結構ヤバいのがウロついてるとか……!?」
「おう、ヤバいのしかいないぞ。」
「嘘でしょ!??」
「まぁ安心しろ。最悪死にそうになったら助けてやる からよ。」
「死にそうになる前に助けてください!!」
「生きて帰ってこいよ。」
「待って待って待って!! 置いてかないでーー!!!」
ジェイソンは ハンスの悲鳴を無視して 森の入り口へ戻っていった。
ハンスは 絶望的な表情 で深い森の中を見つめる。
「……これ、普通に死ぬんじゃ……?」
ギュルルルルル……
「お腹すいた……」
こうして、 ハンスの極限サバイバル生活 が始まった。
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修行②:魔物との死闘!?
「はぁ、はぁ……水……水……」
サバイバル訓練が始まって 一日目の夜 。
森の中で 水場を探しながらフラフラと彷徨うハンス 。
すると――。
ガサッ……ガサガサ……
「……え?」
ハンスの後ろで 何かが動いた。
「ま、まさか……」
ドンッ!!
突如として 茂みから飛び出してきたのは、巨大な黒狼!
「うわあああああ!!?」
牙を剥き出しにして襲いかかる魔物。
ハンスは 恐怖のあまりナイフを持つ手が震えた。
(やばい……無理だ……! 俺、こんなのと戦えるわけが……!)
だが――。
『お前、自分で戦う力はあるのか?』
ジェイソンの言葉が脳裏に蘇る。
(……守られてばっかじゃダメだ……!)
「うおおおおお!!」
覚悟を決め、ハンスはナイフを握り直した。
猛スピードで襲いかかる黒狼に向かって、思い切り跳躍――!
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修行③:ジェイソンとの再会
3日後――。
「おお、生きてたか。」
森の入口で ジェイソンが腕を組んで待っていた。
その前には、 ボロボロになりながらも自力で帰ってきたハンス の姿があった。
「……ただいま……」
「ふむ。よく生き延びたな。」
「え、ええ……」
「……まさか、本当に魔物を倒したのか?」
ジェイソンが ハンスの手にある黒狼の牙 を見て、僅かに目を見開いた。
「あ、ああ……まぁ……」
「へぇ……」
ジェイソンは少しだけ ニヤリと笑う 。
「お前、なかなかやるな。」
「えっ……?」
「昨日の情けないお前とは、まるで別人みたいだな。」
「……!!」
憧れのジェイソンに 少しだけ認められた 気がした。
そのことに、ハンスは 思わず胸が熱くなる。
「……ありがとう、ございます!」
「その調子で、もっと鍛えろよ。」
「はい!!」
ハンスは力強く頷いた。
――だが。
「じゃあ、次の修行は――」
「えっ?」
「地獄の崖登り30周な。」
「無理無理無理無理無理ィィィィ!!!」
「黙ってやれ。」
「うわあああああ!!!」
こうして、 ハンスのジェイソン式地獄修行 は続くのであった――。